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第52話 突入

 王宮は大混乱だったようだ。プリモ伯爵が乗り込んできて、その力で無理やり王様を退位させ、シリウス王子を傀儡の王として自らが権力を握ろうとしていた。もちろん王妃様とシリウス王子は自分のところに監禁している。


「民よ! この国を腐敗させた王とその佞臣どもを公開処刑する。場所は大広場。時は・・・」


 貼り紙が出された。これに不服を言う民はことごとく役人に取らえられ牢屋に入れられた。プリモ伯爵の服従魔法が王宮全体にいきわたろうとしている。これからのことを思うと王都の民は絶望感に打ちひしがれ、皆が家にこもるようになった。



 私は処刑される広場に乗り込むつもりだった。あれから何度も魔法剣士に変身しようとしたが果たせなかった。だがこの身一つでもプリモ伯爵に抵抗を示したい。これは最高権力者の伯爵、いや次期王への反逆以外の何者でもない。私は殺されるか、極刑に処せられるだろう。


 あれから牧場に何事もなかったかのように戻った。プリモ伯爵と戦ったことや父が生きて捕らえられていることなど誰にも話さなかった。リュバンについても見つからなかったとだけ伝えた。牧場のみんなをこれ以上、巻き込みたくなかったからだ。



 ついにその日が来た。誰も起きていない早朝に出発する。誰にも別れを言わず、ただ置手紙を残して・・・。一人、愛馬ファンタにまたがって王都まで行くつもりだ。


(楽しかった。この牧場。今まで生きていた中で素晴らしいものをくれた。ありがとう! もうここに戻ることはない。さようなら・・・)


 玄関のドアを開けた。すると・・・。


「お嬢様。おはようございます。さあ、我々がお供いたします」


 そこにはララ、ソワレをはじめキキ(?)、ジジ(?)、ナナ(?)、ミミ(?)が並んでいた。みんな頭に鍋をかぶり、手には棍棒を持っている。馬車まで用意してある。


「みんな・・・」

「みんな揃っています。ちゃんと声をかけてくださいませんと困ります」


 ララが笑顔でそう言った。チャオもその横でお座りをして「ワン!」と吠える。


「巻き込みたくないの。王都に殴り込みをかけるのよ。生きて帰れないのよ!」

「お嬢様。水臭いですよ。皆、お嬢様に命をささげる覚悟です。断られてもついて行きます!」


 ソワレが言うとみんながうなずいていた。私にはこんな力強い味方がいたのだ。


「ありがとう。みんな。いっしょにこの国を救いましょう!」

「おう!」


 私たちは王都に向かった。最後の決戦に臨むために・・・。


 ◇



 大広場はすでに処刑の準備が整っていた。いくつもの磔台が置かれて、周囲には柵が張り巡らせてある。中の警備は厳重だ。兵士と剣士が多く配置されている。その中にはまた服従魔法をかけられたと思われるブルーメとレーヴの姿があった。

 その柵の外に王都に住む人たちが集まっていた。皆、一様に悲しそうな顔をしている。私たちもその中に紛れた。

 やがて王様と大臣たち、そして父のデザート公爵が連行されてきた。


「王様!」

「おうさまあ!」


 皆が口々に声をかける。それを警備の兵士が「うるさい!」と槍の柄で殴りつけて咎めていた。

 処刑は正午ちょうどに行われる。磔台に括り付けて、左右の兵士が槍で突くのである。時間が迫り、王様たちが磔台に上がった。そしてようやくプリモ伯爵がその場に出てきた。その手には書状を持っている。彼は王様の磔台の前でそれを開いて読み上げた。王様たちを断罪しようというのだ。


「・・・この国の腐敗は目に余るものである。よってこの度、堕落した王を廃し、その佞臣ともに処刑する・・・」


 そこで私は柵を飛び越えて中に入った。


「待ちなさい!」


 大声で叫ぶとプリモ伯爵が振り返った。


「貴様か! そこでおとなしく処刑を見ておれ!」

「みんな! 聞いて! そのプリモ伯爵は黒魔術師よ! この国を乗っ取ろうとしているわ! みんなで王様を助けましょう!」


 私は柵の外で見ている多くの人たちに訴えた。すると「ワー!」と歓声が上がった。


「そいつをつかまえよ!」


 プリモ伯爵の命令に兵士たちが私を取り押さえようと近づいてきた。するとソワレたちも中に入って私の周りを固めた。


「お嬢様には指1本触れさせねえ!」


 彼らは頭に鍋をかぶり右手に棍棒をもっている。これに怒ったプリモ伯爵が大声を上げた。


「早く狼藉者をとらえよ! 殺してもかまわん!」


 兵士たちとソワレたちが棍棒と槍で叩き合いを始めた。兵士の数の方がはるかに多いからこのままでは包囲されて袋叩きにされてしまう・・・。だがそれを見ていた人々たちがようやく立ち上がった。


「俺たちも王様を助けるんだ!」


 人々は柵を打ち倒し、乱入してきた。そこで兵士たちと取っ組み合いを始めだした。そんな混乱状態の中、私はプリモ伯爵の前に出た。


「王都の人たちはあなたに従わないわ! あきらめてここを出て行きなさい!」

「ふふふ。こんな奴らなど儂の黒魔法で一捻りだ!」


 プリモ伯爵は逆らう人々を抹殺しようとしていた。このままではここは凄惨な場になってしまう。


(神様! どうか私を魔法剣士に!)


 私はこう祈りながら短剣を引き抜いた。


「シンデレラ降臨!」


 だが一生懸命念じても私の身に変わったことは起きない。やはり変身できないのだ。


「ふふふ。あの魔女の力がなければ貴様は何もできん! 儂の力を見せてやろう」

「やめなさい!」

「ここでお前は見ているがいい!」


 プリモ伯爵は呪文を唱えて人々に向かって右手を伸ばした。すると「バーン!」と爆発が起こりそこにいた人たちは吹き飛んだ。何もできないでいる私は拳を握りしめるしかなかった。


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