第3話 友達ですぅ
もうちょっとでコメディー要素が入りそうですね。
長いねぇ。
本当にこれ『コメディー』のカテゴリで良いのかなぁ?
『ホラー』でも良いんじゃない?
ほら、僕最初の方絶叫してるし。
早くコメディ的な内容にならないかなぁ?
「友達になってください!!」
そう僕にはっきりと言ったボサボサ頭のロングヘアーの幽霊こと桜井奈緒。
未だに僕の目をジッと見つめて微動だにしない。
「えぇ!?な、何で!?」
僕は当然と言えば当然の反応をする。
きっと幽霊に友達を志願されることなんて後にも先にもないだろう。
しかも女の子の幽霊だし。
ボサボサ頭だけど正直可愛いし。
ぶっちゃけ嬉しいのか嫌なのか良くわからない。
「あたし、今までずっとあの学校にいました。ずっとずっとずぅ~っといました。他の幽霊たちともずっといました。ずっとずっとずぅ~といました。何の変化もなく、同じ幽霊たちと同じ場所で過ごしてきました。あたしはもうそれに飽きたんです。今こうしてあの学校から抜け出せて、成仏する道もありましたけど、あたしはもっといろんなものを見てみたい。もっといろんなことしてみたい。あたしは死んじゃって幽霊になっちゃいましたけど、現世でまだやり残したことがたくさんあるんです。だからあたし、まだ成仏はしたくないんです。お願いです!!あたしと友達になってください!!そうしたらあたしの世界は一気に広がる気がするんです…。だからお願いします!!」
「………」
何と言うか、桜井さんからすごい必死さが伝わってくる。
それほど今までの生活に飽きていた――と言うより、もう限界だったのだろう。
何もすることがないと言うことは、実はとても辛いものだ。
ましてや、あの学校にずっと監禁されていたとなるとそれはきっと拷問と言っても良いくらいに。
こんな僕に土下座なんてしてまで懇願している桜井さんの姿がそれを物語っていた。
「ちょ、ちょっと頭上げてよ」
さすがに土下座までして頼まれると僕も困る。
「自分勝手な頼み事だと重々承知しています。でも頼れるのは…、あなたしかいないんです…。どうかお願いします…」
桜井さんは僕の言葉に全く聞く耳を持たず、尚も僕に頼み込む。
「え~っと、桜井…さん?」
僕はそう言いながら丸まった桜井さんの背中をポンポンと叩く。
て言うか幽霊に触れる!!
え!?
幽霊って触れるの!?
「はい…」
桜井さんは僕の言葉に反応し、ゆっくりと顔を上げた。
悲しい表情を浮かべ、僕から目を逸らす。
目の回りが赤くなっていた。
泣いていたのかな?
別にそんな泣くことでもないと思うんだけど…。
「良いよ。僕で良かったら友達になろう」
僕はそんな悲しい表情を浮かべている桜井さんに向かって出来る限り精一杯の笑顔でそう告げた。
「え…?ほ、本当ですか!?」
桜井さんは僕の言葉に驚いた様子だった。
その証拠に目を大きく見開いたまま固まってしまっていた。
「うん、良いよ。それに幽霊から友達になろうなんてこんな貴重な体験、滅多に出来ないからね。そんな体験が出来た僕は多分、人生の階段を二段飛ばしで駆け上った感じがするよ」
そりゃあポンポンと跳ね馬の如く。
えへへー。
「ありがとうございますぅー!!!」
僕が心の中でそれはそれは愛くるしく笑っていると、突然桜井さんが僕に抱き付いてきた。
「うわっ!!ちょっ、ちょっと!!」
突然の抱擁に戸惑いつつも、僕はしっかりと桜井さんの柔らかさを体感した!!
冷たかった…。
でも柔らかかった!!
特に胸が。
…僕だって男なんだから仕方ないでしょ。
僕は女の子に免疫がないんだ!!
「あ!!ご、ごめんなさい!!あたしったらつい…」
桜井さんは我に返り、慌てながら僕から離れた。
恥ずかしさのせいか、若干頬に赤みが帯びていた。
「あたし嬉しくなると理性が吹っ飛んじゃうですよぉ」
振り子のように上半身を左右に振りながら桜井さんはニコニコしていた。
「あ、あぁ、そうなんだ」
僕はまだ少し戸惑いながらそう答える。
…待てよ?
てことはだ、桜井さんを喜ばせれば抱き付いてくれると言うことだよな?
うん、良いことを聞いた。
僕は心の中でガッツポーズをした。
「それじゃあ改めまして。本日からこの部屋にお世話になります桜井奈緒です。幽霊ですがよろしくお願いします!!」
桜井さんはビシッと警官の如く、綺麗な敬礼を決めながらそう言った。
「はい、こちらこそよろし…は?」
え?
ちょっと待って?
今何て言ったこの幽霊。
「桜井さん、今“この部屋に”って言った?」
「はい!!友達になったので成仏出来るまでこの部屋にお世話になることにしました!!」
あら、なんて立派な敬礼なんでしょう。
「えぇえええええええええ!!?」
やっぱり僕、叫びすぎだよね。