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Goodbye Days

作者: 斎藤一樹


 多分これが投稿される頃には中国にいる、斎藤一樹です。私の高校、修学旅行先が毎年中国なんですよねぇ……。


 さて、何故今日なのかといいますと、今日は私の通っていた中学校の卒業式。つまり、私の後輩達の卒業の日、ということで。


 それは、今までの三年間の終わりの儀式。そして、新しい始まりへの旅立ち。

 私、美影優の卒業式についての認識は、大体そんな感じだった。


 来賓の方々の挨拶や卒業証書授与を終え、司会の先生が次の題目を告げる。

「卒業生の言葉、三年C組、美影優みかげゆうさん、お願いします」

 名を呼ばれ、私は壇上へと上る。この学校の生徒会長を務めていた時に幾度となく上った、舞台へと上がる階段。そこを、一段一段、上っていく。

 一段上る毎に、今までの思い出を思い返し、思わず涙腺が緩みそうになる。なるほど、今まで先輩達が卒業式で泣いているのを見て、「そこまで感動するものなのかな?」とか思っていたけど。確かに、これは思わず泣いてしまいそうになる。小学校の卒業式とは全然違う。

 でも。未だ、未だダメ。せめてこの挨拶が終わるまでは、未だ―――。


 壇上に上がり、礼をしてから口を開いた。

 目の前には、人、ヒト、ひと。じっと私を見つめてくる。緊張しない、と言えば嘘になるけれど、もう慣れたから大丈夫。それよりも問題なのは、この胸の内の言葉にし難い感情。どうにか押さえ込んで、涙腺を締めた。


「―――私たちは今日、この中学校を卒業します。これからそれぞれ、みんな違う道を進むでしょう。それでも、私たちはきっと、この中学校で過ごした時間を、記憶を……忘れません。

 卒業生代表、美影優。」

 言い終わり、一礼する。沢山の拍手が鳴り響いた。


 卒業式が終わり、一頻りおしゃべりしてからみんなと別れて。私は一人、来月から通う予定の高校へと向かった。もしかしたら、受験の時に出会ったあの人と会えるかもしれない。そう思って。

 途中、何人かの同級生に告白されたけど、ごめんなさい、と言ったらあっさりと引き下がってくれた。私には、もう好きな人がいるから。

 みんなと別れるのは多少名残惜しかったけれど、今晩また打ち上げをやる時にまた会えるだろう。お父様には何も言ってないけど、まあいいでしょう。せいぜい心配をかける事と致しましょう。


 先程までいた戸成となり中学校から徒歩15分の場所にある、成華学園せいかがくえん。ここが、新しく私が通うことになる高校だ。

 時期から判断して、恐らく今は試験休みの筈。誰もいないだろう、と思っていたのだけれど。

「お。久し振りだな、いつぞやのお嬢さん?」

 どこか笑っているように聞こえる声が、横合いから聞こえて来た。聞き覚えのあるその声に、鼓動が高鳴った。先程の卒業式での挨拶よりも、ずっと緊張してる。内心の動揺と緊張を必死に声と顔に出さないようにしながら、私も口を開いた。

「はい、お久し振りです。…あと、私の名前は美影優ですよ。……貴方は?」

「俺かい?俺の名前は……」

 どこからか吹いた風が、さらりと私の髪を揺らした。

「……こよみだよ。神林かんばやし、暦だ」




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