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残酷


「あーちゃん」


お母さんだ、なんだろう。


「あのね、お父さんが転勤するんだって…」


え?


「だからね、引越ししなくちゃいけないの」


そんなの聞いてない。


「…嫌よ」


つい出てしまった言葉。


「しょうがないのよ、そりゃあーちゃんにだって色々あるでしょうけど…」


しょうがないってなんなのよ。


「残るって選択肢はないの、お母さん」

「…それはダメ」


強い口調だった。


「あのね、あーちゃん…海外なのよ」

「…え」


もう、何も言葉には出来なかった。



紗綾になんて言えばいいのよ。

あの子病気なのに。

ずっと一緒にいたかったのに。



世界は残酷ってこういうことなの?



神様なんて信じたことなかったけれど、


「…神様お願いします」


今は神頼みしかないのよね。








❮10月30日❯

神は時に残酷でした。

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