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RE  作者: なまたらこ
3/5

きゆう

普段笑わない人が笑うとちょっと怖いよね

目を開けると一度だけ見覚えるのある天井が目の前に広がった。


「大串さん!!!みんな!!!!」


大きな声をあげベッドから飛び起きる。ほぼ同時に3人の叫び声が部屋に響き渡った。私はすぐ横のカーテンを開けた。ベッドの上で自分の身体が正常かどうかを手で弄っている大串が目に止まると、私の目からまた自然と涙が溢れ、考えるより先に私は彼に抱きついていた。


「よがっだぁ〜!いぎでだぁ〜!」


まりえさん?!と驚く大串を私は力いっぱい抱きしめ、生きている事を確認した。さっきのは夢だったんだ、本当に良かったと心から思った。ちょっと!待ってください!まりえさん!痛いです!いたた!いったー!と叫ぶ大串の声に心から安堵していると、力いっぱいに抵抗され、引き剥がされた。あぁ…と悲しい声を出す私に


「なんで僕達生きてるんですか?潰されましたよね?」


と怪訝そうな顔で大串は訊いた。


「え?」


唐突な質問に私は言葉が出なかった。あの出来事は夢じゃなかったのだろうか。思考がまとまらない私の返答を待たずに


「それとさっきのまりえさんの言い方だとまりえさんは潰されてないんですか?良かった、生きてたなんて、死んだ人を見た側の発言だと思います。」


大串は続けて私に質問する。頭が追いつかず返答に困っていると、カーテンが勢いよく開いた先に拓雄と海月が私を睨みつけている。


「姉ちゃん!てめぇがやったんかぁ?!」


拓雄の怒号が私に飛ぶ。動揺する私に拓雄はそのまま殴りかかろうと近付く。私は反射的に目を閉じる。


「待ってください!まりえさんはそんな人ではありません!落ち着いて!」


ゆっくり目を開けると、大串が私と拓雄の間に入り、拓雄を制止していた。


「まりえさん。何があったか説明して下さい。」


震えをなんとか落ち着かせ私は夢だと思った出来事を一呼吸置いてから、3人に説明した。





「姉ちゃん。疑って悪かったのぅ。」


話を聞いた拓雄は私に謝罪をした。拓雄の立場であれば、私も疑ってしまう事を伝え、謝罪を受け入れる。3人の話を聞くと、実際に身体を潰されたようだった。痛みも覚えており、潰れる瞬間はスローモーションの様に時間がゆっくりと流れるようだったという。潰れきった時に、意識が飛び、気がつくとここのベッドに寝ていたとのことだ。


「実際に今生きてるので、僕達が死んだという夢を全員で見ただけなのかもしれません。でも、今この部屋に閉じ込められてることや透明な壁のような非現実的な状況から考えると、おそらく一度僕達は死に、蘇ったんだと思います。寧ろ、そう仮定して行動していくべきだと僕は思いました。何があってもおかしくない世界だと考えて行動してかないと、今回はたまたま生き返りましたが、次は無いかもしれません。」


大串は淡々と話続けた。


「おそらくこれは脱出ゲームというよりデスゲームです。」


私達は改めて自分達が置かれている状況を理解しなくてはならなかった。理不尽で、不条理で、不公平で絶望的な状況を。

クソが、と舌打ちをする拓雄。顔を俯かせ震える海月。私も含め愕然と沈黙する姿をみて大串は一呼吸置いてから


「みんなで協力してここから出ましょう。大丈夫です。」


と私達を元気付けようと初めて笑顔を見せる。その姿に


「笑顔下手くそやで、兄ちゃん。」


と拓雄が茶々を入れる。私と海月がほんとだと笑うと大串は今いじるとこじゃないでしょ、と嫌な顔してぼやく。みんなの雰囲気が和むのを感じた。


「さっきのまりえさんの話で何点か気になる事があります。まりえさんの言っていた床にあった文字と、僕達が死んでから気づいた音がなるボタンと文字。床の文字は(いちまと)、ボタンには(おせ)と書いてあったんですね。」


「そう。床もボタンも字体はこの部屋のと一緒だった。汚い字。」

「なるほど。床の文字は1番のまりえさんが近付いた事で光り、透明な壁が消えた。おそらくこの部屋の文字と同様に進む為のヒント又は鍵になっていたのでしょう。いちまと…。いちは番号だとして、まとの意味は分かりませんが。」

「うん。私もそこが分かんなくて。」

「そうですよね。おそらくですがまりえさんが文字の場所から離れた為、壁が戻りそこにいた僕達が潰されたと考えられます。」

「だよね。やっぱり私の所為で…。」


私は自分が取った軽率な行動を悔やんだ。


「いえ。そういう事ではありません。まりえさんが悪いわけじゃない。悪いのはこの理不尽なゲームを僕達にやらせてるヤツです。それにまりえさんの立場なら僕もですし、誰でも同じ行動をとってます。」


大串は淡々と私を励ます。話を聞いてる拓雄と海月もうんうんと頷く。


「そう言ってくれると助かります。ありがとう。」


私は素直にみんなに感謝する。


「後はボタンですが、元々あったのなら気付きませんでした。おせと書いてあった…。押す事で何か作動すると考えた方が良さそうだが…。」


大串は独り言の様に呟く。


「ここで悩んでも仕方ありません。全員でもう一度あの部屋にいきませんか?」


不安な気持ちは拭いきれないままだが、先に進まなければここからは出られないことを全員が確信していた。


大串の号令にも似た提案に私達は従い、床の文字の前にそれぞれ並んだ。

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