【プロットタイプ】クリームが食べられない
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
生クリームがいっぱい食べられない歳です。
同居人は高校時代から何ら変わらない幼児性を持っている。良く言えば無邪気。悪く言えば子供っぽい。感性が子供に準じているので、大人が求めるマナーとは別の物を求める所がある。
が、存外そこだけで括られ無いものも相応にある。
書店や雑貨屋を見て、一通り欲しいものを眺め見た帰り道、突然背中のコートを鷲掴みにされた。嫌な予感がする。抗えない運命に直面した気がする。
構わず歩こうとすると、真後ろから絶叫が聞こえて来た。
「ねぇねぇねぇ!! 瑠衣たん!! パーラーおくびきでモンブラン食べに行こうよ〜!!」
自らの全体重を掛けて重しとし、その場で繋ぎ止める。知らん顔で歩こうとすると、また後ろから駄々が聞こえてきた。
「奢ってあげるからさぁ〜!! 良いでしょ〜? ねぇ〜!!」
「うるさ」
「疲れたでしょ?」
「今のお前の行いでな」
「じゃあ休もう」
指の先はパーラーに向かっていた。生憎、今の気分では無い。寝たい。
「帰ってからな」
「ねぇ〜!! モンブラン!!」
以上の様な行いを経て、頼んだものは全て鏡花が持つという約束の元、店の中に足を踏み入れる事となった。
店内はシックでモダンな装いだった。暗色を基調としたシンプルな家具と、柔い照明。雰囲気だけでも分かる。高級店であると。
しかし鏡花はそんな事も意に介さず、案内されるがままに店内奥まで突き進んで行く。二人がけの席に案内されるが否や、目に入り込んで来たのは、モンブランだった。
円を描く様に巻かれたものでは無く、絹糸を上から幾重にも重ねた様なもの。毛糸の束のようなそれは目立つ大文字で『生搾りモンブラン』と書かれている。
他にもパフェやらケーキやらが並んでいるが、店側が進めるのは、やはりこれであるらしい。
「瑠衣たん選んだ? 期間限定のはモンブランね」
「じゃあそれで」
店側が進めるのは、ハズレでは無いだろうし、何よりさっさと決めて帰りたかった。
そうして差し出されたのは、ワンカットのケーキを一回り大きくした様なものだった。想像していたよりも大きく圧倒される。スプーンを差し入れると、しっとりとした重さが、持ち手を通じて伝わってくる。
食べてみると、栗の味よりもクリーム感が強め。一般的な絞り器を使っていない分、舌触りは柔らかく、滑らかだった。
確かに美味い。ただ周りを纏っているクリームの比率が非常に多い為、やや味が単調。これを丸々一つ食べる頃には、恐らく飽きてしまっているだろう。
チラリと鏡花の同行を見る。表情はモンブランが差し出された時から何一つ変わっていない。しかし目の光が段々と衰えているのが分かる。甘さに飽きてきたか、半ば勘弁して欲しいとも取れる様な眼差し。おい、あと半分残ってんぞ。
だが結局、文句一つ言うことなく完食し、そのまま二人分の会計を済ませて店を出た。そしてからだった、鏡花が明後日でも見るような目で、ぼんやりと呟いた。
「……歳かな……生クリームがいっぱい食べられない……。昔は平気だったけど、今は胃がもたれる」
じゃあ何故食べたかったのか。と思うところがあったが、理想と現実に打ちひしがれているだけだと思い、あえて口を噤んだ。
「お前、俺と同い年だろ」
存外、体は歳を取っている。
ケーキのホール食い、または食べ放題は二十歳前にやっておいた方が良いですよ。
二十歳超えた辺りから、出来なくなるので。
二十歳までにやっとけ。というのはこれが一番かなぁ。
周りの視線云々より、体に直撃することなので。受け入れられなくなるので。
瑠衣と鏡花の話って、冒頭の掛け合いみたいな感じ。
ナチュラルに切れ味の鋭い返しが飛んでくる。
『疲れたでしょ?』『お前の行いでな』『じゃあ此処で休もう』『家で休みたい』。
これ、猫同士のじゃれ合いみたいなもので、相手が傷つかないと分かってるから、結構激しい返しが出来る。
本気で傷付いて引きこもるなら、ちょっと手加減してくれます。
まぁそんな相手を瑠衣は求めませんが。
折っても折っても繋ぎ直す。
落としても落としても這い上がる。
そんな一人でも生きていける人が好きなので。