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第9話 友達にだけ

まとめるの下手すぎて最後の方無理矢理感がありますごめんなさい!

電車の中で、2人で決めたことがある。

教室に入るタイミングを少しずらそうということだった。

一緒に教室に入れば、もちろん一緒に登校したと思われて、俺の平穏な生活はさようならしてしまう。

滝川さんは終始不満気な顔をしていたが、元々拒否する気もなかったようで、了承してくれた。


━━━━━━━━━━━━━━━


教室の前に来た。扉が閉まっているにもかかわらず、かなり騒がしい。

扉を開けると、教室の喧騒が隔たりなく聞こえるようになる。騒がしさの原因はやはり━━━


「霞姫、おはようございます!」

「はい、おはようございます」

「霞姫、今日の課題良ければ教えて欲しいのですが…」

「いいですよ、どこが分からないのですか?」

「霞姫好きです!」

「……ありがとうございます」


やはり霞姫こと、滝川さんだった。性格はもちろん、容姿まで完璧な彼女の人気は凄まじい。…告白してたやつもいた気がするけど。先程電車から降りた後、滝川さんを先に教室に行かせたのだ。彼女に集まる声を聞いてみる限りだと、彼女は今席に着いたばかりだと思われる。

そんなことを考えながら俺も自分の席について、机の中に勉強道具を入れていく。すると案の定、悠真がやってくる。


「おはよう啓人!」

「おはよう、悠真」


いつものように朝から元気に挨拶してくる悠真はなにかに気づいたように俺を見てくる。


「…なんか目付き変わった?」

「は?」

「……いや、なんでもない」

「?」

「なんというか、いつもより雰囲気が柔らかい気がする」

「???」


悠真の言っていることの意味がよく分からない。

昨日の今日で目付きが変わる?雰囲気が柔らかくなった?

でも、悠真は人のことをよく見ているので、本当にそう感じたんだろう。何がそうさせたのか?

…言うまでもなく滝川さんが影響しているだろうが。

それでもまだ困惑の表情を隠せないでいる俺を見て、悠真は話題を変えた。


「まぁいいか、それより、昨日の数学の課題やったか?」

「あぁ、やったよ。難しかったけどな」

「いやほんとな!マジごめんなんだけど、ちょーっとだけ分からないところ教えてくれないか?」

「いいよ、どこが分からない?」

「ありがとう!えっと、この問3だな」


問3は、昨日俺も分からなかった応用問題だ。

深夜だと言うのに滝川さんに聞いた箇所。

彼女の説明はとても分かりやすく、今では俺も問題の解説ができるようになったくらいだ。

昨日のことを思い出して、彼女の方を見る。相変わらずの人気っぷりで、色々なことを言われるが、全て笑顔で対応している。

でも…なんだかその笑顔も何故か曇って見えてしまう。なんだか、無理しているような…?


あぁ、そうか。昨日彼女の家の玄関で声をかけた時の疲れたような顔。昨夜突然聞いてきた、「霞姫」という二つ名をどう思うかという問い。そして、友達(啓人)に見せてくれる、彼女のころころ変わる表情。



人前では「霞姫」に変身して、八方美人に演技する。


友達…信頼における人物といる時は時は素をさらけ出す。



理由こそ分からないが、恐らくそういうことなんだろう。


しばらく彼女を見ていると、目が合った。

そして、少し俯いて周りにいる人達に見えないようににへっと笑顔を作る。ほんの一瞬の出来事だったが、やはりドキドキしてしまう。


「…何ニヤニヤしてんだ?」

「うわっ!…なんでもない」

「ふーん………滝川さんがにこってしたのは関係ないの?」

「っ!」


あ、バレた。

そもそも、学校で話さないようにしたいと言ったのは俺であって、滝川さんは「話したいのに…」と言っていたので、周囲にバレたところで不利益を被るのは俺だけだ。

それに、悠真なら信用できる。こいつには、今話さなくてもいつかバレる気がするので、正直に話すか。


「お前ら仲良かったのか?」

「…話すと長くなる…訳でもないんだけどな、」


昨日あったことを悠真に話した。


「へぇ〜」

「そういうことで、俺と滝川さんは友達同士になったんだ。誰にも言うなよ?」

「はいはい。…よくやったなぁ、親友」

「?」

「いやー、俺だって嬉しいよ。啓人の善性に気づいて友達になってくれた人がいるなんて。しかもその相手は滝川さんだなんてなぁ。羨ましいぞ、この」


悠真はそう言って、にやにやしながらべしべしと背中を叩いてくる。


「啓人って、目立ちたくないっていう性格だろ?しかも自分のテリトリーに入ってくるなっていうオーラを感じるし」

「え、そこまでか?確かに目立ちたくは無いけど、そんな雰囲気出してないぞ」

「うーん…あ、その目かな?」


俺の目は切れ長で、よく目つきが悪いと言われる。そんなこと言われても直しようがないのだが。


「あと、この前髪」


悠真は俺の前髪を指さし、それから持ち上げてくる。途端におでこに感じていた重みが無くなり、視界が明るくなる。

一方、悠真は前髪が無い俺を見て感心したようにほほ〜と声を漏らす。


「…結構イケメンじゃんか」

「そんなことないって」

「いやいや、現役イケメンの俺が言うんだから間違いないって」

「…自分で言うのな」


前髪を触る悠真の手を払い除けると、彼は小さく鼻を鳴らして何故か微笑む。

なぜ微笑んだか分からない。

そんなことを考えているうちに、先生が教室に来て、騒がしかった教室は静まったのだった。

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