文化祭
この学校には昔から文化祭の夕方に告白して結ばれると一生うまくいくとか、後夜祭でダンスした相手と将来うまくいくとか。そんな迷信みたいなものばかりある。
「紗綾文化祭の日一緒にまわれるよね?」
久しく私から誘ってなかったけれど、
「珍しい!まわるまわる、まわれるよ!」
誘ってみるのも悪くない。
当日、私達のクラスはお化け屋敷でハリボテの子供騙しみたいな出来栄えだったけれど皆一生懸命やってくれて、また私も自分の仕事をちゃんとやり遂げて、充実していた。
とても楽しかった。
けれど。
「あ、佐藤くん」
ぽつりと紗綾が呟いた。
「何か用かな……。あ、もしかして」
紗綾が何か思いついたようだけど、多分それはいいことではない気がして。
「あ、愛海ちゃん。ちょっといい?」
またこのパターンなのね。
「私先行ってるね」
紗綾ごめんね。
「うん」
少し寂しげな表情をしていたのはきっと気のせいじゃなくて、これもきっと私のせいなんだなぁって。
「後夜祭なんだけどさ、誰かと踊る約束とかしてる…?」
最後のほうなんか消え入りそうでまったく聞こえなかったけれど、何が言いたいかくらいわかって。
「ううんまだしてないよ」
佐藤くんはいい人だけど、
「でもね、佐藤くんとは踊れない……ごめんね」
一緒に踊りたい人がいるから。
「そっか…こっちこそごめんね」
佐藤くんが謝ることじゃないのに。
でも罪悪感なんてなかった。
男の人をフルことはとくに何も感じなくなってきた。
こういうのって、よくないのよね。
自分が怖い。
❮9月23日❯
後夜祭で紗綾と踊った。私はとても幸せ者。