きゆうの、に
ジェネレーションギャップて割と5歳差ぐらいから感じる
私達はみんなが潰れた部屋の探索を始めた。生き返っているから当たり前といえば当たり前だが、血などの痕跡は一切なく部屋は元の状態に戻っていた。
「まりえさん。どの辺に床の文字とボタンありました?」
大串の質問に指をさし答える。大串はまず床を見て、その後にボタンがあったという方に目を向ける。
「ボタンは見当たりませんね。壁にあったんですよね?」
そうと答える。大串は拓雄にこの部屋の壁を調べるようお願いする。がってん承知の助とジェネレーションギャップを感じる返事をした拓雄はそのまま壁を調べ始める。大串と海月は床の文字と睨めっこしていた。海月が、あ!と声をだすと
「これ。いちまとじゃなくていちまてかもしれないです。」
大串が文字を眺め、納得した表情で、海月さんよく気付きましたね、素晴らしいですと賞賛する。私は2人の会話に入れず、不貞腐れる。
「これ、多分字を覚えたての子どもが書いてるんだと思うのです。5歳児ぐらいの。」
なるほど、道理で読みづらいと思った。私がとに見えてた文字はてと書いてあるらしい。改めて床の文字を見直すとそう読めなくもなかった。よく気付いたね!海月ちゃん!と素直に感心すると、SNSにこういう字体があったの思い出したのですと得意気に海月は答えた。
「いちまて…。まて。待て!かな!待つこと!」
「おそらくそうだと思います。とりあえず、まりえさん。文字を光らせてみて下さい。」
はい!と元気よく返事をして文字に近付き光らせる。しばらくじっと待つが拓雄が壁を調べる音以外に部屋は静かで異変はなかった。
「見た感じ変化はありませんね。透明な壁が消えたとは思いますが。」
部屋全体を見渡し大串が言う。部屋の壁を調べ終わった拓雄がボタンは無かった事を報告しに戻ってくる。そうですかと相槌をすると大串は木製のドアに向かって歩き出した。
「大串さん!危ないよ!」
と忠告をするがまりえさんは動かないで下さいと大串に警告される。大串は部屋の真ん中で一旦歩みを止め、手を自分の身体の前に出すとまた歩き出す。数十歩程度進むと手が突っ張るようにして立ち止まる。
「ここにも透明な壁がありますね。まりえさんはそのままでお願いします。」
そういうと辺りの探索を始めた。少し待つと大串は一点の床を見つめうろうろすると
「まりえさーん!何か変化ありますかー?!」
え?と辺りを見渡し何も変わってないけどと思っていると床の文字が目に入る。あれ?と注意深く見ると、いちまてからいちいけに変わり、徐々に光が消えていった。
「文字がいちいけに変わりました!そして光も消えました!」
「わかりました。まりえさん進んでみて下さい!」
大串が潰された光景が脳裏をよぎり、悪夢が蘇り、足がすくむ。震え出す私に
「大丈夫。僕を信じて。」
と大串は優しい声で呼び掛ける。自然と身体の震えが治り、私は大串の言葉を信じて一歩、二歩とゆっくり進んだ。部屋に異変はなく、前にいる大串の身体は元の形を保ったまま立っていた。
「なんとなくわかりました。おそらくですが文字の指示に従い、順番に透明な壁を解除できる仕組みになっていると思います。みなさん、僕のところに来て下さい。」
集合をかける大串の元へ私達は駆け寄った。見てくださいと床を指差す先に、にまてといつもの字体で薄らと光っていた。
「先程、僕が確認した透明な壁が無くなっていると思います。進んでみて下さい。」
言われるがまま私達はドアに向かって進む。さっき大串が立ち止まったであろう場所を私達は阻まれる事なく進めた。そのまま進み続けていると、いたっと先頭を歩いていた拓雄が壁に頭を打ったようにまた転ぶ。その姿を見ていた大串が
「どこかにまた文字があると思います。探してみて下さい。」
と私達に指示を出す。指示通りに探索を始め、さんまての文字を床に見つける。大串にその事報告し、海月に文字を光らせるよう、大串は再度指示を出し、海月もそれに従う。
「やはり。僕が移動出来るようになったのでそちらへ行きます。海月さんは動かないで下さい。」
一呼吸置いてから、大串は私達の方へゆっくり歩き出した。異変がないことを確認すると大串はそのまま駆け寄り、仕掛けの説明を始めた。
透明な壁は層のようになっており、文字の指示に従い順番に解除する仕掛け。文字には、番号+指示が書かれており、1人目が文字の指示に従うと、1つ目の壁が解除され、進めるようになればそこに2人目への指示がある。2人目が同様に指示に従うと、1人目は進むことができ、更に先へ進めるようになり、3人目への指示が新たにある。これの繰り返しとのこと。
「分かればとても簡単です。全員で協力すればドアまで行けます。」
説明を聞いた私達3人はおぉ!と大串に度々盛大な拍手を送る。私と大串と同様に海月、拓雄も行動し、拓雄が透明な壁を解除後に、3人でドアまで進めるようになった。一度拓雄のところまで戻り、文字を確認するが、しまてと薄ら光ったままだった。
「どこかに解除出来る何かあると思うので、手分けして探しましょう。」
拓雄除く3人で探索を開始するが、手掛かりはなかった。3人は必死になり、隈なく探し続ける。時計などはない為、感覚での話になるが1時間は経ったであろうタイミングで私は大串に罪悪感からかある提案をする。
「私を潰してみよ。」