深い闇
今回は教団がメソンゲで何をしているのかそれがわかります
二体に分裂した魔物にシンとカライは苦戦を強いられていた
というのも先ほどまで使っていた自己加速の魔法は使わず別の魔法で戦い始めたのだ
シンと戦っている魔物の方は自分の毛を硬質化させそれを飛ばして攻撃してきており
カライと戦っている魔物の方は尻尾が剣のように鋭くなりそれを鞭のように攻撃していた
「クッソ!近接戦が不利だって分かった瞬間に魔法を切り替えてきやがって!
魔物の癖に随分と頭を使った戦い方をするじゃねぇか!!」
お互いに苦手としている遠距離からの攻撃に苦戦しているがそれだけではなかった
遠距離の攻撃でもシンと戦っている魔物はそもそもディパシーを動かせないようにさせ
カライの方は攻撃を当てても当てられないようにするなどそれぞれの弱点を突いた攻撃をしていた
ディパシーは動きこそ早いが防御力はそこまで高くはなく
先ほどから飛ばされる針の攻撃を受けながら動く事が出来ず
トゥネの方も攻撃を受けてすぐに反撃は出来るが攻撃を躱されて再び攻撃を受けてしまうのだ
(それにこいつら・・・この前の魔物と違って時間で消滅しない・・・!!)
そして二人にとって最も予想外だったは複数の魔法が使える魔物なのに消滅しないという事だった
前に装甲列車で出会った魔物は自分の能力に耐え切れずたった数時間で灰になってしまったが
目の前にいる魔物は戦っていても全く命を消費している感じはしなかった
つまり時間制限による消滅は彼らにはなく自力で倒すしかないのだ
(問題はこの遠距離攻撃と・・・さっきの復活する魔法・・・!)
しかしここで問題になってくるのは今、苦しめられている遠距離攻撃もそうなのだが
それと同じくらいに厄介なのは分裂して復活する先ほどの魔法だった
分裂しても実力は同じなのでこれ以上は流石に分裂させてしまうわけにはいかない
そう考えているからこそシンはどうやって分裂させずに倒すかを必死に考えていた
(考えとしては魔力切れを狙って倒すしかないが・・・
光合成で魔力を回復するあいつには昼の間にそんなものはない・・・!)
魔法が使えなくなれば話は別なのだが魔物は光合成で魔力を回復しており魔力切れは期待出来なかった
(残るは・・・魔力の流れを断つしかない・・・!)
「その為にはまず・・・この状況を変える・・・!」
そう言ってシンは何を思ったのか魔物に背中を向けてトゥネに向かって走り出したのだ
流石のカライもそれには驚いて一体何をするつもりなのだと思ったが
ディパシーが飛び上がった瞬間にその狙いに気がついた
「うぉぉぉおぉぉ!!」
狙いに気がついたカライはディパシーの下を抜けて先ほどシンが戦っていた魔物に突撃していく
そう・・・二人は自分達の戦っている相手が不利に働く相手ならば相手を変えればいいと考えたのだ
その狙い通りにシンは鞭のようにしなる尻尾を簡単に躱して逆に切り飛ばし
カライも鋼鉄の針をものともしないで突っ込んでいき一撃を当て吹き飛ばした
「どんなもんだ!・・・とはいえここからどうするんだ?」
なんとか形成的には五分五分に戻せたのだがやはり問題は倒す方法だった
カライも今の攻撃で分かったのだが今、戦っている魔物には魔力の流れが複数あるのだ
おそらくは複数の魔法を使う影響なのだろうが
これではどれを断ち切れば復活を阻止できるのか分からない
全ての流れを断ち切るにしても失敗する度に分裂して復活するのは危険すぎる
どうにか一発で復活の魔法へとつながる魔力の糸を断ち切りたいとシンは思っていると
「そうか・・・!一回だけそのチャンスがある・・・!!」
その糸を見つける為の方法が一つだけある事に気がついた
しかしそれはあまりにも危険な方法であり失敗する確率が高く
しかも失敗すれば確実に相手の反撃を受けるので危険はかなり高い
(だけど・・・ディパシーの能力を使えば・・・必ず成功する・・・!)
だがそれはあくまでもまともにその作戦を実行した場合の確率であり
ディパシーの時を超える能力があれば作戦は必ず成功する
そう考えたからこそシンはカライに今から自分が何をするのかを話した
「マジかよ・・・!確かにそれならあいつらを倒せるが・・・やるしかないか・・・!」
カライも覚悟を決めたようで危険だと分かっていながらもその作戦を実行する事にした
「それじゃあ・・・行くぞ!!」
シンは先ほどのように魔物に向かって突っ込んでいく
魔物の攻撃を華麗に躱しながら突っ込んでいくと魔物の尻尾を掴んでそのまま投げ飛ばした
そしてカライの方も自分の前にいる魔物の後ろに回り込んで
シンが投げ飛ばした魔物に向かって目の前にいる魔物をかっ飛ばした
空中で魔物同士がぶつかるとカライはそこに向かって飛び上がり二体同時に切り裂いた
もちろんまだ魔力の糸は切れていないので
二体の魔物は復活しようとするがそれこそがシン達の狙いだった
(魔物が復活しようとすれば必ず魔力の流れが変わるはず・・・その糸を見極めれば・・・!)
普通に戦闘しても魔力の流れが分からないと悟ったシン達はその魔力の流れが変わる瞬間
つまりは復活する瞬間にそれを見極めればいいとあえて二体を攻撃したのだ
結果は予想通り復活する瞬間は魔力の流れが変わり復活する使われていなかった魔力の糸が動き出した
その瞬間をシンは見逃さなかったが彼らの復活する方が早く攻撃する事は出来なかった
しかし・・・シンにとっては場所さえ分かればこの攻撃には十分に意味があった
「これでお前の弱点は分かった・・・!跳べ!ディパシー!!」
シンは時を超えて二体の魔物がカライによって切り裂かれる瞬間まで戻り
そしてカライが二体の魔物を切り裂いた瞬間に復活の魔法を使う魔力の糸を断ち切った
復活の魔法が使えなくなった魔物はそのまま息絶えて灰となり消滅した
「ハァ・・・ハァ・・・なんとか倒せたな・・・」
流石の二人も災厄の魔獣と言われていたほどの魔物を相手にして疲れたようであり
もはや村まで戻る体力すら残っておらずその場で座り込んでしまう
そこへ二人が帰ってこなくて心配したのかララ達が走って向かってきていた
「どうやら魔物は無事に倒したみたいだな・・・だがその様子からしてかなり苦戦したみたいだな」
ナオマサの言葉に二人は頷いて返事をするしかなく味方が来て安心したのか
シンに至っては先ほど時を超えた影響もありそのまま眠るように気絶してしまった
ララは急いでシンを抱えてナオマサ達と一緒に村へと戻っていった
「まさか本当にあの災厄と呼ばれていた魔獣を倒すなんて・・・!皆様はこの村の英雄です!」
帰ってきたシン達に対してアカリは災厄の魔獣を倒した二人を英雄として讃えていた
しかし当の本人達は疲れていてもはやそれどころではなかった
アカリは急いで休憩場所を用意して薬草を調合した傷薬などを二人に飲ませた
「これで明日になれば元気になっていると思います!私はみんなにこの事を知らせてきますね!」
二人の治療を終えるとアカリはみんなにもう心配はない事を知らせに向かった
ララ達もそれについて行き病室にはナオマサとクロトが残った
というのも先ほどの魔物が一体どういう魔物だったのかをカライから聞く為だ
それはカライも分かっておりベッドに横になりながら二人に魔物についてを話した
「複数の魔法を使う魔物・・・確かにあの装甲列車であった魔物と同じ・・・
という事は前にあったというその事件も教団が起こしたものだったという事か・・・」
人々に信じてもらう為にその人達を襲っていたというのはあまりにも許せない非人道的な事であり
そのような手段をとっていた教団に対して二人は怒りを露わにする
「だが装甲列車にいた魔物とは違う部分もあった・・・あいつには時間制限がなかった・・・
複数の魔法を使ってはいたがその影響はなかったみたいだしな・・・」
その話を聞いてナオマサはおかしいと思っていた
何故ならば装甲列車にいた魔物よりも災厄と呼ばれていた魔物の方が前から存在しているからだ
あの魔物が後から作られた存在ならばまだしも前からいる存在ならばその欠点もあるはずなのだ
それがなかったという事はその魔物にしかない弱点があったという事
ナオマサはその弱点が一体なんなのだろうと思っていると
実際に戦っていたカライはその違和感に気がついていた
「そういえばあの魔物・・・どうして魔法を同時に発動しなかったんだ・・・?」
その違和感とは装甲列車の魔物と違い魔法を同時に使用していなかったという事だった
「なるほどな・・・つまり彼らが最初に作り上げた混合魔物は魔法を複数使えるようにするだけで
魔法を同時に使えるわけではなかった・・・その実験として作り上げたのが装甲列車の魔物か」
ナオマサはようやく彼らの実験している工程を理解し先ほどの魔物に無いものを知った
・・・しかし同時にそれは彼らにとって最も考えたくない答えに辿り着く事にもなった・・・
「待てよそれじゃあ・・・
あいつらはまたあの複数の魔法が使える魔物を作り出してるっていうのか・・・?!
しかも欠点だった寿命って壁を乗り越える最悪の怪物を・・・!!」
一方その頃、ウヴィアにある大聖堂の地下ではシン達に魔物が討たれたという知らせが届いていた
「ほう?流石に生身であの実験台を倒しただけはあるのう・・・
あれは初期に実験した魔物の中で一番の傑作じゃったなのに・・・
まぁそれでも実験台に変わりはないがの」
老人はまるで興味がなくなった物を捨てるかのように死んだ魔物の事をどうでもいい物として話していた
「しかし弱ったのう・・・どうも複数の魔法を使うのに体が耐え切れなくて消滅してしまう・・・
やはり魔物以外にも別の素材が必要になってくるみたいだのう・・・」
老人は料理でも作るかのように新しい怪物を生み出す事に悩んでいると別の知らせが届いた
それを見た瞬間に老人は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる
「そうかそうか・・・!やっと新しい材料が届いたか・・・!
ならその新しい材料を使ってみるかのう・・・!」
「人間という名の材料を・・・!」
いよいよ実験を最終段階に進めようとする最後の六柱官
そしてシン達に新たな脅威が迫っていた