プロローグ[選ばれし者]
城の広間。
絨毯もなにも敷かれていない石の床の上に立つと、誰もいない静かな空間で、指をパチンと鳴らした。
空中に白い光の粒が集まり、目の前に大きな青い画面が現れた。
表示された画面に指で触れると、画面が切り替わり、生徒達の細かい情報が映し出された。
指をスライドさせ、情報を頭に入れていると、少数の生徒に目が止まった。
「・・・・・」
一通り見終えて呟いた。
「・・・なるほどな」
この国は科学技術が進んでいた。
犠牲があったからと言ってもいい。
知識、技術は犠牲があるから成り立つもの。
犠牲があるのは当たり前だが、無意識で犠牲を出している者が多いだろう。
私達の世界では、それが日常であり、日々繰り返されている。
化け物、キラーの存在。
その理由を知っているのはごく僅か、知られてはいけない情報だ。
もし、この情報が漏れてしまえば、義務に逆らう邪魔者を排除しなくてはいけない。
何かを得るには犠牲はつきもの。
だが、得るものよりも失うものの方が大きいだろう。
私は君達を試している。
私は有力な候補者をタッチで消して省いていった。
残されたのは堕落した者たちばかり、世間からは何の期待もされない人達だった。
私はこの時を待っていたのかもしれない。
「不道者よ、君達の手で世界を塗り替えろ」
私は小さな声で呟いた。