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第53話 逆襲

 プリモ伯爵は次に磔台の方を向いた。


「今度は王たちを殺す。そうすればお前たちの希望は消えるだろう。ふふふ」


 プリモ伯爵は不気味に笑いながら磔台の方に右手を伸ばした。このままでは王様をはじめ大臣や父は殺されてしまう。その時、ドドドと地響きがしてきた。


(な、なに?)


 私は周囲を見渡した。プリモ伯爵も辺りを探っている。彼が起こしたわけではないようだ。すると柵が吹き飛ばされるように破壊されて、牛や羊、挙句に鶏までも乱入してきた。チャオに連れられて牧場の動物たちも駆けつけたのだ。牛たちは処刑場を走り回り、兵士や人々は逃げ惑っていた。


「家畜を追い払え!」


 プリモ伯爵はそう叫ぶが辺りは混乱している。もうもうと土煙が舞い、視界が奪われている。その時、土煙に紛れてベールをかぶった女の人が私のそばに来て手を引いた。


「アミ! こっちに来て!」


 私はわけがわからず、手を引かれるままその場から逃れた。やがて処刑場を出たところでその人は立ち止まり、振り返ってベールを取って顔を見せた。


「心配かけないで!」


 それはマーガレットだった。あの元継母が・・・とても信じられなかった。


「私たちはあなたの味方よ。プリモ伯爵に近づいて逆転の機会を狙っていたのよ」

「じゃあ、お母様たちは・・・」

「ええ、こちらでも助け出す計画を練っていたのだけどもね」


 マーガレットたちは父たちを救出しようとしていたのだ。


「ブルーメとレ―ヴからあなたが魔法剣士となって戦っていることを聞いたわ。。こんな無茶をするなんて・・・」


 マーガレットは私の髪をなでた。彼女は私のことをひどく心配してくれていた。私を思ってくれる家族はちゃんといたのだ。


「こちらの計画とは違ったけど、この機に乗じて王様たちを取り戻せる」

「でも伯爵が・・・」

「大丈夫。ブルーメとレーヴがうまくやっているわ。2人の服従魔法は解いたわ」


 土煙が晴れてきている。確かに磔台には誰もいない。2人が助け出したようだ。だがマーガレットはどうやって魔法を解いたのか・・・。マーガレットは指にはめている紫色の指輪を見せた。これは彼女が肌身離さずに持っていた大切なものだ。


「これはあなたの本当の母、マリから預かったもの。魔法の指輪よ。これで私は魔法が使えたの。マリとは一番の親友だった。彼女は死に間際、私にこれを託した。愛する娘を頼むと。それから私はあなたのそばにいて約束を守ろうとしたのよ」


 初めて聞く話だった。マーガレットは私のために父と結婚してデザート公爵家に来てくれたのだ。


「ここから先は・・・本当は私がするはずだったけど、アミ、あなたが決着をつけたらいいわ。あなたならやれると信じている」


 マーガレットはその指輪を外して私の指にはめた。


「ありがとうございます。お母様。私、やります!」


 私は心からマーガレットを母と呼んでいる気がした。そしてこの母の思いとこの魔法の指輪があれば・・・。私は堂々と処刑場に戻っていった。

 辺りの混乱は収束しつつあった。兵士や人々は牛に追われてどこかに行ってしまった。ただ一人、プリモ伯爵がその場に残されている。彼は処刑する者たちが消えて半狂乱になってわめいていた。


「どこに隠れた! きっと殺してやる! すべて抹殺してやる!」


 私はその前に立った。


「今度こそ、あなたを倒す! シンデレラ降臨!」


 すると今度は魔法剣士に変身できた。この魔法の指輪のおかげだ。


「おのれ! こうなったらおまえから殺してやる!」


 プリモ伯爵が杖を取り出して向かってきた。もちろんその杖には魔法がかけられ、威力がけた違いに増している。私はそれに対抗するため剣を破壊モードにした。

 プリモ伯爵は杖を自由自在に操る。私も負けずに剣を振り回す。その両者が交差し、火花を散らす。何度も打ち合ううちに杖の動きがはっきり見えてきた。これなら・・・。

 私はプリモ伯爵の杖の隙をついて剣を繰り出した。それは彼の体を貫いたはず・・・。だが手ごたえはなかった。


「えっ! いない・・・」


 目の前からプリモ伯爵が消えていた。だが背後にその気配を感じた。あの短距離転移魔法で私の後ろに移動していたのだ。すぐに私の背中に杖が振り下ろされる。


「バーン!」


 その杖は私の背中に届かなかった。1本の剣がそれを受け止めていた。振り返るとあの男がいた。


「ジョーカー!」


 私を守ってくれたのはジョーカーだった。敵だったはずなのになぜ・・・。


「助けたわけじゃないぞ! こやつのやり方が少々汚かったからだ。だが次はこうはいかんぞ! おまえを倒すのは俺だ。忘れるな!」


 ジョーカーはニヤリと笑うとプリモ伯爵の杖をはね返して紅い剣を繰り出した。


「貴様! 裏切るのか!」

「俺は紅剣の死神と呼ばれた男。リック・ジョーカー! 自らの信じるがままに剣を振るう!」


 ジョーカーの剣はすさまじい。赤い閃光にも見える。だがプリモ伯爵は短距離転移魔法を使って斬られる前に姿を消す。これではいつまでたってもプリモ伯爵に一撃を加えることはできない。埒が明かないと見てジョーカーは何かを思いついたようだ。


「シンデレラ! 俺が奴の動きを止める! 一瞬の隙を突け!」


 ジョーカーはそう言うといきなり剣を下した。


「あきらめたか! これを食らえ!」


 プリモ伯爵は杖を突いてきた。すると待ってましたとばかりにくるりと体を反転させて剣を手放し、がばっとプリモ伯爵に抱きついて動きを止めた。


「今だ! シンデレラ!」

「わかったわ!」


 私は接近して剣を振り上げた。プリモ伯爵は短距離転移魔法で逃げようにもジョーカーに抑えられている。


「おのれ!」


 プリモ伯爵は鬼の形相で叫んでいる。私は剣で思いっきり斬りつけた。激しい衝撃が彼の全身に駆け巡った。


「ぐえー!」


 プリモ伯爵は断末魔の叫びを上げた。そして全身が石のようになり、やがて崩壊して砂と化して崩れていった。黒魔術師を完全に葬ったのだ。


「やった! ついに倒した!」

「よくやった! 見事だった。シンデレラ」


 ジョーカーは落ちていた剣を拾って腰に戻した。


「助けてくれたありがとう!」

「ふふん。助けたわけじゃない。ある女に必死に頼まれてな。俺は女の涙には勝てないんだ・・・」


 ジョーカーはニヤリと笑った。その女とは・・・多分、マーガレットだ。


「これで俺の役目は終わった。シンデレラ! また会うこともあるだろう。さらばだ!」


 ジョーカーは私に背を向けて去っていった。その姿は町の群衆の中に消えていった。




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