第26話 興奮しますぅ
男の本能として。
女性に興味を持つのはごく自然なことだ。
男の本能として。
女性の体に興味を持つこともごく自然なことだ。
それは僕こと藤森祐介という一人の男にも言えることである。
幽霊とは言えど、僕は一人の女の子と一緒に住んでいるのだ、その気持ちはよりいっそ強まる。
気持ち。
欲。
女の子に対する欲。
つまり“性欲”。
『煩悩の犬は追えども去らず』という言葉があるように、いくら理性を保とうとしても、いくら自制心を持っていても、“それ”は常に僕の体に、そして心に纏わりついてくる。
この共同生活が始まってからしばらく経つけど、改めて思う。
これは拷問だ。
「祐介さーん、お風呂良いですよー」
テレビを見ていた僕の後方からストレートロングヘアーのロリっ子幽霊こと桜井奈緒さんの声がする。
「うん、もうちょっとしたら僕も入るよ」
別にテレビに夢中になっているわけではないのだけれど、今お風呂に入ってしまうと番組の内容的にも中途半端になってしまうし、正直今お風呂に入れと言われると(言われてないけど)、逆にそれが億劫に感じてしまうものである。
だから番組が終わってから入ろうと思っていた。
「あ、ちょっとすいません。前通りますよー」
桜井さんはそう言って僕の視界に入ってきた。
「ちょっ!!桜井さん!!着替えてなかったの!?」
いつもなら桜井さんは脱衣所で着替えてから出てくるのに、今は体にバスタオルを巻いているだけという、僕みたいな思春期の男子の本能を刺激するような格好だった。
あ、ちなみに桜井さんの部屋着は、出会った当初のボロボロの布ではなく僕のTシャツとジャージです。
「いやぁ、ちょっとうっかりしてて着替え持っていくの忘れちゃったんですよー」
あははーと、お気楽に笑う桜井さん。
表情こそ無邪気でまるで子供のようだが、それに不釣り合いなスタイルが僕の視線を支配する。
今まで散々『ロリっ子幽霊』と通称してきたが、正直それは適切な表現ではなかったことをここで訂正しよう。
確かに身長は小さい。
なんせ身長165㎝の僕と顔一個分違うんだから。
しかしその小さい体に反比例して。
その小さい体から想像の出来ないような。
実りに実った胸。
むね。
ムネ。
MUNE。
おっぱい。
巨乳というわけではない、大き過ぎず、かと言って小さくもない、きわめて普通のジャストサイズである。
…いや、普通よりちょっと大きいかもしれないかなぁ。
Dカップくらい?
分かんないけど。
そんな見事で立派な胸をお持ちの桜井さんがバスタオル一枚で僕の目の前に現れたことで、僕の脳内は桜井さんのおっぱいことでいっぱいになるのは言わずもがなである。
つまり。
僕は興奮した!!
「あの~、祐介さん?」
「…え?」
「興奮するのは良いですけど、あたし祐介さんの考えてること全部分かっちゃうんですからね?」
そう言いながら片腕で胸を隠す桜井さん。
うぉおおおおおおお!!
またやってしまったぁぁああああ!!
まぁ、分かっていたけど。
気にしない気にしない。
ていうか桜井さん。
腕で胸が押し付けられたことで谷間が出来てある意味逆効果だよ。
はいはい僕の視線は釘付けですよー。
「いやぁ、そんなに見ないで下さいよぅ」
「あ!!ご、ごめん!!」
僕はそう言ってとっさに視線を逸らした。
うーん、やっぱり僕ダメだなぁー、女の子に免疫がなさ過ぎる。
ちょっと露出度の高い恰好をした桜井さんが目の前に現れただけで興奮しちゃってるし。
しかも胸を凝視する始末。
まぁ、当たり前と言ってしまえばそうかもしれないけれど、それはあまりにも都合が良すぎる良い訳になってしまうよなぁ。
「やっぱりじろじろ見られるのは恥ずかしいですぅ」
桜井さんは若干俯きながら着替えを手に取り脱衣所へ消えていった。
そんな桜井さんを目で追いながら僕は『恥じらう桜井さんも可愛いなぁ』なんて失礼なことを思っていた。
さて、お風呂にも入りまして。
今は寝る前のまったりタイムです。
「もう少ししたら夏祭りだなぁ」
「夏祭りですか!?夏祭りがあるんですか!?」
当然と言うべきか、面白いくらい食い付いてくる桜井さん。
「うん、近所の神社で夏祭りをやるんだって。怜が言ってたよ」
まぁ、僕は今年からこっちに住むことになったから行ったことないし、よく知らないけど。
そもそも近所に神社なんてあったかなぁ。
「祐介さん!!是非行きましょう!!」
うん、やっぱり目をキラキラさせてるなぁ桜井さん。
これ部屋の電気いらないんじゃない?
「そう言うと思ってたよ。もちろん行くつもりだから安心して」
「やったですぅー!!」
夜中にも関わらず、大声で叫びながら飛び跳ねる桜井さん。
「桜井さん!!今夜中だからね!?もうちょっと静かに!!」
「あ…、す、すいません!!嬉しかったんでつい…」
桜井さんはそう言って大人しく座椅子に座る。
あーあ、しょぼーんとしちゃった。
「まぁでも、はしゃいじゃうのは仕方ないよね」
「はいっ!!お祭り事は大好きなんですよあたし!!だから嬉しくなっちゃいましたぁー」
体を振り子のように左右に揺らして笑顔で言う桜井さん。
可愛いなぁ。
抱き締めたくなっちゃうぜ!!
「そうなんだ。あ、僕良いこと思い付いちゃったよ桜井さん」
「良いことですか?何ですか?」
「木下さんから浴衣借りようか」
「えぇー!?浴衣ですか!?」
「うん、夏祭りと言ったら浴衣だからね。それに桜井さん似合いそうだし」
形から入った方が桜井さんもテンション上がるだろうし。
「良いんですかぁ!?浴衣着ちゃっても良いんですか!?」
「いや、良いに決まってるじゃない。まぁ、木下さんが貸してくれればの話だけど」
「着たいです!!あたし浴衣着て夏祭り行ってみたいです!!」
「じゃあちょっと待っててね、木下さんに頼んでみるから」
僕はそう言って怜に電話を掛けた。
「……うん、ありがとう。じゃあ桜井さんに言っておくよ。うん、それじゃあ木下さんによろしく言っておいて。じゃああやすみー」
僕はそう言って通話終了ボタンを押した。
よし、交渉s
「どうでした祐介さん!!」
「うわぁ!!」
びっくりしたぁ…。
もう、いきなり話しかけないでよ桜井さん。
「んとね、木下さんが貸してあげるって。ついでに一緒に夏祭り行こうだって。良かったね」
「ぃやっっっっっっっったですぅぅぅううううううううー!!!」
叫び過ぎ!!
うるさいよ!!
モンスターの咆哮だよこのうるささは!!
「桜井さん!!夜中だから!!もうちょっと声をちいさk」
「祐介さん!!ありがとうございますぅぅううううー!!!」
「うわっ!!」
うわぁーーーー、抱き付かれたぁーーーー!!
ちょ、ちょっとヤバい!!
ヤバいって桜井さん!!
さっきバスタオル姿の桜井さんを見て改めて胸の大きさを確認した後だからなおさらヤバいって!!
しかも桜井さん、Tシャツの下に何も付けてないんだよー!!
だから、胸の感触が…、直に伝わってくるんだよぉぉおおおお!!!
あー、何か感じる…。
僕の胸辺りに二つの突起物が当たってるのを感じるぞ…。
あー、これ、完全に僕の体反応してるなぁ…。
「うぅぅー、あたし本当に嬉しいですぅぅー」
ちょっと桜井さん!!
胸に埋めた顔をすりすりしないで!!
ちょっと気持ち良いから!!
いや、普通に気持ち良いから!!
あー、桜井さんの頭からシャンプーのいい匂いがする。
何かトリップしそう…。
てかもうしてるわ。
少なくとも僕の体はしてる。
阿○さんに言わせてみれば、
『すごく……大きいです……』
状態ですねはい。
「祐介さん…」
僕がそんな馬鹿なことを考えていると、桜井さんはおもむろに頭を上げて僕を見る。
やめて!!
そんな何かを欲するような目で見ないで!!
おい作者!!
僕たちで遊ぶな!!
話の流れをグチャグチャにしてまで僕たちで遊びたいか!!
よろしい、ならば戦争だ。
フゥワフゥー。
「あたし祐介さん大好きですっ!!」
桜井さんは今日一番の可愛らしい笑顔でそう言う。
そして再度自分の顔を僕の胸に預けて、続けざまに囁くようにこう言った。
「当たってますね…。元気な祐介さんも好きですよ…」
「うわぁあくぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!!」
お父さん、お母さん…。
これは幸せなのでしょうか。
それとも不幸なのでしょうか。
「すぅ…、すぅ…、んにゃ、夏祭りぃ~…、すぅ…」
僕はベッドで気持ち良さそうに寝ている桜井さんを尻目に静かに起き上がる。
ちなみに桜井さんは僕のベッドに寝て、僕は布団で寝てます。
さすがには一緒に寝れませんよ。
ちょっと寝たいけど。
それは置いといて。
いやしかし、今日は疲れた。
あ、『疲れた』と言っても、あの後は何もなかったですからね。
僕の理性が疲れているんです。
まぁ、理性は疲れてるんですけど脳は興奮状態です。だから寝れないんです。
んー。
思い返してみると、何かチャンスを逃したような感じがする…。
何のチャンスか分からないけど。
でもやっぱりそういうことはお互いを好き合った恋人同士がすることであって、それに該当しない僕と桜井さんはしちゃいけないことだと思います。
それに桜井さんは幽霊ですしね。
いやでも、この冷めやらぬ性的興奮をどう処理しようか…。
うーん。
とりあえずケータイ持ってトイレ行ってきますかね。
僕が何をするかは、皆さんのご想像にお任せします。
それではまた。
祐介さんって意外とウブなんですね。うふふ…、可愛いです。