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第24話 くしゃみ出ますぅ

 お昼。

 僕は昼食を作るため、台所にいます。

 ふと思ったことがあるのですが、最近僕たちお昼は麺類ばっかり食べてるなーということです。

 別にそれがどうとかそういうわけではないのですけど。

 でもやっぱり健康面を考えると、麺類ばっかり食べてるのはちょっとまずいのかなーとも思うんです。

 ただ。

 いや、ただですよ?

 麺類は調理が楽なんですよ。

 麺を茹でて終わりですからね。

 もうその楽さと言ったらちょっと離れた所にあるリモコンを取るより楽ですよね。

 え?いや、それは違う?

 あぁ、そうですか…。

 まぁ、良いや。

 ということで。

「桜井さーん、ラーメン出来たよー」




 麺類の中でも調理のレベルが一、二位を争うほどの楽さを誇るインスタントラーメン。

 麺を茹でて、粉末スープを入れたらすぐ出来てしまうお手軽料理。

 しかもその味は調理方法から想像出来ないほど美味しい。

 そんないろいろな利点を兼ね備えられたインスタントラーメンはもはや人智を超えた食べ物。

 神より授かりし、高貴なる料理。

 まぁ、インスタントラーメンを考えたのは人間だけど。

「ラーメンですぅー♪祐介さん、今日は何ラーメンですか?」

 そう言いながらテーブルの前に座り、ラーメンを今か今かと待ちわびているストレートロングヘアーのロリっ子幽霊こと桜井奈緒さん。

「今日は醤油ラーメンだよ」

 はいっと、僕は桜井さんの目の前に出来あがった醤油ラーメンを置く。

「あー、ゆで卵が入ってますぅー」

「ラーメン作るついでに作ったんだよ、茹でるだけだし何かトッピングがあった方がいいと思って」

「やったですぅー♪」

 しかも半熟ですぅ~と、何やらご機嫌な桜井さん。

 うんうん、喜んでくれてるみたいだな。

 作ってよかった。

「あ、桜井さんコショウ入れるー?」

「あ、入れますー」

「はいはーい」

 僕は台所から僕の分のラーメンとコショウを持って、テーブルに向かう。

「はい桜井さんコショウだよ」

 持ってきたコショウを桜井さんに渡し、僕の分のラーメンをテーブルに置いた。

「それじゃあ食べようか」

「はい♪」

 そして僕と桜井さんは声を揃えて言った。

「「いただきます」」



「さて、まずはコショウをかけますよー」

 桜井さんは僕が持ってきたコショウをふたを開けてパッパッとラーメンにふりかける。

 パッパッ。

 パッパッパッパッ。

 パッパッパッパッパッパッパッパッパッパッ…。

 ん?

 あれ?

 桜井さんコショウかけ過ぎじゃね?

「ちょ、ちょっと桜井さん?コショウかけ過ぎじゃない?」

「え?そうでsぅぁはぁああっくしょぃ!!」

 うわっ!!

 桜井さん!!

 コショウふりかけながらくしゃみしないでよ!!

「ちょっとさくrぁあっ、へぁっ、ふぁあっ、はぁあああっくしゅんんんー!!!」

 ほら、思った通りだよ…。

 そらコショウふりかけながらくしゃみしたら粉がこっちまで飛んでくるよ。

 そら僕も盛大なくしゃみをかますよ。

「ごめんなさい!!祐介さん大じょぶぁあくしょん!!!」

 大ジョブアクション!?

 どんなアクションなんだろう!!

「そんなアクションなんてあり…、ぁりぁ、ふぁ、…っはぁああ!!!」

 あぁ、これ大きいの来るな…。

 そんなことを思いながら、僕は暢気(のんき)にラーメンを(すす)る。

「はぁああぁっ!!っあれ?止みましたねぇ」

「そうだね」

 それはそうと桜井さん、早く食べないとラーメンのびるよ?

「うーん、この出そうで出ない時、すごいもどかしいですね」

 桜井さんは釈然としない様子でコショウの入ったラーメンを混ぜる。

「それ分かる、すっごい分かるよ。僕も何度も経験あるもん」

 くしゃみは出たらすごくスッキリするし、出た瞬間のあの爽快感は正直病みつきになる。しかし、出るまでの鼻がムズムズする感じはもどかしい。

 それでくしゃみが出ればいいけれど、今回の桜井さんみたいに出そうで出なかった時はもどかしさを通り越して怒りに変わるほどじれったいものだ。怒りっぽい人や、気が短い人はマジギレにまで発展する場合もある。僕もたまに学校とかで『くっそ、出ねぇ!!』って怒鳴っている人を見たことがあるし。

「あー、何だかスッキリしないですねー」

 そう言いながらちゅるっと麺を啜る桜井さん。

「桜井さん」

 ここで僕は桜井さんに提案する。

「スッキリしたい?」

 と。



 さて、昼食のラーメンを食べ終え、お決まりのまったりタイムです。

「祐介さん、どうやったらスッキリ出来るんですか?」

 桜井さんは小首を傾げながら僕に問う。

 そんな桜井さんに僕は何も言わず、目の前にその答えを提示する。

「ん?ティッシュ?」

「そう、ティッシュ」

 僕が提示した答え――それは一枚のティッシュだった。

「祐介さん、ティッシュでどうやってスッキリするんですか?」

 桜井さんは目の前にティッシュを出されてもやはり理解に苦しんでいる様子だった。

 まぁ、それもそうだ。

 突然目の前にティッシュ一枚出されて、『これが答えだ!!』って言われても(ていうかそもそも言ってない)、大抵の人は分かっても、桜井さんにはきっと分からない。

 なんせあの桜井さんなんだから。

「まぁ見ててよ」

 僕はティッシュの(かど)をつまみ、ねじる。

 そして数回ねじって、それが(つの)のようになったところで、再度桜井さんの目の前に出した。

 ドヤ顔で。

 しかもじゃじゃーんとか心の中で言って。

「心の中で言ったって結局あたしには分かっちゃいますからね?それなら声に出した方が良いんじゃないでしょうか?さぁ祐介さん、もう一度!!」

「………じゃじゃーん」

「うわぁー、何ですかこれぇー(棒読み)」

 …こっちが何だこれだよ。

 はぁ…、せっかくドヤ顔したのに。

「祐介さん」

 桜井さんはおもむろに僕の肩に手を乗せて、

「ドンマイ☆」

 と、とびっきりの笑顔を僕に投げかけてきた。

「何が『ドンマイ☆』なんだぁー!!」

 今僕は何に対して慰められたんだー!!

 別に僕すべったわけじゃないのに!!

 むしろボケだつもりもないのに!!

 仮にボケたとしたらどれだけ不完全なボケなんだ!!

「すいません(棒読み)。てかこれ、こよりですね」

 その(棒読み)にハマったな桜井さん。

 もう、いいッス…。

「そう、こより。これを使えば出そうで出ないくしゃみも一発で“強制的に”出せるよ」

「そうですかー、じゃあやってみようかなー…とはなりませんからね」

「ナンデ!?」

「そんなおっきな声で、しかもカタカナ表記で『ナンデ!?』って言われても…」

 そう言って桜井さんは下を向いてもじもじする。

 可愛いぃーーーーーー!!

「そんなこよりなんて恥ずかしいじゃないですかぁー、ましてや祐介さんの前ですよ?出来るわけないじゃないですか」

 お?

 これは…。

 僕のことを異性として意識してるってこと!?

「ふぁっ、あ、あた、っは、当たり前…へぁ、あぁぁあ当たり前じゃなぶぃぃぇえええくしょい!!!ないですか!!」

 その割には僕が持ってたこよりをいつの間にか使ってるよね。

 そしてお世辞にも女の子らしいくしゃみとは言えない豪快なくしゃみしたよね。

「ひぇっくしょい!!あー、こぇ、止まんないれすぅぅういぃぃええっくしょい!!っは、っはぁああっくしょいぇ!!!」

「桜井さん!!そのこより持ってる手を止めてー!!」

 これじゃあ終わりのない、終わりの続きだよ。

「でぃぃぃぃぁぁあああああっっっっっっくしょおおおおおいいぃぃぃい!!!!」

 すごいの出たーーー!!!

 てか“で”から始まるくしゃみなんて聞いたことないよ。

 貴重なくしゃみを聞きましたね。

「っはぁ、はぁ、はぁ…。ゆうずげざぁーん」

「ど、どうしたの桜井さん…」

 今の桜井さんの状況を僕はあえて言いません。

 ただ、一言で言ったら『酷い』です。

 僕はそんな桜井さんに、若干――本当にわずかながら若干引いちゃったもん…。

 ごめんね桜井さん。

「ばなびずがどばりばぜーん(鼻水が止まりません)」

「そらあんだけくしゃみしたら鼻水も大量生産されるわ…。はいティッシュ」

 僕が桜井さんにティッシュ箱を差し出すと、桜井さんは勢いよくティッシュを何枚も取り出し、それまた豪快に鼻をかむ。

「うぇーん、祐介さーん、これ酷いですよぉー」

 そして鼻水と共に流れてくる涙をティッシュで拭きながら僕に訴える桜井さん。

 そんな桜井さんに僕は一言、

「スッキリしたでしょ」

 と笑顔で言ってあげました。

「スッキリしませんよ!!お返しです!!」

「桜井さん!!ちょっ、ちょっとまぁああぇぇええっくしょおおい!!!」

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