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第39話 魔法の支度

 私とリュバンは空を並走して飛んでいる。片や魔法剣士の姿で天馬に乗り、片や魔女が箒にまたがり・・・。ファンタジーの物語に出てきそうである。だがそんなことを考えている余裕はない。


「王子様をお救いしないと・・・」


 私はその一心だった。


 バークレイ城は王都に近いが、山の上につくられた城である。幼い頃、私はこの城に泊まりに来たことがある。父がマーガレットと再婚する前だ。バークレイ城は元は王都を守るために築かれたようだが、ずいぶん前からそこから見える絶景のすばらしさから貴族の保養地として使われることもあった。だからこの城のことはよくわかっているつもりだ。城の内部や外の様子など・・・


 そしてこの城は舞踏会の会場として使われてきた。特に仮面舞踏会はこの時期によく行われる。ただし今回の主催者はスピカ王子だ。王様が新たな王子の誕生祝賀会にかかりきりになったため、スピカ王子が代わることになった。だがここにプリモ伯爵の企みがある・・・私はそう思っていた。


 バークレイ城の周りは断崖絶壁でその下には川が流れている。城に通じるのは1本の山道だけ・・・。

 今回は王様がいないから警備が比較的緩い。仮面舞踏会だから出席者が誰かがはっきりしないから暗殺者が紛れ込んでもわからない。しかも逃げ場のない山の中の城だ。ここで密かにスピカ王子を暗殺してしまおうという肚だろう。


(そうはさせない!)


 私はできるだけスピカ王子のそばについて、魔法剣士の力で彼を守ろうと考えていた。



 しばらくして私たちはバークレイ城のある山の麓に着いた。もうすぐ日が暮れようとしていた。そろそろ仮面舞踏会に参加する貴族たちが集まってくる。


「どうしよう。これでは入れないし・・・」

「大丈夫です。そのために私が来たのではありませんか。それでは・・・」


 リュバンは魔法の杖を私に向けて一振りした。すると青色のキラキラ輝く美しいドレス姿になった。頭もきちんと結いあがり、きれいな髪飾りが光っている。靴は透明で透き通っている。まるで素足のようだ。ただし顔は仮面をつけたままだ。これなら仮面舞踏会に出られる。


「すごいのね。こんなきれいなドレスは見たことないわ」

「王子様の目に留まっていただかないと。そうしないとそばでお守りすることができませんからね」

「そうね。これなら目立つわ」

「あとは馬車と馬。従者・・・」


 リュバンはもってきた袋からかぼちゃとネズミ4匹を出した。今度はそれに向けて魔法の杖を振った。するとかぼちゃは馬車になり、ネズミたちは馬に変わった。もちろん従者はチャオである。天馬を犬に戻し、そして人の姿に変える。


(これって・・・)


 やはり物語のシンデレラだ。知らず知らずのうちに物語をトレースしている。これは偶然なのか・・・。それともリュバンがあえてそれをなぞっているのか・・・。

 リュバンはなんだか楽しそうだ。普段は魔法を使うのをやや嫌がることがあるのに・・・。今回はノリノリだ。


「さあ、準備はできました。次、招待状は・・・」


 これもリュバンが魔法で作り出した。仮面舞踏会の招待状の形式はいつも同じだ。宛名をレイア・アックスとする。子爵に叙されたアックス村長の名を借りることにしたのだ。まあ、何とかごまかせるだろう。招待状を持っているのに疑うなんて無礼な真似はできないはずだから・・・。


「これで準備ができました。どうぞお嬢様」

「ありがとう。リュバン」


 私は馬車に乗り込んだ。すると急にリュバンの目から涙が流れた。


「どうしての? 急に泣き出して・・・」

「いえ、お嬢様。こんなときにすみません。小さい頃からお育てしてこんなに美しく上品に成長されたかと思うと・・・」


 感極まって泣き出したようだ。彼女にしたらかりそめとはいえ、この華やかな姿が見られたことがうれしいのだろう。乳母として・・・。


「デザート公爵家が健在であったなら、華やかな社交界にデビューして、今頃はお嬢様は普通に仮面舞踏会に出席されていたと思いまして・・・」


 確かにそうなのかもしれない。だが社交界に何の興味はない。私にはそれより素晴らしい牧場があるのだから・・・。


「やめてよ。今はそれどころじゃないのよ。でも魔法の力とはいえ、こんなにきれいになって仮面舞踏会に行けるのはうれしいわ。晴れ姿をリュバンに見てもらえたしね」


 リュバンには一応、そう言っておいた。とにかく今は王子様を救うことに集中しなければならない。


「じゃあ、いくわ! きっと王子様をお守りするから」

「スピリットにも戻ってくるように魔法で伝えました。上空から監視していると思いますから、ご安心ください」


 いよいよ馬車が走り出した。チャオの従者もなかなか堂に入っている。いよいよ私たちはバークレイ城に乗り込む。


(敵は王子様をどこから狙ってくるのか? それに一体、誰が王子様を狙ってくるのか? 警備の兵に紛れているのか。それとも出席者の中で顔を隠して・・・。いや女性かも・・・王子様とダンスしているときにいきなりグサッと・・・)


 様々なことが考えられる。私は「はあっ」と息を吐いて緊張を解いていた。


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