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第34話 ワイン造り

 私は忙しい毎日を送っていた。牧場で牛や羊が多くなり、卵を産む鶏もかなり増えた。畑も拡充してさらに多くの作物が取れるようになり、定期的に市場に卸すことができるようになった。もちろん田の枚数も増えてコメの収穫量も多くなった。

 幸いなことにあれからここで仕事を手伝ってくれる人が増えた。コロ牧場の発展のことを聞いて元いた人たちが戻りつつあるのだ。王都での活躍でデザート公爵家が許されたと思ったのかもしれない。


 そんな時、ミミ(?)が籠を下げて私のもとに来た。ようやく彼女が手掛けていたものが出来上がったようだ。


「さあ、お試しを」


 それは数種のチーズだった。ミミ(?)が中心になって作り上げたのだ。数か月寝かしたことで熟成が進んでいる。


「じゃあ、いただくわね」


 私はチーズを口に運んでみた。濃厚なうまみが口の中に広がる。


「おいしいわ。やったわね!」


 その言葉にミミ(?)はうれしそうだった。チーズ作りは順調に進んでいるようだ。そうなると今度はアレが欲しい。


 私はブドウ畑に行ってみた。そこには棚が作られ、多くのブドウが作られている。これは食用ではない。ワインを造るためのものだ。ワイン造りはジジ(?)が取り組んでいる。すでに去年収穫したブドウはワインとなって樽で熟成させてある。


「今年の出来はどう?」

「いいようです。素晴らしいワインができそうです」

「もうすぐやるのね」

「ええ、またみんなでやりましょう。そして今年はワインでお祝いできますよ。素晴らしいワインの出来を祈って」


 ワイン造りは人手がいる。この時はみんなが集まる。今年も楽しくできそうだ。


 その日が来た。朝からみんなで準備をしていた。そんな時、またあの方が現れたのだ。エース執行官、いやスピカ王子様だ。よほどこの牧場を気に入っていただけたらしい。今回もまた護衛官2人を連れてふらっと馬に乗って立ち寄られた。


「アリシア。息災であったか?」


 私は牧場で不意に後ろから声をかけられた。振り返って見たら王子様である。私は慌ててひざまずいた。


「数々のご無礼をお許しください」


 私のこの行動に王子様は驚いた。まだ身分がばれていないと思っていたようだ。馬から降りて私に言った。


「何をしておるのだ? 私だ。エースだ」

「いえ、わかっております。あなた様がスピカ王子様であることが・・・」


 それを聞いて王子様は「はあっ」とため息をついた。


「ばれてしまったか? せっかく隠していたのにな」

「思い出したのです。一度、宮殿で・・・」

「宮殿? そういえばそなたも私の妃候補として来ていたそうだな」


 王子様は私の顔をじっと見てはっと思い当たったようだ。


「ああ、そうか。そなただったのか。確か、むっつりスケベなどと申したな」


 それを聞いて私は恥ずかしさで真っ赤になった。


「お許しください。あの時は・・・」

「よいよい。それよりここで王子扱いはやめてほしい。ここでは執行官のエースだ」

「わかりました。執行官様」

「それもいかん。ただエースと呼んでくれ」

「エース様・・・これでよろしいでしょうか」

「まあ、いいだろう。それより立ってくれ。こんなところを見られたら皆がおかしいと思うだろう」

「では失礼いたしまして・・・」


 私は立ち上がった。普通に接しようと思うが、何となくぎこちない。


「皆が何かの準備をしているようだが、今日は何かあるのか?」

「はい。ブドウからワインを造るところでして・・・」

「ほう。ワインか!」

「はい。ブドウがよく実りまして、みんなでこれから作業いたします」

「それは楽しそうだ。私も参加してよいか?」

「もちろんです」


 私は王子様を案内した。収穫したブドウが大量に集められている。


「ほう、かなり豊作だったようだな」

「はい。おかげさまで。去年からワイン造りを始めましたが、今年の方が身がよろしいようで。きっと素晴らしいワインができるとみんなが申しております」

「それは楽しみだな」


 王子様といろいろ話しているうちに、私のぎこちなさはなくなっていった。王子様が気さくにお話しされているからだろう。元の親しい関係に戻った感じだ。

 この作業はジジ(?)が仕切っている。彼の指示でいくつもの大きなたらいにブドウの実が入れられている。まずそれを裸足になって踏んでつぶしていくのである。すでにララたちが「きゃっは、きゃっは」と楽しげな声を漏らして始めている。


「ワインを作るのにこのようにするのか? 初めて見る」


 王子様は興味津々だ。その姿は相変わらずまじめだ。だがただ見るだけでなくここは楽しんでいただかないと・・・私は彼の腕を取った。


「さあ、王子、いえ、エース様もやりましょう」

「そうだな。おもしろそうだ」


「おやめください!」と護衛官は止めたが、王子さまは聞こうとしない。2人で裸足になって、たらいのブドウの実を踏んだ。この「ぶちっぶつっ」とした感触がたまらない。


「これは愉快だ!」


 王子様も楽しそうにしている。私も楽しかった。2人でたらいのブドウをつぶしていった。


 それができたら果梗を取り除き、容器に集める。みんながするのはここまでだ。あとはジジたちが引き受けて発酵させ、ワインになるように仕込んでくれる。

 そしてこの後はお楽しみが待っている。



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