第19話 またあそぼ
悠真が玄関のドアを閉める。
家で女の子と2人きりなんて初めてだ。
尤も、霞が今日まだうちにいるならの話だが。
「啓人君、ゲームしたいです」
はにかんでそう言われた。
…まだ居てくれるらしい。
女の子と自分の家で2人きり、更には美少女と。そんな出来すぎたシチュエーションの中では、男としてはとある本能が刺激されてしまう。
それでも変なことをするつもりは無いし、これからもそんなことは起こりえないだろう。
霞にとって俺は、初めてできた男友達であって、彼女もそのことを喜んでくれている。その期待を裏切るようなことは絶対に出来ないのだ。
「いいよ。次は何やる?」
「さっきの続きもいいし…協力ゲームもいいですね♪」
頭の中に浮かび上がってくる不埒な考えを捨てて、玄関からリビングに向かう途中、そんな会話をしたのだった。
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いつの間にか2時間ほど遊んで、外は暗くなった。
自分の家で友達と遊ぶと、終わりが寂しくなり、それは俺も例外じゃない。
しかし、そろそろずーっと上機嫌に楽しんでくれている霞を帰らせなければいけない。あまり遅くなると、俺に変な気が立ちかねないしな。
「霞、暗くなってきたし、そろそろ帰らないとじゃないか?」
「あ………そうですね」
どうやら今日が終わるのを寂しがっているのは俺だけでは無いらしい。彼女は眉を下げてしゅんとした顔を見せてくる。
そんな顔を見ると、つい引き止めたくなってしまう。
ここ一週間を過ごして、一人でいるよりも霞と一緒にいた方が心地良さを覚えるようになってきたのだ。
しかしここは自分のため、霞のために引き止めはしない。
彼女は帰る用意をして、玄関に向かう。俺も見送るために付いていく。
玄関に着くと、霞は突然振り向いてこちらを見る。
…思わず見とれた。嗚呼、麗しき見返り美人。
「啓人君が良ければなんですけど…」
「あ…うん?」
「…またあそびたいです。……ふたりで」
頬を赤く染めて。でも真剣な眼差しでそう言った。
ふたりで。付け足された言葉は、"ふたりきりで" と言う意味に聞こえてしまう。都合のいい解釈ではあるが、その言葉は恥ずかしくもあり、嬉しかった。
「うん。また遊ぼうな」
「あした」
「へ?」
「…は、だめですか」
「…ふふ、いいよ、暇だしね」
「…!ありがとうございます!」
次遊ぶのがまさか明日になるとは思わなかった。
願ってもないことだ。明日が楽しみになってきた。
「あと、啓人君」
「どうした?」
「あの………すこし、かがんでくれますか」
「?……………………っ!?」
「ありがとうございました、またあした!」
そう言って霞は逃げるようにバタッとドアを閉めた。
同時に俺は壁に寄りかかって座り込んだ。
「はぁぁぁ〜〜〜…………」
撫でられた。霞の頭を撫でたことは何度もあるが、俺がされるのは初めてだ。
一瞬だったのに、とても気持ちいいものだった。
俺の髪は毎日風呂で洗ったりはするものの、ケアなんて全くせずボサボサなので、霞の髪のように撫で心地は良くないだろうが。
悠真の帰り際に言っていたさっきのやつとやらは今のなでなでのことだろうか?
去り際に霞がした恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうにしていた顔が目に焼き付いて離れない。
彼女のその顔を初めて見た。可愛かった。
彼女の私服を初めて見た。可愛かった。
俺が頭を撫でるとしてくれる甘えた仕草。とても可愛い。
俺の跳ねる心臓が落ち着きを取り戻したのは、霞が帰ってから20分後のことだった。
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