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第8話 リュバンの秘密

 私の部屋にはリュバンがいた。部屋の掃除をしてくれている。その様子は普段と変わらない。彼女だけはこんな状況でも落ち着いている。


「大変よ。お父様が反逆罪で捕まってしまったの」

「まあ。それは・・・・御心配でしょう」


 リュバンはそう言ったが。彼女はすでにこの状況を知っている気がした。


「どうしよう?」

「私には何とも・・・」


 リュバンはそう言うが、彼女なら何かできるのではないかと思っている。とりあえず・・・。


「お父様の様子が知りたいの」

「王宮の中の牢屋では・・・」

「どうしてそれがわかるの? そこにいるって。私はリュバンにそんなことを言っていないのに」

「それは・・・」


 リュバンは返答に困っていた。


「私はわかっているのよ。あなた魔女でしょう。だからいろんなことを知っている」

「お嬢様。そんなことは・・・」

「隠さないでいいのよ。私にはわかっているの。こんなに長い間、いっしょにいるのだから」


 私のそう言われてリュバンはふっとため息をついた。そして真剣な目で私を見た。本当のことを言わねばならないと腹をくくったようだ。


「お嬢様には敵いません。私は魔法が使えます」

「それならお父様の様子がわかる?」

「調べさせましょう」


 リュバンは呪文を唱えた。すると1羽の小鳥が現れ、彼女の手にとまった。


「スピリットよ。デザート公爵のご様子を見てきておくれ」


 するとその小鳥はわかったというようにうなずいて窓から飛んでいった。


「お嬢様。スピリットが旦那様のご様子を見てくるでしょう。しばらくのご辛抱を・・・」

「リュバン。何とかお父様を助けられないの?」


 私はリュバンの魔法があれば何でもできると思った。


「お嬢様。魔法は万能ではございません。いくら魔法でもできないことがございます」

「そうなのね。ここで待つしかないのね」

「ええ。状況がわかれば打つ手が見つかるかもしれません」


 私たちはこのまま待つしかない。スピリットが何かをつかんで帰ってくるのを・・・。


 ◇


 屋敷の中は火が消えたように静かだった。マーガレットはショックから立ち直っていた。だがどうにもできないとわかっているので窓辺のソファに座って。外を見てため息ばかりついていた。

 2人の兄は違った。ブルーメは鉄の塊を持ち上げて体を鍛えている。一方、レーヴは剣を振り回して練習している。こんな時に鍛錬か・・・と思いつつ、私は2人に聞いてみた。


「何をされているのですか?」

「この家に兵士が乗り込んできてお前やお母様を連れて行こうとするかもしれない。だがそんなことはさせない」

「ああ。男2人が黙っていると思われたら大間違い。我らの力を見せてやる!」


 2人とも威勢のいいことを言う。


「アミ。おまえはこのブルーメがきっと守る!」

「いや、このレーヴだ!」


 シスコンがあふれ出している。それでもいざという時は守ってくれるというのだからありがたい。



 少ししてプリモ伯爵の使者が屋敷に来た。兄たちは警戒していたが、それでも話だけでも聞こうと奥の部屋でマーガレットとともに使者を迎えた。不思議なことに私は呼ばれなかった。いや、使者がマーガレットとブルーメ、レーヴだけと指名してきたのだ。

 その密室で何かが話し合われたようだ。使者が帰って奥の部屋から出てきたマーガレットと2人の兄の顔が明るくなっていた。


「どんなお話でした?」

「いや、たいした話ではないわ」

「ああ、なにもない」

「しばらくここで待っていたら何とかなる」


 マーガレットと兄たちはそう答えた。先ほどまでの悲観した様子は消えていた。


(あまりの変わりようだ。何かあるわ!)


 私はこっそりマーガレットの部屋に忍び込んだ。彼女は大事な書類をきれいな箱に入れている。使者から何か受けとったに違いないとその箱を開けてみた。すると案の定、プリモ伯爵からの手紙が入っていた。そこに書かれていたのは・・・


「マーガレットとブルーメとレーヴの身の保証はする・・・・。デザート公爵家の財産は没収となるが半分はマーガレットに返す。ブルーメにデザート公爵家を継がせ、レーヴに復活させたベーコミ子爵家を継がせる・・・・」


 これを見て3人は欲に目がくらんだようだ。いや、もともと政略結婚でこの家に来たから愛着などないのかもしれない。

 私のことは書かれていない。多分、父と同じようなことになるのだろうか・・・。兄たちはもう私を守ろうという気はないようだ。シスコンも目先の金と地位には敵わないということか・・・。



 その間にも王宮内では動きがあった。デザート公爵の反逆に加担したということで王宮内で多くの人がつかまって投獄されたという。それはすべてプリモ伯爵の政敵ともいえる人たちだった。もう王宮内に頼れる人は誰もいない。

 私たちは外部との接触を禁じられているが、屋敷を囲む兵士の中には私たちに同情的な者もいる。お茶を出したら声を潜めていろいろと教えてくれた。彼らもこの度のことを快く思っていなかったのだ。


「まったくひどいものだ。王宮の牢屋はいっぱいだ。多分、皆、縛り首だ。王宮内に泣き声が響き渡って怨嗟の声で充満している」

「王様は? 王様は今回のことは?」

「プリモ伯爵様がうまく言上しているのだろう。スピカ王子様が異を唱えているとは聞いているが・・・」

「デザート公爵は?」

「さあ、王宮にはいなかったような・・・」


 父のことは誰も知らなかった。プリモ伯爵が警戒して別の場所に移して幽閉されているのかもしれない。


「お父様。どうかご無事で・・・」


 私は神様に祈るしかなかった。



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