枝豆の莢(さや)の薄皮を喰らう
昔から枝豆が好きで、よく食べている。
これを読んでいる人の中にも、枝豆が好きという人は多いんじゃないかと思う。
だが、どんなに枝豆が好きな人でも、枝豆の莢の薄皮まで食べる人はいないのではないだろうか。
……というわけで、ここでは枝豆の莢の薄皮の食べ方について伝授することにしよう。
まずは普通に枝豆を食べる。
莢から押し出すようにして枝豆を口の中に入れた後、通常は莢をポイと小皿か何かに投げ入れてしまうはずだ。
でも、ちょっと待った。
僕はここで枝豆の莢をそのまま捨てたりはしない。
じゃあどうするか。
まず、枝豆を食べ終えた後の莢の切れ目を左右に引っ張り、そのまま莢を2つに割いて切り離してしまう。
次に、切り離した莢の片方の根本の方(ヘタ側の方)の端っこを、左手の人差し指と親指でつまむようにして持つ。(向きとしては、莢が横長になる方向で、もともと豆が入っていた方を手前にする)
さらに、右手親指を左手親指に付けて爪を立て、爪と右手中指の腹で莢を挟むようにする。
そして右手親指の爪を立てたまま、親指を莢の端から端までスライドさせる。
こうすると、右手親指の先っぽに、薄い緑の膜のような薄皮がくっ付いてくるはずだ。
あとは親指の先にくっついた薄皮を舐め取るようにして口に入れる。食べ終わったら、もう片方の莢の薄皮も同じようにして食べる。
以上が枝豆の莢の薄皮の食べ方である。
自分で食べ方を紹介した直後に言うのも何だが、枝豆の莢の薄皮を食べるその様は、いかにも見苦しく、また貧乏臭い。
さらに言うと、恐ろしくお行儀が悪い。
これを公衆の面前で実行に移したが最後、
「どんだけひもじいんだ」
「お前、ふだん何食ってんだ」
「親の顔が見たい」
などと、白い目で見られること請け合いである。
だったら最初から枝豆の莢の薄皮なんて食べるなよ、と言われそうだが、そうする事のメリットは枚挙に暇がない。
第一に、枝豆を余す所なく食べ切ったという満足感が得られる。
「食べ物を粗末にせず、最後までキレイに食べる俺ってどうよ?」と、ついドヤ顔したくなる。
むしろ、「枝豆を莢の薄皮まで食べないヤツは馬鹿じゃないのか」と軽蔑の念すら湧いてくる。
第二に、枝豆の莢の薄皮には食物繊維が多く含まれているため、こうする事でしっかりと食物繊維が摂れる。
食物繊維には、便通を良くして腸を綺麗にする効果があると言われている。
もしもアナタが会社で不祥事を起こして切腹する際は、ぜひその綺麗な腸を上司に見せつけてあげて欲しい。
第三から先はちょっと思い浮かばないが、枝豆の莢の薄皮を食べることの素晴らしさは枚挙に暇がないのだから、ここではそれ以上のことは言わない。
これを読んでちょっとでも気になった人は、是非一度試してみては如何だろうか。
枝豆の莢の薄皮を食えば、どうなるものか。
危ぶむなかれ。
危ぶめば道は無し。
食い出せば、その一口が道となり、その一口が道となる。
迷わず食えよ、食えばわかるさ。
一、ニ、三、ダァーッ!
意外にも、薄皮の割には微かに枝豆っぽい味がするし、慣れてくると薄皮独特のチープな食感がやめられなくなってくる。
その上、しっかりと食物繊維が摂れ、可食部はすべて食べ切ったという満足感が得られるのだから、これをやらない手はない。
だが、繰り返しになるが、その満足感はお行儀の悪さと引き換えに得られる感覚である事を肝に銘じて欲しい。
え?
枝豆の莢の薄皮なんか食えるか、だって?
そんなふうに笑っていられるのも今のうちだぞ。
薄皮を笑う者は薄皮に泣くんだからな。
『旅先でお土産に薄皮まんじゅうを買おうとするけど、いつも売り切れ』の呪いがかかっても知らないぞ。
読んで頂き、ありがとうございました。