第2回 王からの指令
西域大陸のガイスト王国。国家としての歴史は日が浅いものの、独自の政策で力を蓄えていき、新興国家としての頭角を現していた。
王国の首都。大規模な王宮を中心とし、石造りの建物が整然と並び、街中では様々な店舗がそれぞれの商売を営んでいる。
肉屋や青果店といった食料品店、道具屋、薬屋、鍛冶屋が並んでいる。他の封建国家は農業が主力であるのに対し、ガイスト王国では商業や工業にも力を入れているのが特徴だ。
そして現在、鎧に身を包んだ1人の男が王都内を歩いていた。彼の名前はデュルケム=プロムナード、ガイスト王国に仕える騎士である。
「(今のところ特にないもないか)」
活気溢れる街中を眺めつつ、心の中でデュルケムは思う。今のところ、特に問題はなさそうである。
「(どうしてだろうな……)」
平穏な街並みの景色であるにもかかわらず、一抹の不安を拭いきることができないデュルケム。それは嵐の前の静けさであるかのようだ。
王宮内の一角にある騎士団の詰所。任務を終えたデュルケムは自身の拠点へと戻ってきていた。
「おお、デュルケム!」
すると突然、鎧に包んだ壮年の男がデュルケムに声をかけてくる。彼の名前はゼノン=シナプス、ガイスト王国騎士団の団長であった。
「団長、いかがしました?」
「実は陛下がお呼びだ」
「本当ですか!?」
先程の落ち着いた表情から一転、驚きの声を上げるデュルケム。この国の最高責任者が一介の騎士を呼ぶことなど滅多にない。
「ああ、本当だ。すぐに準備してくれ」
「承知しました」
ゼノンからの要請に返事をするデュルケム。そして、2人は急いで王との謁見の準備を始めるのであった。
王宮内の最深部に位置する玉座の間。建物内で最も豪華な造りをしているが。あまりにも華美な内装や調度品は排除されている。これは国王の考えによるものである。
尊大な玉座に今、1人の男が座っている。既に30代を過ぎているが、隆々とした身体、厳めしい顔立ちをした男、彼こそがガイスト王、この王国の最高統治者である。
同時に彼の傍には1人の男が控えている。既に老齢に達していながらも、猛禽のように鋭い目つきをした男、彼の名前はドク=リー、ガイスト王国の大臣である。
そして現在、ガイスト王とリーの前に2人の騎士が膝を折っている。それはこの場に呼び出されたゼノンとデュルケムであった。
「2人共、顔を上げろ」
「「はっ!」」
リーの指示を受けて顔を上げるゼノンとデュルケム。続いて今度はガイスト王が口を開く。
「その方がデュルケム=プロムナードか、腕の立つ騎士だとゼノンから聞いておる」
「もったいなき、お言葉」
ガイスト王からの称賛の言葉に対しても、謙虚な姿勢を崩さないでいるデュルケム。しかし、それは単なる謙遜ではなかった。
実際、ガイスト王は強いのである。単純な身体能力は勿論のこと、武芸にも通じている。恐らく騎士団の人間が戦っても誰も王に勝つことはできないだろう。
「して、本日、お前達を呼び出したのは他でもない。重要な任務を与えるためだ」
ガイスト王からの言葉にゴクリと息を飲むゼノンとデュルケム。そのまま次なる言葉を待つ。
「先日、騎士団用の新装備が完成した。その運用を任せたい」
落ち着いた様子で語るガイスト王。現在、王国では騎士団の兵力を高めるため、国王主導で新しい装備の開発に力を入れている。
富国強兵。それがガイスト王国の推進する政策である。商業や工業の新興に力を入れているのも、新しい武器等を開発するためである。そして、ゆくゆくは他国との戦争も念頭に入れていた。
「新装備の使用はデュルケムが担当、全体の指揮はゼノンに任せる」
「謹んでお受けします」
「騎士として全力を尽くします」
リーからの指令にそれぞれ返答するデュルケムとゼノン。王国に仕える騎士として2人に異存はない。そしてまた、一連の様子をガイスト王は沈着冷静な眼差しで眺めていた。
他国との争いに勝つため、国力を高めて武器を開発するガイスト王国。この国に待ち受ける未来は栄光であろうか、それとも破滅であろうか。
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