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超・ネガティブとも子

作者: 戸袋荷物


とも子は、何に対してもやる気がない。

何を頼まれてもやりたくない。何がしたいのかわからないし、将来も働きたくない。

これから先、人生の殆どをやりたくもない仕事をして過ごすのだろうか、休日に出かけることだけを楽しみに、一週間の殆どはやりたくない無駄な仕事に取り組むのだろうか、と考えると生きることはつまらないと思う。


やりたいこととは何だろうか、やりたいことで生きている人はどれほどいるだろうか、ととも子は考えてみる。

話に聞く限り、やりたい仕事ができる人など殆どいないという。なんという無駄な人生。なんのために生きるのだろうか。

お金がないと生きていけないという、つまらない世界。お金のためにやりたくないことを何十年積み重ねて、過ぎていく。

とも子はそんな人生は堪らなく嫌だった。

なんのために自分がいるのかわからない。誰かに必要とされている、というわけでもなく、ただ生きていく。お金を稼ぐために動き、息をして、存在する。


なんで生き続けるのだろう。これから先、どうして自分がいる意味があるのだろう。

腑に落ちない。わからない。これだから、人は皆ずる賢く誰かを騙したりしてお金を手に入れようとするのだと、とも子は思う。

だって、なんでやりたくないことを、その意味を見出せない生きるという行為に必要なお金を稼ぐために、しつづけなくてはならないのか、誰もわからないからだ。

だったら、極力楽したい。疲れたくないし労力は消費したくない。ずる賢くなるのは仕方がないことだ。


何故皆普通に生きていけるのだろう。

とも子はこの先普通でいられる自信がない。そんなにずる賢く汚い大人になるのなら、早めに死んだほうが良いかもしれない。

かといって、じゃあ死んでしまえばよいと一思いにやってしまうこともできない。

怖いのだ。

死の怖さと、つまらない世界で生きる怖さとを天秤にかけると、圧倒的に死の怖さの方が重い。

しかし、その世界で、普通の顔をして生きられるほど、器用でもない。

やりたいことをやるために必要なお金がある人は、少しは幸せにやっていける気がする。

そうでない人は、一生意味のわからない人生に問いかけながら死んでいく。

プライドばかり高くて、何事も為さぬまま人生が終わっていくのをじっと待つ。


とも子は、溜まった洗濯物の山を目の前に、遠い目をし、そんなことを考えた。

パパのパンツのシワを伸ばしながら、算数の宿題のことを思い出した。

それから、おばあちゃんとコタツでみかんを食べ、テレビを観た。くだらないバラエティー番組だった。

とも子は、算数の宿題をランドセルから取り出した。


「おばあちゃん、人生って算数みたいに割り切れないよね」

とも子は割り算の問題を解きながらおばあちゃんに語りかけた。

「そうねぇ、人生はどっちかっていうと掛け算なんじゃないかしら」

おばあちゃんは、のんびりした口調でそう答えた。

「そっか」


とも子は、すぐに掛け算の問題を解きたくなった。


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