表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

第7回 立ち込める暗雲

 王宮内にある騎士団用の会議室。この部屋は名前のとおり、重要な作戦会議等で用いられることが多い。

 そして現在、この会議室に3人の騎士が集結していた。1人目は騎士団長のゼノン、2人目はデュルケム、さらに3人目はスカーレット隊隊長のサラであった。


「諸君等に集まってもらったのは他でもない」


「……」


「……」


 やや格式張った口調で前置きをした後、肝心の話を進めようとするゼノン。対するデュルケムとサラは沈黙を維持している。さらに彼は詳細を語り始める。


「ここ最近、ガイスト王国の王都にて犯罪に手を染めた者達が次々と行方不明になっている」


 神妙な面持ちで語るゼノン。本来、悪事に手を染めた者は騎士団の手で捕縛して、法に則った形で裁かなければならない。


「単に騎士団が逃亡を許してしまっている訳ではないのか?」


 歯に着せぬ物言いで疑問をぶつけてくるサラ。キツい言い方ではあるが、犯罪者が姿を消している理由としては妥当な考えであろう。


「確かにその指摘はもっともだ……ただ、王国に仕える宮廷魔道士から進言があったのだ」


 サラからの指摘を踏まえつつ、内々の事情を説明するゼノン。ここからが今回の打ち合わせの本題に入っていくようだ。


「宮廷魔道士の話によれば、ここ最近、王国の首都近くで邪な力が集まりつつあるとのことだ。しかも、その力は日に日に勢いを増しているそうだ」


 さらに言葉を続けてみせるゼノン。これは彼自身、ガイスト王国の大臣を務めるリーから伝えられた内容である。


「まさか犯罪に手を染めた者達もその中に……」


「確証はないが、あるいは……」


 話を聞いて推論を打ち立てるデュルケムに対し、やや暈しながらも肯定しているゼノン。ただ、彼自身、十中八九、部下の推論で間違いないと踏んでいた。


「それで肝心の邪な力とやらはどこに潜んでいるのだ?」


「ダロスの荒野の北端だ」


 性急気味に疑問をぶつけてくるサラに対し、ゼノンは落ち着いた様子で答える。この時、彼は目の前の女性騎士に引っ掛かりを覚えていた。


 ダロスの荒野の北端。王都内でも最も僻地に位置する場所であり、かつては砦も建造されていたと言う。しかし、過去の戦闘で砦は崩壊し、今や周辺は完全に荒廃してしまっている。


「そこで今後の騎士団の任務を伝える。まず、スカーレット隊はダロスの荒野北端を偵察してくれ。場合によっては戦闘部隊も編成する」


 ガイスト王国の騎士団長として、今後の組織内方針を伝えるゼノン。その途端、彼の方針に異を唱える者がいた。


「戦闘部隊も何も我等がスカーレット隊で十分ではないのか?」


 開口一番に異論を唱えるサラ。ガイスト王国に所属する騎士として、スカーレット隊の隊長として、彼女は強い自負心を胸の内に抱いていた。


「サラ、確かにお前の気持ちも分かる。ただ、今回の任務は陛下の意向もある……頼めないか?」


 サラの異論を受け止めた後、頭を下げて頼み込むゼノン。騎士団長が配下の騎士に頭を下げることは異例であるが、これは下手に相手を刺激しないための措置であった。


「そこまで言うのであれば指示に従おう」


 真頭を下げているゼノンを見て、素直に指示を受け入れるサラ。騎士団長の指示を受け入れた理由、断じて相手に対する敬意などではなく、目上の男が頭を下げたことにより、彼女の自尊心が満たされたからに他ならなかった。


 こうして、ガイスト王国騎士団による調査任務が始めることになった。しかし、この時、ゼノンとデュルケムはサラひいてはスカーレット隊に危うさを感じていた。


 乾いた土地と岩石で形成されたダロスの荒野。しかし、空模様は生憎ながら暗雲が立ち込めている。

そして現在、この荒れ地を馬に跨ったスカーレット隊が駆け抜けていた。その様はさながら天空を翔けるドラゴンのようだ。


 北端へと向かって勢いよく走り続けるスカーレット隊。これまで何事もないため、本当に邪な力が潜んでいるのか。宮廷魔道士の言葉を疑いたくなる時であった。


 すると突然、鼠色の空に立ち込めた暗雲が光を発する。しかも、言葉に表現し難い毒々しい光である。あまりに異様な光景にスカーレット隊は思わず馬を止めてしまう。


 そして、毒々しい光の中から何かが浮かび上がる。それと同時に1つの映像が映し出されていく。


「これは!?」


 反射的の驚きの声を上げるサラ。彼女とスカーレット隊は映し出される映像に視線が釘づけであった。


 スカーレット隊の前に映し出された映像。それは全身が裸になった美しい女性、さらに彼女を襲う醜い狼の様子であった。一連の様は一方的な辱めの様そのものとも言えた。


 やがて、狼に女性が食い尽くされるという結末で映像は消失する。それと同時に毒々しい光も消え去り、空模様は元の暗雲に立ち込めた状態になる。


「あっ!」


 1人の女騎士が身につけていた鎧を脱ぎ捨てる。ただでさえ、露出の多い格好であるため、半ば裸に近い形になる。この時、全身がむず痒くなるのを感じていた。そしてまた、それは異常をきたしたのは彼女だけではなかった。


「ああああああっ!」


 また別の女騎士は鎧を脱ぎ捨てた後、悲鳴を上げて身体を抑え込んでいる。同じく彼女も裸に近い形となる。身体が火照り熱くなるのを感じたのだ。


 次々と身につけていた鎧を脱ぎ捨て、艶めかしい素肌を露出したまま、悲鳴を上げるスカーレット隊の女騎士。固い甲殻を剥ぎ取られた蝦の切り身も同然の状態であった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

今回の描写ですが、永井豪の漫画「バイオレンスジャック 魔王降臨編」の内容を参考にしています。

これからも引き続き精進します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ