業火の過去
今回はフェウの過去のお話をやりたいと思います
光明のルエラが倒され残された六柱官はシン達にとって因縁の相手である業火のフェウだけ
その本人も部下からルエラが倒されたという報告を聞いてこれからの事を考えていた
「・・・どうやら思った以上に追い詰められているみたいだな?業火のフェウ」
するとそんなフェウの前に一人のフードを纏った男が現れた
「・・・まさか三魔将の長である貴方が来るとは・・・
私も覚悟を決めなくてはいけないという事ですか・・・」
その男は教団の中でも最高幹部である三魔将の一人でありその中の長をしており男だった
そして彼が現れたという事はフェウにとって失敗は許されない事を暗示している
何故ならば彼の役目は裏切り者と失敗した者への粛清こそが主な役割だったからだ
「他の六柱官は全て奴らに倒された・・・残っているお前にはそれだけの期待をしているのもあるが
同時に・・・お前が情に流されて情報を流すのではないかというのを主は危惧している」
どうやら彼がきた理由の中にはフェウが負けた時の事だけではなく
その時に教団の情報を喋るのではないかという事を危惧してここに派遣されてきたようだ
「・・・私にとってはどちらも同じ事ですね・・・どちらにしても負ければ後はない・・・
ですが・・・正直な話をするのならば負ける可能性は大いにあり得ます・・・」
流石のフェウでもどうやら今度の決戦ではもしかしたらと言う可能性も十分にあり得ると考えているようだ
「・・・それはディパシーの時を超える能力があるからか?」
そして三魔将の長もどうしてフェウがそんな事を考えるのかその理由に心当たりがあった
それは他でもないディパシーが持っている唯一の能力である時を超える力だ
「真正面からの戦闘ならば私に分があると言っていいでしょう・・・ですがあの時を超える能力は
それまで優勢だった状況を一変させる事が出来る能力です・・・制限こそあるでしょうが
真剣勝負の時では一瞬させあれば決着に繋がるだけの一撃を当てる事が出きます・・・」
ディパシーの能力はどんな戦いであろうとも状況を一変させるだけの力を秘めている
それは個人での勝負でも同じであり一瞬さえあれば決着をつけられるのは間違いなかった
「・・・確かにあの能力は脅威と言わざる得ないだろうな・・・いいだろう・・・
奴の能力に関しては俺の方でどうにかしてやる・・・それならば勝てるのだろう?」
「はい・・・正面からの戦闘ならば誰にも負けません・・・!」
三魔将の長が部屋から去るとフェウは椅子に腰を下ろしながら昔の事を思い出していた
それは自分がこの国に来るよりも前の教団に入った時の事だった
フェウは地位を何もない農民の息子として生まれ裕福ではなかったが
それでも平和で幸せな生活を送っていたのだがある日を境にそれは一変してしまった
自身の故郷が戦場となり畑も家もそして家族すらもその時に失ってしまったのだ
孤立無援で生きている事になってしまった幼き日のフェウは次第に心を失った
そしていつも考えていたのはどうして自分がこんな事になってしまったのか
何で戦争というものを引き起こしてしまったのかという世界に対しての問いかけだった
とうとう食糧も尽きて自分の命が尽きようとしていた時に彼はその者と出会った
「・・・お前・・・いい目をしているな・・・!私と一緒に世界を変える気はないか?」
その者こそが後に教団という組織を立ち上げてその長となりフェウが忠誠を誓う事になる者だった
フェウはその者に命を救われそして彼の元で色んな事を学んでいった
六柱官の一人であったルエラも最初からその男の仲間であり彼にもさまざまな事を学んだ
と言っても誰かに自慢できる様なものではなく人を騙したり信じさせたりする方法
言うならば詐欺師としての極意を彼から学んだようなものだった
そして教団という組織が誕生してフェウはその中で六柱官のリーダーを任せられる事になった
「私が・・・ですか?束ねるという事ならば年長者であるルエラ殿の方がいいのでは?」
自分はまだ成人を迎えたばかりでありとてもリーダーを任せられるような器ではないとフェうは思っていた
しかしこの時には既にルエラは法国メソンゲに潜入しておりとてもそんな暇はなかったのだ
「ルエラからの推薦も受けているし・・・それに六柱官の長に必要なのは人を纏める力ではなく
どんな人間も薙ぎ倒して頂点に立つ事が出来るだけの強さだ・・・!」
この時点で既にフェウは教団の中でも五本の指に入るだけの強さを持っており
だからこそ教団の主もフェウにならば六柱官のリーダーを任せられると考えていた
「・・・分かりました・・・六柱官の長としての役目・・・しかと受け取りました」
これによりフェウは教団の中で三魔将と同じだけの地位に並び教団の一角を担う存在になった
そして六柱官の長としての役目を果たしながら数日を過ごし彼はアルブレへと潜入する事になった
(アルブレ・・・主の足がかりとなる国であり俺が乗っ取る国か・・・)
この時からフェウはアルブレを乗っ取る命令を受けており今回の潜入もその為だった
(その為にはまず城の中でも自由に動け回れるだけの地位が必要になるな)
長い計画になる事はフェウの中でも予感しており下手をすれば十年以上は掛かると予想していた
その為にまずフェウは城に入る為の手っ取り早い方法として兵士の入団試験を受ける事にした
教団で鍛えられてきた彼はもちろん主席で合格し兵士としてアルブレに潜入する事が出来た
しかも主席として合格したので将来を期待され王都であるセヤギで働く事になった
(滑り出しとしては上出来と言えるだろうが・・・まだ油断はしていられないな)
そこからフェウは教団との連絡を最小限にしてバレないように優等生を演じてきた
まさしくルエラが教えてくれた詐欺師としての教えがここで役に立ったと言えるだろう
しかしそこでフェウにとっては一つだけ計算外と言えるだけの出来事もあった
それは他でもない自分にとって唯一の友と言えるべき存在であるナオマサの出現だった
「クッソ・・・!またお前に負けた・・・何でそんだけ強いんだよ・・・!」
この時のナオマサはまるでシンのように誰にでも親しく礼儀などない青年だった
そして事あるごとにフェウに対して勝負を挑んでは何度も負けていた
「まぁ戦場で育ったというのもあるだろうが・・・一番の理由は日々の鍛錬だろうな」
それを聞くとナオマサは面倒そうな顔をしていたが直接、対決しているフェウだけは分かっていた
彼が自分に負ける度にそれ以上の努力をして挑んできているという事を
(・・・このまま行けばいずれは俺に追いつく日も来るだろうな・・・)
そしてその努力は必ず報われていずれは自分と本当の意味で互角に戦える日が来るとフェウは思っていたが
(・・・どうして俺はそんな事を嬉しく思っているのだ?
それは俺にとって障害となりえる重要な事だというのに・・・)
国を乗っ取ろうと考えているとフェウからしてみればナオマサの存在は邪魔以外の何でもない
それにも関わらずここで仕留めてしまおうという気持ちが全くと言っていいほど起きないのだ
(・・・まさか・・・この俺が絆されているとでもいうのか?・・・この・・・俺が・・・?)
受け入れ難い現実にフェウはそんな事はないと自分に言い聞かせながらナオマサと接していた
それから数年してフェウの予想通りナオマサは自分と渡り合えるだけの実力を手に入れており
そしてその努力の甲斐もあったのか二人は自分の小隊を持てる様になった
「まさか俺達が隊長か・・・なんか想像できないしどうすればいいのか分からないな」
ナオマサはこれまでフェウに追いつこうとした考えておらず人を率いる立場となってしまうと
一変してどうすればいいのか分からないと完全に困ったような表情を浮かべていた
「別にちゃんとした指示を出して兵士を操るのがいい隊長というわけじゃない
時には前線に立って味方を引っ張る・・・お前はそういう隊長の方が向いてるんじゃないか?」
しかしフェウはそれに対して何の心配も抱いている様子はなかった
何故ならば今のナオマサならば兵士を操るのではなく引っ張るだけの力を持っているからだ
その事をナオマサに告げると本人はまるで不満という様な顔をしてフェウを睨んでいた
「何だよ・・・まるで俺が何も考えてない脳筋みたいじゃないか・・・」
それに対してフェウはその通りだと告げると
もちろんナオマサは怒りいつものように二人は勝負する事になった
「そういえば忘れていたが・・・隊長となったんだからその口調もどうにかしろよ?」
その勝負の中でフェウはナオマサに今の様な乱暴な口調は抑えるように告げる
「そんな簡単に言われてもな〜・・・てかお前だって俺といる時は変わらねぇじゃねぇか!」
しかしそんな簡単に変えられるようなものではなくフェウも自分と同じく口調ではないかとツッこむ
「俺はお前と違ってちゃんと口調を変える事は出来るからな?
いわゆる猫を被るというやつだ・・・お前には出来ない芸当だったか?」
まるで挑発するようにフェウはそう告げるとナオマサもそれを察したようだ
「おもしれぇ・・・!だったらお前以上に正しい礼儀作法を身につけてあっと言わせてやるよ!!」
ナオマサはその挑発にのりいずれは自分もフェウ以上の礼儀作法を身につけてやると宣言した
「そしてその前に・・・まずはお前から一本取ってぎゃふんと言わせてやる!!」
その言葉にフェウは望むところだという笑みを浮かべながらナオマサとの刃を交えていく
そんなフェウに取っては本当に幸せとも言えるような時間が何年も続いていたのだが
再び彼の人生はとある日を境にその運命が大きく変わってしまう事になるのだった
「吉報だぁぁぁあぁ!!とうとう王のお世継ぎが生まれたぞぉぉおぉおぉ!!」
ナオマサとの交流を得ていつの間にか居心地の良さを感じていたフェウ
しかし王の世継ぎが生まれた事により再び彼は自分の運命を思い出してしまう・・・