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第1章 1話 泥棒集団『OIL』

夜な夜な鳴り響くエンジン音、2気筒の重低音が空気を揺らす。


「お前らー!今日も一仕事しますか〜!」


先頭にはハーレーダビッドソンのXG750ストリートが走り、後ろには別のバイク4台が続く。

ほどよい田舎。そう呼ばれているこの街は、都会ではなく田舎でもない、ただショッピングモールや交通手段が多くあり住むにはものすごく便利な街だ。


22時半、重低音を響かせながら5台のバイクが向かった先は、ラーメン『星星(しんしん)』。

先頭のXG750に乗っていた男が乱暴にドアを開け、席に着いた。


「おっちゃん!今日も有名な泥棒集団『OIL』がラーメンを盗みに来たぜ!」


「よく来たな〜!『オリバー』!他の奴らはどうした?」


「あれ?もう来るんじゃね?」


メガネをかけた男がまず入ってきた。


「ちょっとオリバー、置いてくなよ。」


「よぉ『ナッシュ』、おめーのドラッグスター400のいい音が聞こえたぞ〜。」


「久しぶりおっちゃん。」


次に入ってきたのは、黒髪ロングで黒の皮のジャケットを着たモデルのような体型の女性。その後ろから、二十世紀少年のカンナを意識しているような見た目の女性が入ってきた。


「『エリカ』相変わらず美人だな〜。『リサ』!お前はますますあのキャラに似てきたな!」


2人は照れながら「久しぶり」と言って席に座った。


「今日『イムジ』はいねーのか?」


「いるよ、おっちゃん。」


マンバンヘアの男が扉を閉めながら言った。


「久しぶりに会うってのに相変わらず冷めたやつだな〜。」


ガハハと大声で笑い、麺を茹で始めた。


「おっちゃん、俺のバルカン整備手伝ってよ。」


「おう、いいぞ。」


「あ!私のエリミネーターもお願い!」


「リサのエリミネーターも、エリカのレブルも黒光りでかっけーじゃねーか!よっしゃ!お前ら2人も見てやるよ!」


2人は拍手しながらおっちゃんをよいしょしている。


「ところでよオリバー、おめーらまだ世界一の泥棒集団になるとか言ってんのか?」


「絶対になる!そんでおっちゃんたちの店にインタビューが来るだろ?そんで客が増えて大反響だ!」


「街中お前らのその心意気は愛してるぜ。」


おっちゃんは照れくさそうに鼻をかいた。


「まぁ、でもたしかに盗みって言う盗みしたことねーな。俺らが行くとこだいたいタダでくれるし。」


「なぁイムジ、そんな事言うなよ〜。」


オリバーは机に伏せた。こういう時ラーメンが出てくるとオリバーはすぐ元気になる。


ラーメンを食べ終わり、バイクに跨るとおっちゃんが店から出てきた。


「おい『OIL』!俺らのことなんか考えず自分らのやりたいことを追え!」


「ありがとうおっちゃん!でもこれが俺たちのやりたいことなんだ!」


素直、この言葉で収まりきらないくらいハッキリと言う。そんなオリバーの言葉に、おっちゃんは目に涙を貯めた。

星星を出た5人は山道を進んだところにある、廃校に入っていった。教室にはまだ机やらがあり、掃除をすれば明日からでも再開できそうな雰囲気だ。


「なぁ、前言った話覚えているか?」


教卓に手を置いたイムジが、朝礼を始める教師のようにみんなに言った。


「なんだっけ?」


「ナッシュはあの時いなかったから知らないよ。ほら、時空転送装置が作られたってニュース。」


「あ〜...でもあれどうせガセネタって話だっただろ?」


「いや、おそらくマジなやつだよ。オリバー、お前の父さんもこれを盗もうとしてたかもしれない。」


「は!?どういうこと?」


「昨日の夜、その研究施設の周りを探ったらこれが出てきたんだ。」


イムジがポケットから出したのは、ネジだった。


「ネジ?」


「うん、俺はオリバーの父さんと部品を自作しようとしてたからわかるんだ。これはオリバーの父さんが初めて作ったネジだよ。」


ネジとしては到底使えないようなガタガタさを懐かしそうにイムジは触っていた。


「父さんが突然消えた理由...ってよりこれを盗めば俺たちはでけー泥棒集団になれるぞ!みんな行こう。」


「素直に父さんに会いたいって言っとけよ。」


イムジは微笑んだ。


バイクに跨り、全員で研究所へと向かった。フェンスをよじ登り、中へ侵入する。

日々訓練に励んでいるが、まともに動けて忍んでいるのはオリバー、イムジ、リサだけだった。ナッシュとエリカはボテボテだ。


「警備が薄くないか?」


「ああ。様子が変だな?これだけの研究所なら警備もしっかり雇っていると思ったんだが...」


途中ナッシュが泣き言を言っていたが、それどころじゃなかったため無視して研究所内のダクトを通って侵入した。


「ここだ!オリバー、多分ここだよ!」


リサが先頭を歩いていたオリバーに声をかけた。


「なんでわかったんだ?」


「女の勘?ってやつさ。」


ダクトから降りると、針のようなものに囲まれた本が奥にあった。おそらくこの針は何かあったとき、電気で焼き払うためのものだろう。


「何?この本。」


エリカが本に近づいた。

エリカは周りを見て、本に手をのばした。


「触るな!」


イムジの警告も虚しく、エリカは本を取ってしまった。エリカが本を取ったあとすぐに警報が研究所全体に響いた。


「逃げるぞ!」


イムジが土台となり、全員がダクトに登った。


「オリバー!先行ってろ!」


「待てイムジ!」


オリバーの声が届いてないのか、部屋から出ていってしまった。待っていたいが、イムジの頭の良さなら上手く切り抜けるだろう。先に外へ出ることにした。


「バイクまで走れ!」


全員がフェンスに向かって走り出す。

フェンスの前に来た時、バチバチと音がなっていることから、フェンスに電流が流れていることがわかった。


「やばいよオリバー!どうしよ!」


「エリカ落ち着け!どうするか考えてる。」


電力が落ちたのか突然研究所の明かりが消えた。


「お待たせ。」


「イムジ!この電力お前がしたのか?」


「ああ。登る時、あそこに赤ランプがあるの見てたからな。」


「さすがイムジだ!みんな逃げよう!」


フェンスをよじ登り、バイクに乗ってすぐに逃げた。


「この本どうしよう!」


エリカが叫んだ。


「目的の物じゃないけど、何かあるはずだ!戻ったら調べよう。」


追手も来ていなく、順調に進んでいた。


「きゃっ!なにこれ!?オリバー!」


前を走っていたオリバーとイムジが振り向いた時には、青い光がエリカを包み、その前を走っていたナッシュとリサまでを包んでいた。


「みんな!!」


どうすることもできず、オリバーとイムジは青い光に包まれた。オリバーはその眩しさに目を閉じた。

オリバーが目を開けると、木造平屋が十軒ほどある謎の村にいた。周りはトラックや圧縮されて四角に固まったゴミで壁を作っていた。


「え....」


「オリバー!!」


エリカの声にすぐさま振り向く。


「どうなってるの?ここはどこ?みんなは?」


「わ、わからねぇ...」


バイクを降りたオリバーは、ヘルメットをハンドルに引っ掛け、町を見渡す。

扉が閉まっていた平屋が次々に開く。中から出てきたのはシャベルや斧を持った年寄り。中には拳銃を持った者もいた。


「何者だ!どうやってここに入ってきた!」


屈強な肉体をし、口が見えないほどモッサリとした髭を蓄えている男が、オリバーに向かって歩いてきた。


「言え!言わないなら殺す!」


右手に持っていた大きな両刃斧をオリバーに向ける。


「ど、どうなってんだよ!」

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