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あの日の僕へ  作者: Isel
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第十一話 それが現実

何故か文化祭本番に来なかった宮上の身を案じて、皐月は宮上の家へ走った。

「鍵開いてる…!」

皐月の不安はより一層高まる。

「ミヤミヤ!生きてる!?」

そこは相場『大丈夫?』とかだと思う。それはさておき、部屋の奥から死にかけの声が聞こえて来る。

「おお…誰だ…」

「あ、生きてた」

そこには、デスクの前に座っている宮上の姿があった。

「何で来た?」

「文化祭休んだらそりゃ心配するよ!何で休んだの?」

「大体分かるだろ」

「…まぁ分かるけど」

「今めっちゃ心臓痛いんだよ」

「…大丈夫?私…帰った方が良いかな?」

「大丈夫じゃねぇけど帰る必要もねぇよ」

その言葉を聞いて、皐月の表情は少し明るくなる。

「ミヤミヤ…変わったね」

「はぁ?どこが?」

「…内緒。てか、寝てなくていいの?」

「ああ。寧ろ寝てる方が痛い」

そして、皐月は遂に今まで話すのを躊躇っていた事を宮上に言う。

「ミヤミヤ…本当に死んじゃうんだね」

「…それが?」

「悲しくないの?」

「今更何を悲しむんだよ。…お前のお陰で何だかんだ楽しかったしな」

「それは…よかったけど」

「どんな天才でもどんな善人でも、命があるなら絶対死ぬんだ。何も思う事なんてねぇ」

「…やっぱり、何かやるせないよ。どんな生き方をしても…結局死んじゃって終わりなんてさ」

「それが現実だ。どんな理屈をこねたところで、いつか向き合わなきゃいけねぇんだ」

一時、沈黙が部屋中に漂う。

「…それより、お前受験生だろ。勉強はどうした」

「うっ…痛いところ突いてくるじゃん」

「進路は決まってんだろ?」

「…うん。私、医者になろうかなって」

「へぇ…理由は?」

「ミヤミヤみたいな子の病気を治したいんだ…あ、ミヤミヤのは病名分からないんだっけ」

「良いじゃねぇか。俺が居なくなっても頑張れよ」

「うん!ミヤミヤが居なくなっても、私頑張るよ!」

「…俺まだ死なねぇんだけど」

そして、時は流れて12月。宮上はもうほとんど学校には来なくなった。皐月は毎日、学校帰りに宮上の家に寄っていた。その度に『勉強しろ』と言われるのが通例である。

「また鍵開いてる…防犯はどうなってんだろ…」

「お前こそまた来たのかよ…」

宮上は最近、毎日寝たきりだった。最初に見た時は流石の皐月も思うところがあったが、今となっては見慣れた光景だ。

「話せる程度には元気なんだね」

「すげぇ痛いけどな」

「…私さ、何個か聞いてみたかった事があるんだ」

「あ?」

「ミヤミヤは輪廻転生って信じてる?」

皐月の普段の様子からは想像出来ない質問に、宮上は少し驚く。

「…信じてねぇよ。死んだら脳も心臓も腐って、土に帰るだけだ」

「…そっか。じゃあ次…未来って変えられると思う?」

「さぁな。本人の努力次第だろ」

いつも通りの冷淡な言葉を聞いて、皐月は続けて質問する。

「ミヤミヤは…死にたいの?」

「はぁ?」

「なんか…自分の死に対して無関心だなって」

「…死にたい訳じゃねぇ。ただ…『生きる』って事に意味を見出せないだけだ。だから…どんな物事にも本気になれなかったのかもな」

その瞬間、皐月の中には新たな疑問が生まれた。

「じゃあ…ミヤミヤも生きる事に意味を見出せれば、今を本気で生きる気になれるの?」

その時、強い心臓の痛みが宮上を襲った。

「痛え……」

「大丈夫?」

「痛えだけだ…」

その質問の返答に困っていた宮上には、地味にありがたかった。

「それより……もう質問はいいのか?死ぬ前に聞きたい事は聞いとけよ」

「うん、じゃああと2つ。ミヤミヤ…楽しかった?」

それを聞いた宮上は、一瞬息を詰まらせる。

「……ああ、最高にな」

皐月の目は、心なしか潤んでいるように見えた。

「…最後。私の事…覚えててくれる?」

「ああ…どんな世界のどんな奴に生まれ変わっても、お前の事は忘れねぇよ。約束だ」

その声は、酷く優しげで温かい声だった。

「…ありがと」

「おう…そろそろ帰れ。もうすぐ受験だろ」

「うん。受験終わったらさ…」

「あ?」

「…受験終わったら、どっか行こ?」

再び、宮上は息を詰まらせる。

「…分かった。また明日な」

宮上は少し辛そうに立ち上がり、玄関で皐月を見送る。そして皐月の姿が見えなくなった時…


宮上は地面に倒れ込んだ。


「ああ…俺頑張ったな……」

皐月の前では元気そうにしていたが、実のところ彼の身体はとうに限界を迎えていた。余命だって『長くても1年』というだけだ。

「俺が死ぬところは見せねぇよ…死体に構う必要はねぇ…お前は前だけ見てやがれ…」

そして宮上は目を閉じた。『また明日』と『約束』という、2つの『呪い』を残してしまった事への大きな後悔と共に、彼は永遠の眠りについた。

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