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第45話 追われる護衛官

 私は牧場でゆっくり療養していた。何もかも忘れて・・・。だが心の中では王子様のことが気になっていたのだ。

 あの仮面舞踏会では王子様は危機を脱したようだが、プリモ伯爵はまた陰謀を巡らせているに違いない。だがそれを口にするとリュバンが悲しそうな顔をするのだ。


「お嬢様。そのことはもうお忘れください。私はお嬢様に危険な目に遭ってほしくないのです」


 私が瀕死の重傷を負ったのだから、乳母としては当然なのかもしれない。かなりの心配をかけ、ぶっ倒れるほどの回復魔法を使わせてしまった。それを思うと、もう彼女に心配をかけさせる無茶はできない。


「リュバン。忘れることにしたわ。王子様のことも、何もかも・・・」


 そう言うしかなかった。それで無理に忘れたふりをしてのんきに過ごしていた。



 そんなある日の夜中、家のドアが叩かれた。それは何度もけたたましく鳴り響いた。


「こんな夜中に誰だろう?」


 私は家のドアのそばに行ってみた。もちろんその音に驚いてリュバンとララも起きてきた。


「誰です?」

「スピカ王子の護衛官のソンだ。開けてくれ! 頼む!」


 私はその声に聞き覚えがあった。2人いる護衛官のうちの一人だ。私はあわててドアを開けた。するとソン護衛官がパッと中に入ってすぐにドアを閉めた。その服装は土まみれで汚れており、顔には疲労の色が強く出ていた。


「どうなさったのです?」

「追われている。頼む。かくまってくれ!」

「どうしてあなたが?」

「わけは後で話す。だから頼む! 王子様の一大事なのだ!」


 そう頼まれれば嫌とは言えない。よくわからないがかくまうことにした。


「わかりました」


 私はリュバンに目で合図を送った。すると彼女がソン護衛官を奥へ連れて行った。するとすぐにまたドアを叩く音が聞こえた。


「王宮の者だ! ここを開けろ!」


 怪しまれないためにすぐにドアを開けた。


「執行官のフラッパーだ! おや? おまえは!」


 来たのはプリモ伯爵の腹心のフラッパーだった。兵を引き連れてきている。彼はかつて王都の屋敷に乗り込んできたことがあった。それで私に事を覚えていたのだ。


「何事でしょうか?」

「ここに護衛官が逃げ込んできたはずだ。こちらに来たのを見た者がいる。隠すとためにならんぞ! 貴様は王都追放の罪人だろう。おとなしく我々に従え!」


 相変わらず偉そうな態度だ。ムッとするがそれを顔に出さず、ニコニコと対応する。


「これはお久しぶりでございます。フラッパー様。お役目ご苦労様です。家におりましたが誰も来ませんでした」

「本当か?」

「本当でございます。しかし護衛官が逃げたとはどういうことでしょうか?」

「そんなことを聞く必要はない。探させてもらうぞ!」


 フラッパーは否応もなく家探しするようだ。兵士たちが家に踏み込んで、各部屋をひっかきまわして探していく。ここは我慢しなければならない。見つかったら大変だが、リュバンがうまく隠してくれただろう。


 しばらくして家探しは終わった。護衛官は見つけ出せなかったようだ。さらにフラッパーは他の丸太小屋や牛舎、鶏舎など、牧場内をくまなく兵に探させた。しかしどこにも護衛官の姿はない。

 頃合いを見て私がフラッパーに言った。


「いかがでしょうか? 見つかりましたでしょうか?」

「いない。ここにはおらぬわ! 逃げたのかもしれぬ。他を探す! もし見かけたら知らせよ! この村の中をで探しておる。くそっ!」


 フラッパーはそう言い捨てて兵士とともに引き上げて行った。これでここに戻ってくることはないだろう。

 しばらくしてリュバンが護衛官を連れて出てきた。


「もう大丈夫のようですね」

「ええ。でもどこに隠したの?」

「ちょっとアレを使いまして・・・。護衛官様にはわからないように」


 リュバンは魔法を使ってソン護衛官を隠したらしい。魔法を使ったことを知られないようにして。


「護衛官様。これでもう大丈夫でしょう。どうぞお座りください。温かい飲み物でもいかがですか?」

「ああ、すまぬ」


 私はソン護衛官を椅子に座らせて飲み物を出した。彼はそれをぐっと飲み干した。それでほっとしたようだった。


「助かりました」

「護衛官様。何があったのですか?」

「本当は言えぬことだが、ここまで巻き込んでしまったから知っておいてもらった方がいい。スピカ王子様が捕らわれたのだ」

「なんですって!」


 私は驚いた。だがそれはありうることだった。プリモ伯爵が王子様を陥れたのだろう。


「王子様は謀反の疑いをかけられた。それでゴラク塔に幽閉されておられる」

「ゴラク塔ですか?」


 それは父の公爵が最初に送られた場所だった。王子さまも同じような道を通っている。


「王様や王妃様は? そんなことをお信じになったのですか?」

「王様はプリモ伯爵の讒言を信じてしまった。王妃様が何と言おうとお聞き入れにならぬ」

「では王子様は・・・」

「近いうちに処刑されるといううわさだ」


 スピカ王子様が亡くなれば次男のシリウス王子が嫡男となる。その幼君を擁してプリモ伯爵はこの国を乗っ取るつもりだろう。


「我ら護衛官がお救いしようとしたが駄目だった。ゴラク塔に駆けつけたものの、撃退されてしまった。伯爵は我ら一派を完全に排除するため、すべて抹殺しようとしている」


 それで腹心のフラッパーが動いているのだろう。このままでは多くの人が殺される・・・。


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