第41話 2人の刺客
2人組が私たちに迫ってくる。この先を通すまいと・・・・彼らは目元を隠す仮面をつけ、黒っぽい服を着て腰には剣を帯びている。その正体はわからないが、刺客に間違いはない。
「何者だ!」
王子様が大声を上げた。すると2人組は立ち止まって言葉を発した。
「スピカ王子とお見受けしました」
「そうだ! 私に用か!」
「お命を頂戴いたします!」
「貴様らは刺客か! 誰の差し金だ!」
「それは言えません。さあ、お覚悟なされい!」
2人組は剣を抜いた。暗闇に不気味に剣がきらりと光る。一方、王子様は丸腰である。戦うことはできない。私が2人の前に出た。
「王子様には指1本触れさせません!」
「女の分際で! そこをどけ!」
「どかぬと命がないぞ」
2人組の一人は筋肉隆々で重そうな剣を振り上げている。もう一人は細身の剣をこれ見よがしに自由自在に振り回している。なかなか強そうだ。
(この2人・・・どこかで見たような・・・)
私は記憶をたどってみた。2人組でたくましい体をした者と細いしなやかな体をした者・・・。
(あっ!)
私は気づいた。目元が見えない仮面をつけているが、その声と姿はあの2人そのものだ。間違いない。
「あなたはブルーメ! レーヴでしょう!」
2人はズバリ言い当てられて、ドキッとして剣を落としそうになった。だが、
「俺たちはそんな奴らじゃない!」
「人違いだ!」
あくまでも否定する。
「そんな変装してもわかるわ! 王子様にこんなことをしてただで済むと思うの?」
「うるさい! 俺達にはあの方がついている」
「そうだ! 怖いものなどない!」
やはりプリモ伯爵の命令のようだ。2人は完全にあちら側の者だ。それならこちらも遠慮なく戦わせてもらう。
「ここに来たことを後悔しなさい!」
「なんだと! 貴様、何者だ!」
「私はただの女じゃないって言うことよ!」
私は懐に隠していた短剣を引き抜いた。
「シンデレラ降臨!」
私は魔法剣士に変身して名乗りを上げた。
「愛のために戦う一輪の花。魔法剣士シンデレラ!」
「なに! シンデレラだと!」
2人はいきなりの変身に驚いていた。いや、それ以上に後ろにいる王子さまが驚いていた。
「ややや! そなたはあのシンデレラだったのか! 気づかなかった!」
まさかダンスの相手があのシンデレラだったとは思わなかったようだ。私の目を見て信用していただいた時にすでにわかっていたと思っていたのだが・・・。
「王子様。あなたを必ず守ってごらんに入れます」
私はそう言うと前の2人に剣を突きつけた。
「容赦しないわよ! 正義の剣を受けなさい!」
「いいだろう! まずお前も血祭りにあげてやる!」
2人は剣を振り上げて向かってきた。ブルーメは重い剣で打ち掛かり、力でねじ伏せようとする。一方、レーヴは細剣を巧みに扱い、懐を突いてくる。
この2人、いつもはそんなに仲が良くないはずだが、こんなときに限って息があっている。双子だからかもしれないが、こちらが息つく暇もなく連続して攻撃してくる。魔法剣士でもなかなか手こずる。だが続けているうちに2人の剣の動きが見えてきた。打ち掛かってくる剣をはね返して反撃だ・・・そう思っていると意外なことを2人は言いだした。
「女だてらになかなかやるな!」
「見くびっていた。それならこちらも本気を出そう!」
2人にはまだ余力があるようだ。さらに激しく攻撃を仕掛けてくる。
(このままではまずい。なんとかこの状況を打開しないと・・・)
2人を相手にできない。そうなると・・・私は思いついた。ここは開けた場所だ。相手との距離を取ればなんとかなる。
私は2人が打ち込んでくるところをかわしてひらりと後方宙返りを打った。それで2人と離れて、いきなり後ろを向いて走り出した。
「あっ! 待て!」
2人があわてて追ってくる。罠にかかった。
「ここまで来るがいいわ!」
私はそう挑発する。2人は懸命に走ってくる。それで連携するブルーメとレーヴの間に距離ができた。2対1では厄介だが、一人ずつなら何とかなる。私は立ち止って振り向いた。
「ここで相手をしてあげるわ!」
「なにをっ!」
先を行くブルーメがまず突っ込んできた。彼が剣を振り上げたところに隙ができた。すぐに間合いを詰めて剣で突いた。
「ああ・・・」
ブルーメは気を失ってその場で倒れた。それを見てレーヴは逃げ腰になった。剣を向けて後ずさりしている。
「逃がさないわ!」
私は向かって行き、連続して突きを繰り出した。レーヴは何とか防いでいたが、そのスピードについてこられず、やがて私の剣を受けてやはり気絶した。私は「ふうっ」と息を吐いた。それにしても元兄たちがこんなに強いとは思わなかった。いつも剣の腕を磨いていただけのことはある・・・。
「見事だ! シンデレラ!」
戦いを見ていた王子様はそう言ってくれた。その笑顔がまぶしく見える・・・。
だが危機は去っていなかった。私は辺りに強い殺気を覚えた。この感じは・・・覚えがある。
「久しぶりだな! シンデレラ!」
あの男が姿を現した。




