ディパシーの力
いよいよディパシーの能力が判明します!
突如として現れた巨大な魔物に対して
シンはディパシーを呼び出して戦いながら後ろに引いていく
「いいか?!さすがのディパシーでも目の前にいる魔物を倒すのは難しい!
おまけに騒ぎを聞きつけて他の魔物も迫ってくるはずだ!何としても後退させろ!」
ナオマサの言う通りいたるところから何がか迫ってきている音がしているので
おそらくはすぐでにも他の魔物がやってくるだろう
しかしこの前が初戦闘だったシンにそこまでの事を出来るわけもなく
おまけに目の前の魔物が予想以上の強さで倒すだけではなく後退させるのすら難しかった
「クッソ!やっぱり土とか掘れるだけあって爪とかが硬い・・・!」
もらった新しい武器で攻撃をしているのだがやはり硬い爪で防御されてしまい
柔らかそうな体に対してダメージを与える事は出来なかった
(おまけに後ろに二人がいるんじゃ距離をとる事も出来ない・・・!)
そしてもう一つの問題はディパシーの特徴であるスピードを生かせない事だった
後ろにララ達がいる状況でディパシーの超スピードを使えば
間違いなく巻き添えになってしまうだろう
もしも巻き添えにならなかったとしても一時的に距離をとる事になってしまうので
それだと今度はララ達が狙われる事になるだろう
だからこそ離れて攻撃するわけにはいかず近距離で戦うしかないのだ
「くっ!このままじゃラチがあかない!こうなったら!!」
このままではダメだと判断したシンは魔物に取り付いてそのまま一気に押し込んでいく
もちろんダメージを与えられるわけでもないがそれでも距離をとる事は出来た
「よし!これだけ離れれば!二人とも急いで逃げてくれ!!」
シンは離れていた二人に急いでここから逃げるように指示を出す
それを聞いてナオマサは馬車を動かしてその場を後にし
シンはそれが見えなくなったのを確認してから魔物から離れてその場を離脱した
「あれが禁断の森に住まう魔物の主か・・・勝てるのか?あれに」
ようやくあの魔物が見えなくなった場所まで来たシン達はこれからどうするかを聞く
「まさかここまで早くあの魔物に遭遇してしまうとはな・・・
しかもあの様子だと完全に目をつけられてしまった・・・
これではこの森を無事に抜けるのはかなり困難になった」
ナオマサの予想では最低でも森を抜ける時に見つかる可能性があると考えていたが
まさかここまで早い襲撃は全く予想しておらず正直どうすればいいのか悩んでいた
(方法としてはやはりあの魔物を倒すのが一番いいんだが・・・
今の小僧にそれを任せるのは無謀か・・・残る選択肢は急いで森を抜ける事だな・・・)
しかしこのもう一つの作戦にも問題があった
それは先ほどの逃走で森の奥まで逃げてきてしまいここがどこなのか全く分からないのだ
ここから急いで森を抜けるなどどう考えても無理だろう
そうなってくるとやはり可能性があるのはあの魔物を倒す事だけだった
(となると・・・やはり小僧に頑張ってもらうしかないか・・・)
ナオマサがシンに頑張ってあの魔物の主を倒してもらおうと考えている時
シンはディパシーを見つめながら何かを考えている様子だった
「・・・先ほどの戦いで何かあったのですか?」
そこへララが現れてシンに何を考えているのか尋ねる
「う〜ん・・・何かこいつの性能を全部使ってる気がしなくて・・・
いや俺が下手だから性能を使い切れてないのは分かってるんだけど
こいつは何か・・・俺がまだ使ってない何かがあるんじゃないかと思って・・・」
シンはディパシーにはまだ自分の知らない力があるのではないかと考えていた
いや・・・感じていたというの方が正しいだろう
そしてそれはおそらくディパシーに直接乗っているシンにしか分からない事だった
(もしもこいつの隠された能力を使えたら・・・あいつに勝てるかもしれない・・・!)
シンはあの魔物に勝つ為にはその隠されている力を使うしかないと考えていた
するとララがそんなシンの不安そうな手を掴んでこう言った
「大丈夫です・・・あなたならきっと出来ます・・・!」
「そっそうかな?!姫様がそう言ってくれるならそうかも!!」
あまりに眩しい笑顔でシンは顔が赤くなってしまい急いで顔を逸らした
「あの・・・その姫様というのはやめませんか?これからララとお呼びください」
しかしララはそんな事には気付かずむしろシンの姫様という言葉の方が気になっていた
「いやいや!さすがに姫様を呼び捨てには出来ないですよ?!」
それはさすがに出来ないとシンは告げるがララは悲しそうな顔を浮かべて
「・・・わかった・・・これからはララって呼ぶよ・・・」
その顔に折れてしまったシンはこれからララを呼び捨てにする事にしたのだった
そんな事をやっている時
密かにディパシーに組み込まれている魔法石が光っているのに誰も気がつかなかった
「・・・とにかくもうすぐ夕方です・・・夜になれば魔物の動きが活発になりますので
移動して襲撃が来ても大丈夫な場所を探すといたしましょう」
ナオマサは二人に対して魔物の襲撃を防げそうな場所を探す事を提案する
二人は頷いて森を歩いていくと洞窟のようなものを発見した
しかもそこには前に人がいたであろう形跡があり
おそらくはナオマサ達がこの森に来た時のものだろう
「近くに血痕がないという事は魔物が来ないという事か・・・
よし!ここに拠点を作って明日、あの魔物を倒しに向かおう」
ナオマサはここで一夜を過ごす事に決めそして明日、例の魔物を倒す事にした
「そうだな・・・とりあえず俺は休ませてもらうわ・・・」
ここでシンは先ほどの巨人を使った影響なのか疲労が来ており
かなり早かったがそのまま眠ってしまう事にした
もちろんそれはナオマサもわかっているので素直に寝かせる事にした
「・・・ナオマサ・・・あなたはあの巨人について何か知っている事はないのですか?」
するとそこへララが現れて先ほどシンが離していたディパシーの能力について聞く
「・・・残念ですがそれを聞いている余裕はなかったもので・・・」
「そう・・・ですか・・・」
翌朝になり全快になったシンはディパシーに乗り先日の魔物が来るのを待っていた
(今度こそあいつを倒さないと・・・この森を出る為に・・・!)
そんな風に覚悟を固めているとだんだんと地鳴りがしてきて目の前に魔物が現れた
「現れたか・・・!今日は昨日のリベンジだ!全力でいくぞ!!」
この前と違いシンはディパシーのスピードを生かして攻撃を繰り出していく
やはり正面からの攻撃は爪で防がれてしまうがそれ以外の場所にはダメージを与えられていた
(だけどやっぱり正面にちゃんとしたダメージを与えないと致命傷にならない・・・!)
しかし背中や側面に攻撃を当てたところで致命傷にならず
どうにかして正面に攻撃しなければならないと思っていた時だった
「っ?!また地面に潜られた!!」
このままだと危険だと判断したのか魔物は再び地面に潜り込まれてしまう
どこから出てくるのか分からない状態の中で周りを見ていると
下で震動しているので近くにいる事だけは分かる
そしてシンは嫌な予感がしてララ達のいる方を見てみるとその目の前に魔物が現れた
「しまった!あいつの狙いは二人か!!」
急いでララ達のところへ向かうおうとするがディパシーのスピードでも間に合わない
そして魔物の腕がララ達に振り下ろされようとした瞬間にディパシーが輝き出した
『・・・どうやらお主はまだこの巨人の力を知らぬようだな・・・
ならば我が代わりに見せてやろう・・・真の力を・・・!』
シンの頭の中に声が響くと同時に声が聞こえてきて
それが終えると光が晴れていき目の前にはまさしく地面に潜ろうとする魔物の姿があった
「えっ?!これは・・・時間が巻き戻ってる・・・?!」
それは間違いなく時間が巻き戻っている事を証明しており
そしてシンはここからどうなるかも理解していた
「っ!二人が危ない!!」
シンは凄まじい速度でララ達の元へと向かっていき出てくる魔物に備える
「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!」
そして何も知らずに地面から飛び出てきた魔物は頭を剣で貫かれて絶命した
「ハァ・・・ハァ・・・何とか・・・倒し・・・た・・・」
魔物を倒した瞬間にまるで全てのエネルギーを使い果たしたかの如く
シンは意識を失って出てきてしまいディパシーもその魔法陣で消えてしまった
「今のは・・・もしかして姫様と同じくこいつも予知を?」
ナオマサはそんなシンを急いで回収し馬車に乗せながら先ほどの事について考える
「いえ・・・私と同じならばそもそも地面の下に逃がしたりはしないはずです・・・
おそらく・・・かの巨人・・・ディパシーの力で過去へと跳んだのです・・・」
しかし同じように時間に干渉する力を持っていたララだからこそ気づいていた
彼が使った能力は自分のように未来を見るのではなく過去に戻る能力だと
そしておそらくはそれこそがシンの言っていたディパシーの隠されし力だという事も・・・
(・・・あなたも・・・私と同じ業を背負ってしまったのですね・・・)
ララは自分と同じような力を持ってしまったシンの頭を撫でながら
その事を深く悲しみながら三人は森を抜けていくのだった
ディパシーが真の力を使って事で森を脱した三人
しかし彼らが砂漠に向かうのはまだ先になりそうだった