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第13話 引っ越し

 引っ越しの日となった。役人が屋敷の接収のために現れた。身の回りの物以外は持ち出せない。いや、あまりの大荷物は持っていけない。馬車1台分だけなのだ。

 豪華なドレスも貴金属、装飾品もすべて置いて行かねばならない。持っていくのは地味な普段着を数着に下着など大きなカバンに収まるほどだ。あまりに惨めな状況にため息が出る。


 その日、マーガレットとブルーメ、レーヴが屋敷にやって来た。引っ越しのあわただしい時に・・・。


「荷物を取りに来ただけよ」


 マーガレットはあちこちからドレスや装飾品、貴金属、そして値打ちのありそうなものを馬車5台に積み込んだ。慰謝料代わりなのかもしれない。

 ブルーメとレーヴも自分の部屋にある私物を馬車に積み込んだ。だが彼らの用事はそれだけではなかった。2人は私の前に来て話した。


「大変だろう。あんな田舎の牧場に行くなんて・・・」

「何もないところっていうじゃないか」


 2人とも私に同情的だ。


「もうそんなところに行くのをやめたらどうだ?」

「そうだ。王都にいればいい」


 簡単にそう言ってくれるが私にはそこ以外、行くところがないのだ。王都追放になっているし・・・。私はこう言った。


「私はそこしか行くところがないのです。王都にもいられませんから」


 すると2人は大きく首を横に振った。


「大丈夫だ。プリモ伯爵にとりなしてあげよう。王都にいられるように」

「そうだ。身分は平民のままだけど何とかなる」

「屋敷を構えるからそこに来たらいい。メイドとして。いや、何もしなくてもいい。ただメイド服を着て屋敷にいるだけで」

「俺の屋敷の方がいい。メイドの衣装も飛び切りいいのを新調するぞ。いい給金も出そう」


 ブルーメとレーヴは見た目も性格も違うが、嗜好だけは同じのようだ。私にメイド服を着せてどうしようというのか・・・妹キャラだけでは飽き足らず・・・。だが無下にはできない。もしかして助けてもらうことがあるかもしれない。


「お兄様。お気持ちだけありがたく頂戴いたします。私はデザート公爵家の娘。父が赦免される日を信じてこの家を守っていきたく思います。たとえ田舎に追いやれらようとも」


 そんな風に断った。


「そうか。それは残念だ。だがデザート公爵は処刑されたといううわさがある」

「俺も聞いた。極秘に刑が執行されたらしいぞ。だから俺の屋敷に・・・」

「いや、俺の屋敷に来てくれ!」


 私はショックを受けた。父がもう処刑されたとは・・・。それより先日まで父親だった人が処刑されたかもしれないのに、こんなノー天気な元兄たちに腹が立った。


「私はお兄様の屋敷にはいきません。用が済んだらお帰り下さい」


 私はできるだけ怒りの感情を抑えて言った。


「そんなこと言うな。もう少し話をしよう」

「田舎に行ったらなかなか会えないぞ。だから・・・」


 2人の元兄たちは空気も読まずそんなことを言っていた。それで私は完全に切れた。


「出て行ってください! 出て行け!」


 私は大声で叫んだ。その剣幕に驚いたのか、元兄たちは這う這うの体で逃げ帰って行った。


 私の心はズタズタだった。助けることもできず父は処刑されてしまったのか・・・


「お父様・・・」


 涙がこぼれる。そんなところにリュバンが現れた。


「リュバン。お父様が処刑されたって」

「私もそれを耳にいたしました。しかし単なるうわさかもしれません」

「でもお兄様たちが・・・」

「お嬢様。最後まで希望を捨ててはなりません。きっと旦那様は生きています」


 リュバンはそう言ってくれた。それで少しは元気が出た。


「スピリットが旦那様を探しております。必ず見つかります」

「そうね。信じるわ。お父様が無事だと」


 リュバンの言葉に私は励まされた。王都を離れてアリア地方の牧場に移るが、お父様の救出をあきらめたわけではない。きっと見つけ出して助け出す。そして無実であることを証明して見せる・・・私はそう決意した。



 役人に許された1台の馬車に乗り、私たち4人と1匹はアリア地方に向かった。その1匹というのがあのチャオだ。魔法で白馬、いや天馬に変えて協力してもらったが、それからは私になつくようになった。それで自ら馬車についてきたのだ。


「おまえも来てくれるのね。うれしいわ」


 馬車からそう声をかけると、チャオはうれしそうに尻尾を振りながら「わん!」と吠えた。


 これが私のそばにいることになった人たちと犬だ。苦境の時に一緒にいる者こそ私にとって大切な仲間だ。私はめげない。きっときつい現状を抜け出す日も来る・・・そう信じていた。



 コロ牧場は牛や鶏などを飼って、肉や牛乳、チーズ、バター、卵などを我が家に収めていた。また余ったものを市場に出してかなりの収入があるらしい。

 私は今まで行ったことはない。召使の話では自然豊かな広大な牧場で、多くの使用人が働いているらしい。


「まあ、食べるのには困らないわね」


 私は軽く考えていた。だがそれは無残に打ち砕かれた。私が見たコロ牧場は・・・・


「一体、どうなっているの!」


 私は思わず声を上げた。



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