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第38話 恋?

 その年、国全体がお祝いムードに包まれた。王様と王妃様の間に王子様が誕生したのだ。そしてシリウスと名付けられ、第2王子となった。その後見人にプリモ伯爵が就いたようだ。

 第2王子にもかかわらず、そのお祝いの祝典は前例のないほど華やかで盛大に行われた。まるで次期の王が誕生したかのように・・・。


(これでプリモ伯爵は大きな力をもつだろう。でも第1王子のスピカ王子様の立場が・・・)


 スピカ王子は前の王妃の子供だ。今は次期の王となることが決まっているが、プリモ伯爵のことだから何らかの陰謀を巡らせて、その座を奪うかもしれない。


 私は何度もスピカ王子様にお会いしている。1度目はお妃選びの時の宮殿で、2度目は小麦不作の時の王都、それからこの牧場で・・・。王子様は誠実な方だった。王様になるのがふさわしい・・・私はそう思っている。


 そんな時、王都を探っていたスピリットが帰ってきた。


「どうだった?」

【公爵様の行方は残念ながらわかりません】

「そう・・・。ところで王都はどう?」

【王都はお祭りムードです。でも変なうわさが・・・】

「うわさ?」

【近々、スピカ王子が廃嫡されるとか・・・】


 こんなうわさを流しているのはプリモ伯爵に違いない。いよいよスピカ王子様に牙をむいてきたのだ。


「王宮内の様子をもっと調べてみて。そんな動きがあるのかを」

【わかりました】


 スピリットはまた飛んでいった。



 いつの頃からか、私はスピカ王子様のことを思うようになっていた。それがスピリットからの報告を聞いて・・・彼のことが心配で仕事が手につかない・・・。その異変にリュバンが気づいた。


「お嬢様。何か心配事はおありなのですね」

「ないもないわ! 牧場は順調じゃない!」


 私は心の中を見透かれまいとわざと強がりを言った。


「お隠しになっても分かります。私はずっとお嬢様にお仕えしたのですよ。心配の種はスピカ王子様ですね」


 リュバンはズバリ言い当てた。彼女には隠し事はできないようだ。


「リュバン。私はどうしたらいいのだろう? 王子様のことが気になって仕方がないの・・・」

「ほほほ・・・」


 急にリュバンが笑い出した。それには私はムッとした。こんなに悩んでいるのに・・・。


「何よ! 何がおかしいのよ!」

「お嬢様。あなたは王子様にひかれているのです。これが恋ってものです」

「違うわ! そんなんじゃない!」


 私は慌てて否定した。そんなことは1ミリも思ってもいない。


「いいえ、お嬢様が気づいておられぬだけです。私にはわかります」


 リュバンは大きくうなずいた。そうなればいくら否定しても無駄だということを私は知っている。リュバンの思い込みについては・・・。


「私はただ王子様が心配なの」

「それならおまかせを。私もすでに動いています」

「本当?」

「お嬢様はスピリットに探らせておりますね。私も別のところから調べさせています。宮殿内の様子がわかりました」


 リュバンは話してくれた。


「プリモ伯爵がスピカ王子に難癖をつけて廃嫡しようと試みましたが、王妃様が反対されました。それで断念するしかなかったようです」


 私は思い出した。王妃様はしっかりした感じの方だった。プリモ伯爵の姪でありながら血の繋がらないスピカ王子様を守ってくれていたのだ。


「もう心配はないわね」


 私はほっとしていた。王妃様が反対なら廃嫡はないと・・・。


「それはどうでしょう。プリモ伯爵がよからぬことを考えているかもしれません。探らせているものがそろそろ帰って来たと思います」


 リュバンはそう言って指笛を吹いた。相変わらずうまく鳴らない。それでも彼女のそばに這い出して来る動物がいた。それは4匹のネズミだった。何かを訴えようとチュウチュウと鳴いている。私は耳を澄ませた。


【プリモ伯爵が側近と話していました】

【スピカ王子の暗殺計画が進んでいます】

【今夜、バークレイ城で仮面舞踏会が行われます】

【その時に王子を抹殺するつもりです】


 それは恐るべき話だった。プリモ伯爵はスピカ王子を亡き者にせんと企んでいたのだ。


「このままでは王子様は・・・」

「どうされます? 救えるのはお嬢様だけです」


 リュバンは私の目を見た。


「もちろん助けに行くわ!」

「では今度は私がお手伝いいたします」

「それならよかった。今度ばかりはどうしたらいいかわからなかったから」


 スピカ王子様を守るには仮面舞踏会に潜入しなければならない。だが招待状もないし、そこに行くための馬車や身につけるものも調達せねばならない。とてもじゃないが準備が間に合わない。だがリュバンがいれば何とかなるだろう。彼女の魔法の力で。


「ではお嬢様。魔法剣士になり、天馬をお呼びください」

「わかった!」


 私は短剣を引き抜いて「シンデレラ降臨!」と叫んで変身した。そして天馬を呼びんだ。


「これでいい?」

「はい。ではお乗りあそばして、王都に向かいましょう」

「リュバンは?」

「わたしはこれで。お先に失礼します」


 リュバンは自身に魔法をかけた。するとその姿は黒い帽子と黒い服の魔女の正装になり、手には箒を持っていた。彼女はそれにまたがり空に飛び出して行った。その姿は魔女そのものだ。


「じゃあ、私も!」


 私は天馬にまたがり、バークレイ城に向けて飛んでいった。


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