第23話 見てられないよ
「で、2人して何か用か?」
俺も気になっていた疑問を悠真が投げかけた。
しかし、三枝さんは、なぜそんなことを聞くのかと、なぜ分からないのかと言いたげな顔で問いの答えを返してきた。
「私が悠真と昼飯を食べたかったから」
「お、おぅ。簡潔だな」
「でしょ。座っていい?」
悠真にはにかんだ三枝さんは、俺たちがなにかを言う前にさっさと近くにあった椅子をふたつ持ってきて、悠真の前に座る。
霞もそれに続くように、三枝さんに「ありがとうございます」と言って俺の前に座った。
霞は俺と目を合わせた後、「イタズラ成功!」と言わんばかりの笑顔を向けてくる。何をイタズラされたのかは分からないが、それは後で聞くとしよう。
霞の素をさらけ出すその顔は、教室を背に座っていて、俺にしかその顔が見えないと分かってやっていることなのだろう。
2つの机を4人で使っているので、それなりに距離が近い。そんな状況下で周囲の注目を浴びない訳もなく、先程まで聞こえなかったクラスメイトのヒソヒソ声が聞こえる。
「おい、あの席見てみろ」
「霞姫に葉夏さん…美少女2人が男の席に!?」
「悠真と、…誰だっけ」
「葉夏さんちょっと顔赤くない?」
「ほんとだ!そろそろくっつかねぇかなあ、あそこ」
良かった。嫉妬どころか俺は認知すらされていないみたいだ。話題は三枝さんが悠真にいつアタックするか、というものに変わっていった。
いつもアタックしてるようなものだけどな。
そんなことを思っていたら、早速。
「ユウ、前髪にゴミついてる」
「え、取って取って」
「…ん、取れた」
「ありがと、ヨウ」
「ふ、ふん、フフフフフ」
「?」
こいつら、人目を気にせずイチャイチャしよる。
いや、こいつらと言うには一方的かもしれないな。三枝さんが顔を赤らめてニヤニヤしているだけで、悠真はと言うと爽やかな笑みを浮かべながらそんな様子の三枝さんを不思議そうに見ているだけだ。
ほんの少しとは言えども男女の接触なので、思うところはあるだろうに、鈍感なやつだ、こいつは。
それを見た霞は、何故か彼らに憧憬のこもった眼差しを向けている。そう見えたのは気のせいかもしれないが、一瞬頬が緩んだのが見えたのだ。
ずっと顔を見ていたからか、霞は不思議そうな顔をして俺に「顔になにか着いてますか?」と小声で聞いてきた。
何も着いていない旨を伝えようとすると、右側から…
「ユウ、あーん」
「「!?」」
…爆弾が投下された。
俺と霞の先程の会話は全て吹き飛び、2人で驚愕の顔をして三枝さんを見る。三枝さんはニヤニヤしながら悠真の口元に卵焼きを持っていく。
クラスメイトも少なくない人数いる教室で、それなりに大きい声でそう言ったのだ。俺たちだけでなく、クラスメイトからも興味津々といった注目を浴びている。
この状況にさすがに悠真も恥じらいがあるかと思ったが、一瞬キョトンとした後、
「ぱくっ」
と食べて、「うまいうまい」とか言っている。
こいつは…
三枝さんから受ける「あーん」に慣れきっているのか、三枝さんを女性として見ていないのか。
…どっちもなんだろうなぁ。
三枝さんを見ると、悔しそうな顔をして「うぬぬぬ」と呻いていた。
…苦労しているんだなぁ。
その後も、三枝さんはどうにかして悠真を振り向かせようと奮闘を繰り広げ、全て受け流されてしまったのだった。
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