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第10話 救出へ

 リュバンは私に告げた。


「しかし魔法に縛りがあります」


 私は(そらきた!)と思った。世の中には、いや物語の中でも万能で無敵というのはないのだ。何らかの制限はつく。


「どんな縛りなの?」

「夜中の12時を越えると魔法がリセットされます。日が昇るまで変身できません」

「それって・・・」


 まるで物語のシンデレラだ・・・そう言おうとすると、先にリュバンが言った。


「魔法は1日限りのものが多いのです。永遠に続く・・・となったら悲劇になりますから」


 言われてみれば物語の中では永遠に続く魔法のために主人公がどんな目にあったか・・・そう考えると夜中12時で切れる方がいいのかもしれない。


「今、時間は?」

「10時頃かと・・・」


 リュバンは答えた。ここからゴラク塔まで普通に歩いて2時間はかかる。このコスチュームを着ていたら早く行けるかもしれないが、塔で警備の兵と戦って、お父様を牢から出していたら時間切れになる。


「間に合わないわ! もっと早い時間から動かないと」

「いえ、お嬢様。早すぎると屋敷の周囲の警戒が激しいので。これくらいがいい時間です」

「でも・・・」

「ご安心ください。それも考えて用意してあります」


 リュバンは指笛を吹いた。だが下手だから小さく「ピュウッ」としか鳴らない。すると窓から大きな影が飛び込んで来た。


「な、なに?」


 よく見れば我が家の番犬だ。確か、チャオという名だ。灰色の大型犬でかなり狂暴と聞いているから近くに行ったことがない。だがチャオは暴れることなく、おとなしくお座りをしている。


「チャオをどうするの」


 するとリュバンはまた呪文を唱えて杖を振った。するとチャオの姿は変わり、白馬になった。ちゃんと鞍などもつけている。


「さあ、どうぞ。これならゴラク塔までひとっ飛びですよ」


 確かにこれに乗れば間に合うだろう。私は鞍にまたがってみた。コスチュームを着ているから身は軽い。だが手綱を持ったものの、乗馬なんかしたことがないからどう操ればいいかわからない。


「賢い犬、いえ馬ですからいうことを聞いてくれます」

「そうなの。じゃあ、行ってくるわ! ゴラク塔まで行って!」


 すると白馬は私を乗せたまま、窓から外に出て行った。振り返るとリュバンが窓から見送っている。


 幸い、警備の兵には見つかっていない。白馬はそのすごいジャンプで塀をやすやすと越えて行った。


「さあ、急がないと・・・」


 あとは時間との勝負だ。迷わないように道案内はスピリットがしてくれる。鳥なのに夜目が効くようだ。


 白馬は誰もいない夜の道を疾走した。これならすぐにゴラク塔まで行ける。ただ警備の兵に見つかってはならない。気づかれないように塔に忍び込んで父を救出するだけだ。


 塔の周りは高い塀に囲まれている。周囲を巡回する兵もいる。もちろん門は巨大で警備の兵が見張っている。

 私は白馬を降りた。


「ここで待っていてね」


 私はジャンプして塀を越えた。そして塔の入り口に急ぐ。


(多分、幽閉しているのは塔の最上階。そこまで登らなければ・・・)


 だが塔には警備している兵がいる。入り口は一つだから必ず発見されるだろう。とにかく迅速に行動しなければ・・・・。時間はもう1時間半もない。


(行くわよ! 1,2,3)


 私は飛び出した。右手にはあの魔法の剣がある。


「何者・・・」


 入り口の兵が声を上げる間もなく、剣を当てて行く。それでその兵は気絶して倒れた。


「よし!」


 私は塔の中に入る。見上げると壁に沿ったらせん階段が最上階まで続いている。私は1弾飛ばしで上って行く。


「侵入者だ! 捕らえろ!」


 声が響き渡り、上から兵が下りてくる。長槍を突きつけてくるが、それをさっと避けて剣を当ててゆく。このコスチュームのおかげで動きは素早い。この調子では父を助けられるだろう。

 だがかなり階段を上まで登った時、背後に強烈な殺気を覚えた。振り返ると赤い長剣を構えて剣士が迫ってきていた。その鎧にはどくろマークがかかれていた。


「ジョーカー!」


 それはこの国一と言われる剣士だった。この私でさえ、それは知っている。紅剣と言われる赤く染まった剣を持ち、死神とも呼ばれていた。彼は私に迫って来た。


「俺と勝負しろ!」


 その迫力はすさまじい。このまま背中をさらして階段を登れば、一刀のもとに斬られるだろう。私は剣を構えたまま動けなかった。


「恐れをなしたか。ではこちらから行くぞ!」


 ジョーカーが間合いを詰めて剣を振り下ろして来た。それを私は剣で受け止めた。このコスチュームを着ているから反応速度は速い。普通の剣士ならそれで斬られて終わっているだろう。だがほっとしている暇はない。ジョーカーは次々に剣を放ってきた。


「カキーン! カキーン!」


 私は何度もそれを受け止めた。


「なかなかやるようだな。それは誉めてやろう。だがその素人くさい剣技でいつまでもつかな?」


 私はそれを聞いてはっとした。


(見抜かれている。剣は未熟でただ反応速度だけで戦っていることを・・・)


 ジョーカーは少し離れて構え直した。次こそは剣を食らわせようと・・・。私は額から冷や汗が流れるのを感じていた。


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