第4話 お世話になりますぅ
次からコメディーチックに書ければと思います。
突然現れて、突然友達宣言して、突然同居を希望したボサボサ頭のロングヘアー幽霊こと桜井奈緒。
床にちょこんと座りながら笑顔で振り子のように上半身を左右に振っている。
それはもう楽しそうに。
それはもう嬉しそうに。
「やったですぅ。友達出来ちゃったですぅ~♪」
ランラン♪と歌まで歌っちゃったりして。
しかしそんな桜井さんの姿を尻目に僕は今一度冷静になって考えた。
確かに僕は友達になろうと言った。
しかしそれが何故“同居”に繋がるんだ?
幽霊と言っても女の子だよ?
仮にも僕は男なんだよ?
一つの部屋に男女が一緒に住むっていろいろまずいんじゃないの?
うわっ。
何か生々しい…。
と言うより桜井さんはそれで良いの?
危機感とかないの?
自分は幽霊だから大丈夫だと高を括っているのか?
それに付け加えて、僕が草食系男子だと思われてるのか?
確かに僕は虫も殺さないような人だと言われたことがあるけど。
僕だって男なんだぞ!!
やる時はやるんだ!!
“そもそも僕は幽霊に対して何かイヤらしいことをしようとしているのか?”
結論。
桜井さんに決めてもらおう。
「さ、桜井さんは良いの?」
「何がですか?」
桜井さんは振り子運動を止め、きょとんとした表情をした。
「いや、ここにお世話になるってことは僕と一緒に生活するってことだよ?」
「はい、そうですね♪」
そうですね♪って…。
「男と一緒に生活するってことだってわかってる?」
…生々しいなぁ、この言葉。
何か本当に昨日から人生の階段を最早ブリッジ状態で駆け上がってるなぁ。
「あたし、女である以前に“幽霊”ですから大丈夫です♪」
「………」
さっき僕が考えてたこと、フラグになってたんだなぁ。
「それに、え~っと…」
桜井さんはちょっと困惑した表情を浮かべながらこちらをチラチラ伺う。
ん?
突然僕のことチラチラ見てどうしたんだ?
「どうしたの?」
僕はとりあえず聞いてみた。
「すいません、よろしければ名前教えてもらえませんかぁ?」
あ、大事なこと忘れてた。
僕ってばうっかりさん。
「あ、僕は藤森祐介」
僕がそう教えると桜井さんの表情がパッと明るくなり、ニコッと笑う。
「祐介さんはそんな人じゃないって思ってますから♪」
また語尾に音符マーク。
どれだけ喜んでるんだよ…。
ん?
もしかして僕のこと好きなんじゃね?
「はい!!祐介さんのこと好きです!!」
僕はその言葉に驚き、咄嗟に桜井さんの方を見た。
桜井さんは優しくて、何とも言えない可愛い笑顔を僕に向けていた。
思わず僕はドキッとしてしまった。
か…。
可愛いぃー!!
…じゃなくて。
何で僕の思ってることがわかった!?
この人(幽霊)エスパー!?
「だって幽霊のあたしと友達になってくれた上に、ここにお世話になることを了解してくれた祐介さんを嫌いなわけないじゃないですかぁ」
あ、もう僕と一緒に生活するって決まったんだ。
僕、いつ了解したっけ?
と言うより。
やっぱり“好き”ってそう意味だったのね。
そうだよ。
昨日会ったばかりで恋愛感情が芽生えるなんていくら何でもないよなぁ。
良かったー。
もし恋愛に発展したらこれ『恋愛』カテゴリに移動しなくちゃいけなかったもんなー。
『この物語は、人と幽霊の禁断の恋を綴る切なくも哀しいラブストーリーである』
…あらすじの時点でつまんないでしょこれ。
まぁ、作者さんの文才の無さも関係してるけど。
とりあえず。
友達として好きと。
そう言うことになります。
何か…、ちょっと残念。
「じゃあもう僕に選択権はないと言うことで」
僕はそう言いながら桜井さんに手を差し出す。
「これから桜井さんが成仏するまでの間、よろしくお願いします」
桜井さんは僕の差し出た手を見つめて、そしてニコッと笑い。
「こちらこそよろしくお願いしますぅ」
僕の手を軽く握ってそう言った。
こうして、僕の日常がガラリと変化した。
僕にとってこれが吉と出るのか凶と出るのかわからない。
ただ。
何となく。
退屈はしなさそうだ。