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第5話 お友達になりたい

会話内容コロコロ変わります。着いてきてくれ⩌⩊⩌

滝川さんとお菓子トークをしてのんびり歩いていた。正直最初の目的はほぼほぼ忘れていた。


「…私、男性の方と会話したの本当に久しぶりです」


滝川さんは突然そう言った。いつも教室で人気者の彼女が、男性と話すのが久しぶり?

少し疑問が残る言葉だった。


「いつもクラスメイトと話してるじゃん」

「まぁ…そうなんですがね」


なんだか歯切れの悪い発言に、また疑問が増えた。


「じゃあ会話してるじゃないか」

「うーん…女性はそれなりに会話が成り立つのですが、男性の方は言いたいことぶつけてくるだけで会話にならないというか、はっきり言って不快ですね」

「…おぉ…」


怒気を孕んだ辛辣な言葉に怯んでしまうが、その気持ちも分からなくもない。

クラスの男子たちはたしかに少し強引なところがある。度が過ぎたら俺の友達である悠真が仲裁に入る(というか男子を抑えつける)ことがあるが、それでも収まらないことは俺も何度か見た。


そんなことになっても俺は傍観してしまう節がある。悠真に加勢しようと思ったことは何度もあった。それでも勇気が出ず、()()()()()を思い出してしまう。

少し複雑な顔をしてしまったのか、滝川さんは俺の顔を覗き込む。


「大丈夫ですか?なんだか思い詰めた顔をしていますよ?」


心配したような声色で尋ねてくる彼女の声で我に返る。あのことは一旦忘れよう。


「その…ごめんな、男子たちの攻めを止められなくて」

「ん? いいんですよ、あなたが心配そうに私を見てることも、不埒な目で私を見ていないことも知っていますから」

「不埒って…」

「不埒でしょう。あの人たち、私の身体をジロジロ見てくることがあるんですよ!見世物じゃないのに…それに対して、本川さんや南谷さんは私の顔だけしか見てきませんしね。それはそれで恥ずかしいのですけど」

「まぁ、なんというか……本人に言うのもなんだけど、滝川さんは自分的には観賞用だからね。それに、高嶺の花だし、手を出そうなんて思わないし」

「…ふふ、大半の男子より本川さんはよっぽどマシですけどね」


柔らかい笑みを見せる滝川さんに思わず心臓が跳ねた俺はニヤニヤしてしまう。恐らく俺の事を信頼してくれている滝川さんに、俺のニヤニヤして気持ち悪い顔を見せる訳にも行かないので、俯いて口角挙筋を片手で抑えてニヤニヤが収まるまで耐える。


「…なにニヤニヤしてるんですか」


………バレた。

終わった。


「…ふふ、へんなひと」


また微笑んだ。何が面白いのか分からないが、気持ち悪がられている訳では無いようだ。良かった………


ん?


顔を上げた先はコンビニ。その元にあるのは……


「あっ……!」


俺の目線の先を追って滝川さんはそのポーチに駆け寄る。


「ありました!!鍵です!」

「お!見つかったか!良かった〜」

「多分、財布をカバンにしまう時に落としたのかもしれませんね…」

「何はともあれ、見つかってよかったよ!」

「ご協力本当にありがとうございました」


彼女は礼儀正しくぺこりと頭を下げてくる。


今は18時。冬だから、辺りはすでに真っ暗だ。


「野宿しないで済みます〜」


彼女は心から安心したように呟く。でも、俺はその言葉に少し疑問を抱く。


「聞いていいのか分からないけど…滝川さん、両親は…?」

「…ぁ…」


喜んでいる顔から一変、悲しそうな顔になる。


「…ごめん、変な事聞いたな。嫌なら言わなくても大丈夫だよ」

「あぁ!いえ、特に深い事情がある訳ではなくて…両親は海外でお仕事していて、ひと月に1回程しか帰ってこないんですよね…だから少し寂しくて」


衝撃の事実。でも確かに言われてみれば、時々隣の家が騒がしくなっているのを感じることがある。そのタイミングこそ、彼女の両親が帰ってきているのだろう。そして、うちの両親も…


「うちの両親も、海外じゃないけど県外で仕事してるんだ。だから寂しいのは分かるかも」

「…!あなたとは共通していることが多いですね」

「確かに。…趣味は?」

「えっ?えーと…」

「せーのっ」

「「ゲーム」」 「「…!」」


「得意な教科はどうですか?」

「Ok」

「せーの!」

「「数学」」 「「…!?」」


「うーん…好きな学食のメニューは?」

「いけます!」

「せーのっ」

「唐揚げ丼」「カレーです!」


ここまで来て揃わないのかよ〜…


「…ふふっ」

「…ははっ」


なんだか面白くなってしまって、2人で笑い合う。

やがて滝川さんが口を開く。


「本川さん」

「ん?」

「良ければ、その…えと」

「なに?」

「と、友達になりたいです」

「…!まじで?」

「まじです!」

「もちろん!俺でよければ」

「! 嬉しいです!これからよろしくお願いしますね」

「あぁ、よろしく!」


俺は反射的に手を差し出して握手しようとする。彼女がぽかんとしていたので慌てて引っ込めようとするが、俺の握手の意図に気づいたようで彼女はしっかりと握ってくる。

柔らかな手とその温もりに包まれて嬉しいやら緊張やらでまたニヤニヤしてしまう。辺りが暗いからか、顔が真っ赤なのはバレていないようだ。


「まーたニヤニヤしてますよ」

「………滝川さんだって…」

「ふぇ?」

「…頬が緩んでるよ」

「…見ないでください」


彼女はもう片方の手で口元を隠す。その仕草も可愛くて、またニヤニヤが止まらなくなる。どちらからともなく手を離し、家に向かって歩き出す。


…彼女の方から友達になりたいって言ってくれたんだ。俺も勇気をだして()()を言ってみよう。


「滝川さん」

「ん?どうしましたか?」


またその無邪気な笑顔。さっきニヤニヤしきった俺は、今回は耐えて見せた。


「その…もし良ければ、連絡先交換したいなって!」

「…!」

「だめ…かな」

「いえそんな!…こっちからお願いしたいです…!」


そうして連絡先を交換した俺たちは、ホクホクして帰路に着くのだった。

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