第9話[理由]
城の広間。
みんな揃うと、ボスは合格理由を言いだした。
「まずは、セキ、君だ。
君は動体視力が良い、今現在に至るには多大な努力をした筈だ。
それは誇って良いことだ。
努力ほど力になるものは無い。
・・・だが、後先考えないことが多いな。
そこは改善していけばなんとかなる」
「次は、ベニ、君だな。
ベニも兄に似て、なにかの目的があって努力をしてるようだな。
兄には劣るかもしれないが、あの教室の中では結構身体能力がずば抜けていた。
だが、態度の割に騙されやすいところが少々痛いな」
「次、コウ。
君の場合は言動や行動から誤解されやすいが、その気になればこの中で一番強くなるだろう。
いや、動き回る分には一般的だが、上手く立ち回ることを得意とする。
が、何でも適当にこなしているから、上手く才能を発揮できていないんだろう」
「次、ツバキ。
君は、何でも適当に見えるが、まぁ期待している」
「アオイ。
君はこの中で一番の落ちこぼれだ。
ここで一つ問おうか。
君は試験のとき、何故、倒れている人に回復術を使ったんだ?」
俺は、当時の状況を思い出して答えた。
「このまま放っといたら死ぬと思ったんだ」
ボスは笑顔のまま問い続ける。
「援助をする。
という選択肢は無かったのか?
援助をしていれば、被害はその分抑えられたはずだ。
相手が私だったから全滅したが・・・、他の敵だったら今頃、二人で倒して、被害は最小限で済んだはずだ」
俺は「?」という表情をした。
「目の前で人が死ぬかもしれないのになんで放っとくんですか?
それに他の敵でも、俺達を全滅させてたかもしれないじゃないですか?
だったら俺は、もし、倒せるとしたら小さな可能性にすがりつこうと思ったんです。
セキの動きを見て、その間に人を助ける。
・・・セキにたくそうと思ったんです」
ボスは俺の表情を見て、「そうか・・・」 と言った。
ボスは俺に対してそれ以上なにも言わなかった。
ボスは俺から目を逸らすと、アサの方を見た。
「アサ。君は・・・・・・、
危険人物として認識している」
みんな驚いた。
「いや、裏切り者とかそう言う意味ではない。
後で分かることだ」とボスは最後にそう言った。
みんな結局自分自身が合格したことに納得していなかった。
私は[それでいい]と思った。
ゆっくりと自分の長所に気づけばいい。
城の広間。
私は一人で空中の青い画面を見ていた。
画面に映ったのは、みんなが侵入した誰もいなくなった敵のアジトだった。
映っていたのは研究室だった。
私は誰もいない研究室をじっと見ていた。
研究室に誰かが現れた。
老人だった。
老人は画面の中央に来ると画面の方を見た。
私が笑顔のまま老人の方を見ていると、画面の映像が、急にプツンと切れた。
私は映像が切れた画面を見ながら呟いた。
「・・・宣戦布告だ。エンゼル」