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第13回 新しい相方

 王宮内にあるガイスト王国騎士団の詰所。その最深部に騎士団長の執務室が設置されている。騎士団の中枢とも言っても過言ではない。


 昼時の騎士団長の執務室。そこには椅子に腰かけているゼノン、そしてまた、1組の男女が彼の前に立っていた。それはデュルケムとミントであった。


 そう、デュルケムはミントと交わした約束のとおり、彼女の騎士団復帰のため、騎士団長のゼノンの説得を試みていた。


「それで今一度、ガイスト王国騎士団に入団したいと?」


「はい。どうか、私にやり直しの機会を与えてください」


「私の方からもお願いします」


 ゼノンからの確認の言葉に対し、頭を下げて懇願するミント。傍にいるデュルケムも口添えをする。


「王国の騎士団を除名されて、生活に困っている元騎士はいくらでもいる。お前だけを特別扱いする訳にはいかん」


 ミントの懇願を顔色一つ変えずに却下するゼノン。スカーレット隊の元隊員達が苦しい生活を送っていることは彼も知っている。だからこそ、彼女だけの復帰を認めることには抵抗があった。


「それにスカーレット隊の素行の悪さはこちらも知っている……例えば、モンスター達を必要以上の力で虐殺したとか?」


「……」


 ゼノンからの指摘を無言で聞いているミント。この時、彼女の中で過去の出来事が思い出される。

 確かにミントを始めとして、スカーレット隊の女性騎士は敵対者を過剰な戦力をもって始末してきた。モドキモンキーの群れに対する虐殺行為が最たる例だろう。


「返す言葉もありません。確かに我々は自らの力を過信し、敵対する者達を容赦なく手にかけてきました」


 ゼノンの指摘を素直に受け入れるミント。当時、スカーレット隊は国王の直属部隊ということもあり、力に溺れてしまっている状態であった。しかし、騎士団長の詰問は続く。


「そういうことだ。己の力も制御できない者を栄えあるガイスト騎士団に入れると思うか?」


「確かにそうです」


「もし、騎士団に入団したいと言うのであれば、今後はどうするつもりだ?」


「お、己の力を弁えて行動します。常に己の技量と精神を磨き続けていくつもりです」


 沈着冷静なゼノンからの質問に対し、懸命になって答えるミント。それは彼女なりの誠意の表れでもあった。


「ふっ……良いだろう。私の方から大臣へ進言してみよう」


 僅かながらに笑みを浮かべた後、騎士団への再入団を受け入れるゼノン。この言葉を聞いた途端、ミント本人は勿論のこと、傍にいるデュルケムの表情も明るくなる。


「但し、ミントの騎士団の再入団を認めるか否か、最終的にそれを判断されるのは大臣……そして、国王陛下だ」


 念押しする形で言葉を付け加えるゼノン。いくら、彼がミントの再入団を推薦したとしても、ガイスト王が認めなければそれで終わりである。


「ありがとうございます」


「団長、感謝します」


 頭を深々と下げて感謝の言葉を述べるミントとデュルケム。たとえ、騎士団の再入団が認められないとしても、こちらの希望を聞いてくれたことそのものが有り難かった。


 後日、ミント=シュイヴァンのガイスト王国騎士団の再入団は認められた。但し、前の任務における醜態もあり、デュルケムの指示の下で動くことになった。


 騎士団長の執務室。ここには現在、部屋の主であるゼノン、デュルケムとミントの姿があった。


「ひとまずは再入団おめでとう」


「良かったな」


「ありがとうございます」


 ミントの騎士団の再入団を祝福するゼノンとデュルケム。一方、彼女は素直に感謝の言葉を2人に述べる。


「だが、本当の戦いはこれからだ。スカーレット隊に所属していた時の醜態は騎士団内にも知れ渡っている。君はこの汚名を雪がなければならない」


「……はい」


 容赦のないゼノンからの宣告に対し、神妙な面持ちで返事をするミント。騎士団への再入団を希望した以上、過去の汚名は背負っていく気である。


「当面の間はデュルケムの付き人として一緒に行動してもらう。しっかり彼のサポートをしてくれ」


「はっ!」


 早速、ゼノンからミントに指示が出る。かつて、スカーレット隊に所属していた時の手腕を期待してのことだ。対する彼女も歯切れよく返事をする。


「それから、ミント、君の鎧……錬の鎧と言ったか……そちらも修理に出しておこう」


「感謝します」


 ゼノンからの計らいに感謝するミント。今一度、王国の騎士として、愛用の鎧を装備できる。こんなにも喜ばしいことはないだろう。


「うむ、しっかり頼むぞ、デュルケム、ミント」


「はっ!」


「了解!」


 真っ直ぐな視線を送るゼノンからの期待の言葉に対し、凛々しい口調で返事をするデュルケムとミント。少しずつであるが、次に向けた戦いへの準備が進みつつあった。


 ガイスト王国の西部に位置しているデモスの森。凶暴なモンスター達が多数生息している森林地帯である。

 この危険極まりない森の中、1人の男が蹲っていた。それはガイスト王国の攻撃から逃れてきたウォズであった。


「グググ……」


 右手で胸元を抑えながら呻いているウォズ。いくら、戦闘での傷口が塞がったとはいえ、デュルケムによる攻撃の効果は未だに残っていた。


「……アノオトコ……ヤル……カナラズ」


 何とか苦痛に耐えながらも、忌々しげに言葉を発するウォズ。それと同時に悪魔は自身に傷をつけたデュルケムに対し、より一層の憎しみを募らせていた。


 不意に蹲っているウォズに何者かの影が忍び寄ってくる。それはデモスの森に生息するモンスター達であった。怪物達は傷ついた魔人を格好の食料と思っているようだ。


「メシカ……」


 一方、モンスター達の姿に気がついたのか、ウォズの方もゆっくりと立ち上がる。彼もまた、異形の怪物達のことを食料と考えているらしい。


 お互いに相手のことを食料だと認識しているウォズとモンスター達。デモスの森に危険なオーラが立ち込めている中、邪なる者同士の争いが人知れず始まろうとしていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今後も頑張ります。

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