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北風と太陽、それに女神

作者: 椎名正

 これは有名な昔話です。


 あるとき北風と太陽が賭けをしました。

 旅人のコートをどちらが先に脱がせられるか。

 まず北風が強風で旅人からコートをはぎ取ろうとします。

 旅人がコートを押さえ上手くいきませんでした。

 次に太陽が旅人の周囲を温かくします。

 旅人は暑さに強いのでコートを脱ぎませんでした。

 そこに女神が賭けに混ぜろとやってきます。

 女神はセクシーな人間の女性に化けて、旅人を誘惑します。

 「お兄さん。そんなコートを脱いで、私といいことしましょう」

 北風と太陽は抗議の声を上げます。

 「汚いですよ。女神様」


 しばらくして、顔を真っ赤にした女神が戻ってきました。

 北風と太陽は大笑いしました。

 「ふられちゃいましたね、女神様」

 「女神様はわかってませんんね。人間の男は、そんなイケイケよりも清純ぽい異性が好みなんですよ」

 太陽が育ちのいい純朴そうな人間の女性に化けます。

 「じゃあ、いってきます。今夜は帰ってこれませんから」

 すぐに帰ってくる太陽。

 「なんで、うまくいかないんだ?」

 「ひょっとして、あの旅人の好みこんなのじゃ・・・」

 北風が十歳ぐらいの女の子に化ける。

 すでにコートを脱がせることよりも、旅人をおとすことに目的が変わった女神が言った。

 「よし、行け!」

 「これコンプラ違反ですよ」

 「大丈夫よ。この女神が許可だしているんだから」

 旅人へと突撃した北風が、すぐに泣きながら戻ってくる。

 「あの人、めちゃくちゃ論理感がしっかりしていて、すごく心配されてすごく怒られました」

 女神は何事か思いつく。

 北風と太陽はろくな考えじゃないなと察する。

 「あの旅人は、おそらく特殊な性癖なのでしょう」

 女神は猫耳と尻尾をはやす。

 「ご主人様と遊びたいニャー」

 「女神様。すごく、馬鹿っぽいです」

 「こういうのは照れたらダメなのニャー。では、行ってくるニャー」

 戻ってくる女神。

 「交尾できなかったニャー」

 北風が意見を出す。

 「それ、甘いんじゃないんですかね」

 「どういうことニャー?」

 「人間の割合が大きいんじゃないですかね。もっと獣を前面に出したほうが。いえ、いっそのこと人間の部分はすっぱり削った方が」

 「猫そのままの方が、いいってわけ?」

 「はい。もっと言えば、猫みたいな一般に可愛いかんじな動物は外した方がいいと思います。私、犬になります」

 「なら、私は猿に」

 「それなら、私は鳥にするわ」




 「ただいま」

 旅人は帰宅しました。

 「お帰りなさい、あなた」

 ちゃんとしている旅人は、浮気をいっさいしませんでした。

 「お仕事の鬼退治はどうでしたか?」

 「こいつらが手伝ってくれて、はやく終わらせることができたよ」

 旅人は、自分の身体にまとわりついている、北風の犬、太陽の猿、女神のきじを女房に紹介する。



 言い忘れましたが、これ桃太郎の昔話です。


   おわり


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