第四話 部活、どう?
「ミヤミヤってなんで死んじゃうの?」
「何だその配慮の欠片もない質問は」
宮上が登校してからすぐに、皐月が聞いてきた。
「医者にもよく分からないらしいんだよな。ただ1つ分かるのは、俺があと1年で心臓関連のどっかが悪くなって死ぬってことだけ」
「へぇー」
「もうちょっと興味ありそうな反応しろよ」
呆れる宮上だったが、その顔に厭悪の念は感じられなかった。
特に何事もなく放課後を迎え、さっさと帰ろうとしていた宮上を、1人のクラスメイトが呼び止めた。
「宮上君、ちょっと待って」
「何だよ」
「宮上君ってまだ部活入ってなかったよね?うちの学校、全員入部制だから、この後予定無いなら部活の見学して、どこに入るか決めてもらいたいんだけど…」
「そうは言っても…俺この学校の構造知らねぇし」
「誰か仲良しの人とかいない?」
「いや特に……あぁ…1人いた」
「じゃ、その人に案内してもらってね」
そして現れたのが…
「私だよ!」
「知ってるよ」
「そういえばまだ部活入ってなかったんだね〜。どっか見たい部活とかある?」
「無い」
「じゃあ私の部活行こうよ!」
どうやら皐月の部の活動場所は、校舎の3階にあるようだった。
「これ…何部だ?」
「良い質問だね…私が入ってるのはオカ…同好会だよ!」
周りの音のせいで、名前の一部が聞こえなかった。
「は?なんて?」
宮上は聞き返したが、皐月には聞こえていないらしく、皐月は部室に入って部活紹介の用意をしに行った。
(オカ…その先は何だ?同好会ってことはそこまで有名なものでもなさそうだな…)
宮上は廊下で1人考えていた。
(オカリナ…オカルト…どっちも碌なもんじゃねぇな)
多方面に喧嘩を売る宮上だったが、それには理由があった。まず宮上は楽器全般が扱えない。ましてやオカリナなんて写真でしか見たことがない。そして、宮上はこう見えてホラージャンルが苦手なのである。その為、オカリナだろうがオカルトだろうが、あまり気が進まないのだ。
(マジでどっちだこれ…いやどっちでも気乗りはしないけど)
「ミヤミヤ!入ってきていいよ!」
「ああ」
宮上がドアを開けると、そこは思っていたより普通の部室だった。だが、宮上は安堵はしていなかった。棚の上に置いてある、とある物体が目に入ったからである。
「なぁ…あれ…オカリナだよな」
「うん!オカリナだよ!」
(ああオカリナ同好会だった…まあオカルトよりマシか…)
今度こそ安堵しかけた宮上。だが、現実はそう甘くはなかった。
「おいアレ…何だ?」
宮上が指差した先には、『呪』と書かれた札が貼ってある木製の扉があった。
「ああ…アレね…まあそんなことより、うちの部活はどう?」
「いや教えろよ!めちゃくちゃ気になるぞアレ!」
「アレは…知らない方が良いことってあると思うんだ、私」
(冗談じゃねぇぞ…オカリナとオカルト両方の性質を併せ持つって?どこのガムだよ…!)
「なぁ…この部活…何部なんだ?」
「え?さっきも言ったじゃん…」
「『岡部ピラルク同好会』だよ」
宮上の頭は『?』一色だった。
「え?岡部…え?は?誰それ?」
「え!知らないの!?」
「知らねぇよ誰だそれ!」
「岡部ピラルクはうちの高校出身の芸能人だよ!お笑い芸人の!」
2秒で考えたみたいな名前の芸能人の説明をされた宮上だったが、まだ疑問は残っている。
「じゃあこのオカリナなんなんだよ」
「これは部長の趣味だよ。まあ、私達も一緒に吹かされることもあるけど…」
「岡部ピラルク兼オカリナ同好会じゃねぇか」
「長っ」
「ん?じゃああの扉なんだよ」
「ああアレは…まあいっか」
皐月は『呪』と書かれたお札の貼られた木製の扉を『えい』と言って持ち上げた。
「それ縦開きかよ」
「中入って〜」
まさかの縦開きだった扉の先には、岡部ピラルクのものと思われるグッズが沢山置いてあった。
「ここ…部長のグッズ置き部屋なんだよね」
「…確かに、知らない方が良かったな」
「でしょ?」
「あ?奥にあるアレは?」
「アレも部長の趣味だよ。こっくり…みたいな名前の」
「…岡部ピラルク兼オカリナ兼オカルト同好会じゃねぇか…」
それから宮上は、様々な部活を見学に行った。1時間ほどして、岡同(岡部ピラルク同好会)の部室の前に帰ってきた。
「おかえりミヤミヤ。どうだった?」
「…あんま気乗りしねぇけど…ここ入るわ」
「お、その心は?」
「他の部活は皆やる気満々だから居づれぇ」
「そっか!じゃあ入部届もらってくるね!」
そして日は暮れ、宮上も自分の家に帰ってきた。その夜、つけっぱなしのテレビから岡部ピラルクの名前が聞こえてきたので、なんとなくネタを見てみることにした。その感想は…
(…面白ぇ…)
だった。
キャラクタープロフィール②
名前 篠月 皐月
年齢 17歳
好きなもの 沢山あるから挙げられない
嫌いなもの 勉強 きのこ
作者コメント
社不の私がイメージした陽キャ。誰にでも分け隔てなく接する性格で、クラスのグループLINEとか自分から作るタイプ。『私にこういう友達がいてほしい』という一種の願望の形である。休日は大体どっかに出かけてる。




