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第16話 人手不足

 牧場は完成したが、これから牧場を回して行かねばならない。牛だけでもすべて小屋に集めて乳を搾り、それを出荷しなければならない。日々の牧場の仕事がこの人数では全く足りない。ソワレも料理を作るのをひとまず置き、主に牧場の仕事をしてくれる。ララも一日中、申し訳ないくらい働いてくれている。だが2人ともあまりの大変さに辟易している。私が魔法剣士になったところでこれが解消できるわけではない。


 何とか対策を立てなければ・・・。とにかくここで働いてもらえる人がいる。そう言えばここで働いていた人はどこにいたのか・・・。もし戻ってもらえるならうれしいのだが・・・。それをソワレに相談してみた。彼は以前、食材の調達にここへ来たことがあり、牧場で働いていた人を数人知っている。


「ね、ソワレ。ここに元いた人がどこに行ったか、知っている?」

「少しは・・・。それぞれが親戚や知人をたどって勤め口を探したようです」

「それならここの方がいいんじゃない? 元いた人たちに戻って来てもらえるかな?」


 私はかすかな希望をもって聞いてみた。だが・・・。


「それは無理でしょう。公爵の関係者は罰を受けるとううわさが立っていますから。村の人も手伝ってくれないでしょう」


 ソワレはため息交じりにそう言った。やはりそれが一番のネックになっている。広まったうわさはなかなか消えない。私は村に行って牧場で働いてくれないかといろんな人に声をかけたが、やはりそのうわさのせいで誰もウンと言わない。村で人を集めるのも無理のようだ。

 今度はダメもとでララにも聞いてみた。藁にもすがるつもりで・・・


「誰か手伝ってくれる人はいないかな?」

「そうですね・・・。私の家族に相談してみます」

「家族? そういえばララには田舎があったのよね?」

「はい。ツジシン村です。ここから少し遠いのですが誰か来てくれるかもしれません」


 聞いてみると兄弟姉妹の多い大家族なのだそうだ。ララのように奉公に出ている者もいるが、村で畑仕事をしている者も多いそうだ。それならここにもってこいだ。すこし希望の光が見えてきた。


「早速、頼んでくれる?」

「いいですけど・・・。ここまで来るかどうか・・・。それに遠いので手紙を書いてここに来るまで・・・」


 どんなに早くても当分は無理だ。

 あとはリュバンだが・・・。ずっと屋敷で乳母をしていたからそんな伝手があるように思えない。人手を増やす目途がつかなかったら牧場はまたつぶれるだろう。それなら・・・やはり困ったときはリュバンの魔法に頼るしかない。


 リュバンは食事の用意や洗濯、掃除を担当している。牧場の現状を理解してもらうしかない。彼女が井戸のそばで洗濯をしているときに遠慮がちに声をかけてみた。


「リュバン。お話があるのですけど・・・」

「何でしょうか?」


 リュバンは手を止めてこっちを見た。


「牧場の仕事が大変で・・・。人手が足りなくてどうにもならないのよ。誰か働いてくれる人はいないかしら?」

「さあ、私には・・・。お屋敷の方以外はよく存じないので・・・」


 やはり無理のようだ。こうなったらあれを頼むしかない。


「ねえ、リュバン。どうにもならないのよ。魔法の力でパッパッとできない?」


 私はリュバンにそっと聞いてみた。すると彼女は怒ったように目を吊り上げた。


「お嬢様。何もかも魔法に頼るのはよくありません。自らの力でやってこそ・・・」


 どうも虎の尾でも踏んでしまったようだ。ここに来てさんざん魔法を使わされているリュバンは不満がたまっているのだろう。


「・・・お嬢様。何も憎くてこう申し上げているのではございません。このところ魔法に頼りすぎです。牧場の仕事というのはお嬢様が考えているような簡単なものではないのです・・・」


(そんなことはわかっている!)というのを我慢して私は神妙に説教を聞くしかない。ここは耐えていれば、きっと何とかしてくれるはず。リュバンも牧場仕事で疲れ切った私やララやソワレの姿を見ているから・・・。しばらく彼女に好きなだけしゃべらせた後は泣き落としだ。


「リュバン。ごめんね。私が何もできないばかりに・・・。私はただ公爵の娘というだけなの。でも今はそれもない。何もないの。だからこの牧場でがんばるしかないの・・・」


 リュバンの厳しい目が緩んで来た。もう少しだ・・・。


「ここで何とか生きていってお父様を助け出したい・・・それは変わっていない。でもそのためにはここの牧場を立て直して我が家の基盤を作りたいの。それにはあなたの助けが必要なの。どうか私を助けて・・・」


 涙ながらに頼んでみた。さすがに機嫌の悪かったリュバンも「う~ん」と考え込んだ。簡単に魔法で解決せず、うまく牧場を回していくいい方法はないかと・・・。しばらくしてひらめいたようだ。


「わかりました」

「じゃあ、助けてくれるのね」

「ええ。でもお嬢様たちにはがんばってもらいますが・・・いいですね」


 リュバンはニヤリと笑った。


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