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第48話 魔法の使い手

 私は驚きのあまり、思わず声を上げた。


「プリモ伯爵!」


 それはプリモ伯爵だった。以前、見たことがあるから間違いはない。ぞっとするような冷たい目をしている。王子様はプリモ伯爵を見て、すぐに向かって行った。


「伯爵! よくもこんな目に!」


 すると伯爵はあわてずに何やら唱えて王子様に右手を向けた。すると王子様はまるで時間が止まってしまったかのように動きを止めた。


「何をしたの! 王子様に!」

「王子のすべての動きを止めた。完全魔法だから儂が魔法を解くまで王子はこのままだ。ところでおまえがシンデレラか?」


 プリモ伯爵は不気味なほど低い声を出す。


「そうよ。あなたが王子様をこんなところに閉じ込めたのね!」

「そうだ。シリウス王子に王様になっていただくためだ。スピカ王子のあとは王様。仲良く死んでいただく。これでこの国は儂のものになる」

「そんなことはさせない!」


 私は剣を構えた。するとプリモ伯爵は短剣を抜いて止まっている王子様の喉に突き付けた。


「動くな! 動けばスピカ王子の命はない!」

「やめなさい! 卑怯者!」

「ふふふ。わめくがいい! だがおまえはどうすることもできまい」


 確かにそうだ。王子様の命が危ないこの状況では私は動くことができない。


「王子様を放して私と勝負しなさい!」

「嫌だな。もっともおまえは魔法が使える儂に勝つことなどできんがな」


 プリモ伯爵は呪文を唱えて私の方に左手を伸ばした。すると床に落ちていた縄が私の腕や足に絡みついた。手足が縛られ私は動けなくなった。


「ゆっくり殺してやるからな」

「負けないわ!」


 私は暴れて何とか縄から逃れようとしたが、しっかり絡みついた縄は緩まない。


「どうにもできまい。儂の邪魔をするものはこうなる。おまえの仲間の魔女もそうだ」

「リュバンはどうしたのよ!」


 するとプリモ伯爵はニヤリと笑った。


「冥土の土産に教えてやろう。叩きのめしてギース館に閉じ込めた。魔女ならいろいろと使い道があるからな。ついでにそこにはお前の父のデザート公爵も閉じ込めてある」

「えっ! どうしてそれを!」


 私は驚いて思わず声を漏らした。プリモ伯爵は私の正体を知っていたのだ。


「ふふふ。驚いたのか? 今まであの魔女のせいでうかつに手が出せなかっただけだ。だがこうして自分から来てくれたのなら話は別だ。ここではあの魔女の加護は効かぬ。殺すことはたやすい」


 私は知らず知らずにリュバンに守られていたのだ。


「殺すなら殺しなさい! あんたなんか怖くないわ!」

「威勢の良い娘だ。望み通り殺してやろう。だが殺すのは鷲ではない。おまえの兄だ!」


 兄といえばブルーメとレーヴだ。もっとも継母のマーガレットが父と離婚したから正確には元兄なのだが・・・。


「儂の服従魔法で2人はいいなりだ。もうすぐここに来るだろう。愛する兄たちに殺される・・・こんな残酷なことはないだろう」


 プリモ伯爵は勘違いしている。向こうはシスコンだがこちらは何とも思っていない。とにかく元兄たちが服従魔法にかかっていることが分かった。それで以前、王子様を暗殺しようとしたのか・・・。


「ふふふ。服従魔法は意志薄弱の者にはよくかかる。王宮の高官や王様さえも。おまえの母のマーガレットもそうだ」


 プリモ伯爵はそれで王宮の支配をもくろんだのだろう。だが一方で服従魔法がかからぬ人もいたのだろう。多分、スピカ王子様や王妃様、そして父もそうなのだろう。それで自分の計画に邪魔になる父や王子様を排除しようと、こんな手を打ってきたのだ。


(このままでは大変なことになる。プリモ伯爵が国を乗っとってしまったなら・・・)


 プリモ伯爵には小麦の件がある。彼が国を自由に動かすようになれば私利私欲のため、人々を踏みつけるようなことをするだろう。

 何とかしなければと思っていると、外からは階段を駆け上ってくる足跡が聞こえてきた。ちょうど2人分だ。


「来たようだな」


 プリモ伯爵はニヤリと笑った。するとそこにブルーメとレーヴが現れた。見た目はいつもの元兄たちと変わりはない。


「ブルーメ! レーヴ! こやつは反逆者だ。殺せ!」


 プリモ伯爵はそう命じた。すると元兄たちの目が変わった。意志のないうつろな目だ。


「わかりました。伯爵様!」


 2人は答えた。プリモ伯爵に完全に操られている。剣を抜いて構えた。私は縄から抜け出そうとしたがやはりどうすることもできない。


(そうだ! この剣のモードを変えて・・・)


 切り裂きモードで剣を放して操れば、手足に絡みついた縄を切ることができるかもしれない。だが・・・


(あっ! まずい! 時間が来た!)


 その前にタイムリミットが来たことを知った。12時になってしまったのだ。


(しまった! 変身が解ける・・・)


 剣は元の短剣に戻り、私は元の姿に戻った。魔法剣士が私であることが元兄たちにばれてしまった。いや、今はそれどころではない。これではもうどうすることもできないのだ。このまま元兄たちの剣に体を貫かれるのか・・・。

 だが2人の元兄の動きは止まった。元の姿に戻った私を見て2人はかなり驚いたからだ。


「シンデレラがアミだったとは・・・」

「どうしてアミが・・・」


 2人は茫然として剣を下ろしている。いくら服従魔法がかかっていても意志があれば止められるのか・・・。

 それを見ていたプリモ伯爵は苛立って大声を上げた。


「何をしている! さっさと殺せ!」


 服従魔法で操られている2人の体はまた動き出した。剣を振り上げて私を上から斬ろうとする。


「お兄様! やめて!」


 私は思わず叫んだ。それでも2本の剣が振り下ろされた。


(殺される・・・)


 私は目を閉じて体を固くした。



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