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あの日の僕へ  作者: Isel
3/13

第三話 賭け

これは月一投稿かな

〜前回のあらすじ〜

(宮上だけの)絶対に笑ってはいけない学校生活24時が始まった。

「ミヤミヤが…学校来てる…!」

「いつも来てるだろ」

「いや、そうだけど…あんな賭けしたら、今日一日学校来ないんじゃないかって…」

「お前マジで俺のことなんだと思ってんだ」

『賭け』というのは、絶対に友達を作りたくない宮上vs宮上と友達になりたい皐月の勝負で、今日一日で、宮上を笑わせられたら皐月の勝ちである。

今日学校を休むというのは、当然宮上の選択肢の内にはあった。しかし、それでは『勝ち』とは言えない。宮上には秘策があった。

一方、皐月は…

(…ミヤミヤって笑うの?)

策とかそれ以前の問題だった。

やがて1限が終わり、最初の休み時間が訪れた。

「やっほーミヤミヤ!遊びに来たよ!」

だが、宮上からは応答がない。不思議に思った皐月が耳元を見てみると、その原因が判明した。

「ミ…ミヤミヤ…!イヤホンしてる!」

(ま…まぁ、音楽好きなんだろうな。ここは出直そう)

そして、2度目の休み時間、3度目の休み時間、昼休みが訪れ、その度に皐月は宮上の元へ向かったが、どんな時も宮上はイヤホンを外さなかった。そう。これこそが、宮上の秘策であった。賭けの内容を知っている周りの席のクラスメイト達は全員こう思っていた。

(汚ねー…)

と。

一方、そんな周りの感想など知る由もない宮上は、自分の勝利を確信して内心ほくそ笑んでいた。

(勝った…!これでようやく静かに過ごせる…)

だが、そんな宮上の脳内に1つの疑問が浮かんだ。何に対する疑問なのか、何故浮かんできたのかは分からないが、とにかく『何か』が宮上の頭に引っかかっていた。

(…?これでいいだろ?俺は1人でいたい…はずなんだから)

宮上の頭がグルグルと回っている時、突然スマホが震え始めた。

「電話…?」

名前が書いてある場所には、『皐月』と表記されている。そういえば、いつぞやに半ば強制的に連絡先を交換させられたのを思い出した。

「考えたじゃねぇか…」

そう呟く宮上は、どこか楽しげだった。宮上はイヤホンを外し、会話に応じる。

「この至近距離で電話かよ?」

「ミヤミヤがイヤホン外さなかったから仕方なくだよ」

皐月は『狙い通り』とでも言いたげな表情で笑う。

「ミヤミヤ、放課後どっか行こ!」

「どっかって?」

「まだ決めてない!」

「それは決めとけよ」

依然として宮上の表情は変わらない。皐月は既に学校では勝ち目がないと判断した。

そして、数時間の休戦の後、放課後がやってきた。

「ミヤミヤ!カラオケ行こ!」

「えぇ…カラオケのどこで笑うんだよ」

「いーじゃん!賭けに乗ったからには付き合ってもらうよ!」

「もうそれお前が行きたいだけだろ」

2人は、学校から少し歩いたところにあるカラオケ店へとやってきた。

「…ふぅ、歌ったな…どうだった?ミヤミヤ!」

「…今までの人生でここまで返答に困る質問無かったぞ」

「えぇ!?下手だった?私」

「いや下手でも上手でもねぇぞ…マジで何とも言えねぇ…」

「じゃあミヤミヤ歌ってみてよ!」

「…まぁいいか」

宮上が歌ったのは、皐月の知らないテクノ曲だった。

「お、97点だ」

「…腹立つ」

「え?」

「ミヤミヤが歌上手いの腹立つ!私の方が上手いと思って誘ったのに!」

「動機クソすぎるだろ」

(…ちょっとかっこいいって思っちゃったじゃん)

「おい、もう時間だとよ」

「そっか、次はどこ行く?」

「まだ諦めねぇのかよ」

「当然!私は勝負には勝ちたいタイプだからね!」

(そりゃ負けたい奴なんていねぇだろうよ)

そして、2人が次にやってきたのはゲームセンターだった。

「ゲーセンねぇ…」

「ゲーセン嫌い?」

「いや全然」

2人が最初に向かったのは、クレーンゲームだった。

「こういうのって、取ったとしても持って帰るのが面倒だよな」

「まあ私らはリュックあるからいいじゃん」

こうして2人は、大きなスナック菓子の袋が景品となっているクレーンゲームに興じた。

10分ほど後…

「おい…そろそろ辞めとけよ」

「あと少し!あと少しで取れるから!」

見事にクレーンゲームの沼にハマった皐月がいた。

「ハァ……あっ」

宮上の反応からして、皐月はまたしても景品を取り逃がしたようだ。

「…ミヤミヤ、ちょっと待ってて」

皐月は一旦台から離れ、何かの機械の前に立った。少ししてから帰ってきた皐月の手には、大量の100円玉が握られていた。

「おいヤケを起こすな!別のやつやろうぜ!顔見知りが破産するのを見たくはねぇぞ!」

「じゃあアレやろう…」

2人が次に向かったのは、パンチングマシーンだった。

「パンチングマシーンって…お前パンチ打てるのか…」

「オラァ!!」

宮上は思わず絶句した。今までの全ての鬱憤を晴らすように打った皐月の拳は、歴代のその台のランキングを大きく塗り替えた。

「あースッキリした!次ミヤミヤ打ってみてよ!」

「い…いや、俺は、遠慮しとく…」

(怖えぇー!怒らせたらアレ打たれるってことかよ!)

珍しく焦る宮上をよそに、皐月は辺りを見回していた。

「もうそろそろ暗くなってくるなぁ…よし!最後はアレやろ!」

皐月が指差した先には、某太鼓のゲームがあった。

「ああ、アレなら…」

いつしか2人は、賭けのことも忘れて純粋に遊んでいた。皐月の提案で、スコアが低かった方が高かった方にジュースを奢るということになった。

結果は…

「クッソォォォォォォォォ!」

「お前マジかよ…」

宮上の圧勝だった。一応宮上の特技の内にゲームは入るが、音ゲーは比較的苦手である。そもそも今回の難易度は、一律して下から2番目の難易度だった。宮上がミス無しでクリアしたのに対し、皐月はノルマどころか叩けた数がミスの数より少なかった。

「フ…フフ…」

宮上は、皐月のあまりの下手さに思わず笑ってしまった。

「あ!今笑った!」

「やべ」

唐突に賭けのことを思い出した皐月により、宮上は負けを認めざるを得なくなった。

「賭けは私の勝ちだね!」

「それでいいよもう」

「あれ?思ったより素直に負けを認めるね」

「負けは負けだからな。それに…その…お前といるのは、悪い気はしない…からな」

その言葉を聞いた皐月は、笑みを浮かべてこう言った。

「ありがと!これから友達としてよろしくね!ミヤミヤ!」

「ああ、好きにしろ。あといい加減その呼び方やめろ」

どんな過去があろうが、どんな考えを持っていようが、宮上とて人間である。1人でいるのは好きだが、それはあくまでも自己防衛の為だ。自己防衛の必要がない人間が目の前に現れたのなら、宮上が他人を拒む理由はない。

この日のこの瞬間は、宮上の人生に色がついた瞬間だった。


キャラクタープロフィール①

名前 宮上 雅

年齢 17歳

好きなもの 1人の時間 ゲーム 音楽

嫌いなもの 虫 人間

作者コメント

人間不信になった理由を悩んだ結果、私と同じ過去を背負わされた不遇な男。別に不登校という訳ではなく、学力は高い方である。休日の過ごし方は部屋で一日中テクノを流しながらゲームをする。

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