プロローグ
某警察署取調室
「おい、毒島。おめぇがやったんだろうが。いい加減吐けや。」
取調室に重たい空気が流れる。取調べ行っている警官の声質は静かであるが誰が聞いても怒りに満ちているとわかる。威圧的で、向かい合っていればその場から逃げ出したくなる程に。
だが、向かい合ってた毒島という人物は飄々と
「ボクじゃないよ。でもね、ボクのおかげで死んだのさ。楽しかったよ。初めての経験だったさ。」
と人を不快にさせる気持ち悪い笑みを浮かべながら嬉々として答えた。その姿を見て、警官は俯いた。一瞬の沈黙の後、大きな音と同時に、警官は自分と毒島の間にある机などなかったかの様に勢いよく身を乗り出し胸ぐらを掴む。
「おめぇ、ふざけてんのか?」
彼が警官でなければおそらく毒島を今にでも殴って殺す勢いであった。
「おい、やめろ。」
後ろで傍観していた私は止めに入り、続けて毒島に尋問を始める。
「お前じゃないけど、お前のおかげでってどういう意味だ?」
少し間を置いて
「今まではねぇ、ボクが直接手を下してたのさ。無差別に選んでね。でもね、今回は違うの!無差別じゃなかったんだぁ!友達になるんだぁ。何度も。心の底から…仲良く。知らなかったぁ。あんな顔見せてくれるなら、もっと前からそうするべきだったぁ。でね!ボクが勝ったの!ボクの勝ちさ!」
不快だ。こいつの所作、言動全てに吐き気を催す。
支離滅裂だなと私はため息をついて尋問を続けた。
「それでお前は何に勝った?」
毒島はまとわりつく様な気持ち悪い笑みを浮かべたまま
「うんうん!聴きたい?!聴きたいよね!そうだよ!そうだよね!簡単な事さ、だって!だってね!ボクだけ勝ったから。」