最初の難関
今回は軽い戦闘があるだけです
新しい武器と盗賊を退治したお金で食料を買った一行は今度こそ北へと向かう
「これだけの食料があればオアシスまでは持ちそうですが・・・
問題はこの先にある砦の検問ですね・・・」
ララの話ではこの先には戦争になった時に最後の砦となる場所があるらしい
そしてそこでは厳重な検問があるようでそこを抜けられるかどうかが問題になってくるそうだ
「どうしてだ?そこの砦は騎士団長とは何の関わりもないんだろ?」
しかし先ほどシンが聞いた話ではその砦は専属の騎士団が守っているらしく
そして騎士団長といえどもその騎士団への命令権はないそうだ
「確かに騎士団長はその砦に対して命令する事は出来ない・・・
だが報告する義務はあるからな・・・そうなればこちらの居場所がバレる」
そう・・・一番の問題となるのは報告されて自分達の居場所がバレるという事だった
いくら命令権がないといえども報告をしないというわけではなく
万が一にでもララがその砦を通ったとなれば報告されるのは間違いないだろう
「それじゃあどうするんだよ?そんな厳しい検問じゃ素性を隠すのなんて無理だろ?
ララが直接その砦の騎士団に頼み込んで報告するのをやめてもらうか?」
シンはそんな砦をどうやって超えるつもりなのか尋ねる
確かに現状の策としては砦の騎士団をララが自ら説得する方法があるが
「いや・・・確かに砦の騎士団は騎士団長とは縁がないがスパイがいないという保証もない」
ナオマサの言う通りいくら騎士団長と無縁とは言っても全員がそうだという保証はない
もしも中にスパイが紛れ込んでいれば間違いなく居場所をバラされてしまう
「残された選択肢はたった一つ・・・砦を通らないで抜けるという事だ」
そしてナオマサが提案したもう一つの案はなんと砦を通らずに真横を通るという事だ
「真横って・・・それが出来ないように作られたのが砦じゃないのかよ?」
確かにシンの言う通りそんな簡単に通れないように砦が作られたはず
それにも関わらず砦の真横を通るなどという芸当が出来るわけがなかった
「確かに普通は無理だろう・・・だからこそここを通る・・・この禁断の森をな・・・」
「禁断の森・・・確かお爺様の時代に強力な魔物が出て立ち入り禁止になった森ですね?」
そんな危険な場所をわざわざ通る必要があるのかとシンは思っていたが
先ほどまでの話を聞いていればそれだけの価値がある森なのだろう
「確かに魔物に会う危険性はありますが基本的に魔物は夜行性なので
昼間に通ってしまえば遭遇する確率はかなり減らせます・・・
残念ですがこれ以外に砦の横を抜ける方法がありません」
ナオマサは最新の注意を払った上でこの危険なルートを通る事を説明する
「・・・わかりました・・・この森を抜けてオアシスを目指しましょう・・・!」
ララは覚悟を決めてその森を抜ける事を決意し一行は砦を大きく迂回して森へと向かった
「ここが禁断の森って言われてる場所か・・・前の森に比べたらまるで樹海だな・・・」
シンが森について一番最初に驚いていたのはその大きさだった
目の前の木々でさえも巨人を簡単に隠せるほど大きくそれがどこまでも広がっていた
「ここから先はいつ魔物が出てもおかしくない・・・慎重に行くぞ」
三人はいつ魔物が出てもいいように警戒しながら森を中を進んで行く
「・・・今更に聞くのもなんだけどさ・・・本当に道わかってるんだよね?」
ここでシンが疑問に思ったのは馬車を先導するナオマサが本当に道を知っているのかどうかだった
もちろんこの森を提案したのは彼なのでそこはちゃんと知ってるだろうと思っていると
「悪いがここにきたのは十年以上も前だからな・・・うろ覚えだ」
まさかのうろ覚えだったようで本当にこの森を抜けられるのか不安になってきた
「・・・てか・・・魔物がいるって割には気配が少ないな・・・
もしかしてどこかに巨大な巣があるのか?」
しばらく歩いているとシンはこの森が封鎖された理由である魔物が全くいないと思っていた
そしてその理由が魔物の巣があり今はそこで体を休めている可能性もあると考える
「おそらくはその考えで間違いないだろうな
私達が調査した時にも魔物が森から出た形跡はなかった」
どうやらナオマサ達がここを調べた時にはまだ魔物はいたらしく同じ考えに至ったようだ
「ですが・・・どうしてそんな魔物が何年も放置されているのですか?」
ここでララが疑問に思ったのはそんな危険な魔物をどうして放置しているのかと言う事だった
確かに彼女の言う通りそこまで危険だと言われているのならば国が対処するのが当たり前だろう
しかし国は十年以上も存在するその魔物を討伐しようとはしなかった
その理由はなぜなのだろうと思っているとナオマサがそれを説明してくれた
「早い話が当時はまだ今のように各国が有効的ではなかったからですね・・・
いつ襲ってくるか分からないのは魔物も人間も一緒で
それならば行動範囲が限られている魔物よりも人間の対処を優先したのです
おまけにその魔物が他国から脅威に思われて攻めてこないようにするのならば
そちらの方が利益としては大きかったですしね・・・」
どうやら魔物が出てきたのはちょうど戦争をしていた時代だったようで
魔物の脅威よりも他国からの脅威の方が怖くそちらに戦力を回していたそうだ
おまけにその魔物が敵国から攻めさせない要因になっていたのだから討伐など出来るわけもない
「・・・皮肉な話ですね・・・人類を脅かしていた魔物が国を守るですか・・・」
その話を聞いてララは皮肉な話だと顔を歪めていた
魔物は本来ならば人を襲うからこそ恐れられている怪物なのである
それがその時に限っては人から守るための道具として利用されていたのだ
これを皮肉と言わずしてなんといえばいいのだろうか
「私もまだ子供の頃の話だったので詳しくは知りませんが実際に効果はあったそうです・・・
ですが戦争が終わった後も軍力が落ちてしまい余計な犠牲を出すわけにもいかず
残念ではありますが討伐は延期となってしまったのです・・・」
そして戦争が終わった後も国は他国からの侵攻に対抗する為、軍力を落とすわけにもいかず
こうして今日という日まで討伐隊は出されぬままにいると言うわけだった
「・・・ちょっと待ってくれよ?確かナオマサは前にここへ来たって言ったよな?
それってその魔物を倒す為に来たわけじゃなかったのか?」
魔物を倒す為に来たのではないのならどうして森に来たのかとシンが疑問に思うと
「ああ・・・あの時は魔物を倒すのではなく調査の為に来ていた
もしかしたら寿命で死んでいるかもしれないという淡い期待を込めてな・・・」
どうやらナオマサの反応を見るからにその期待は裏切られたようだ
(まぁ魔物の寿命がどれくらいなんて明言されてないからな・・・
数年で命がなくなる個体もあれば
数百年は生きているんじゃないかって言われている魔物もいる・・・
この森に現れた相当強力な魔物なんだからおそらくは後者なんだろうな・・・)
シンはおそらくこの森にいる魔物は相当な年月を生き抜いており
だからこそそれだけの力を身につけられたのではないかと考える
ならば彼にとっては寿命などあってないようなものだろう
「調査をしている最中に巣を見つけてしまった部隊は全滅・・・
そして残された者達はこれ以上の調査は危険だと判断し森を出た・・・
あれだけの魔物を倒すのならば巨人が出向くしかないと国は判断したが
どこの国とっても巨人は貴重な戦力だ・・・もうここまで言えばわかるだろ?」
ナオマサの話とこれまでの話を照らし合わせてシンはすでに理解してしまった
巨人でしか対抗できないであろう強大な魔物を人が倒せるわけもなく
かといって国の最高戦力である巨人を各国が進行するかもしれない状況で使うわけにもいかない
結果としてここにいる魔物は放置される事になったのだ
・・・調査に来ていた彼らの命と悔しさを犠牲にして・・・
「・・・先に聞いておきたいんだけど・・・その魔物がこの森を出る事はあるのか?」
ここでシンが不安に思ったのはそんな魔物がこの森を出て人を襲わないかという事だった
「それに関しては安心してもいいだろう・・・
私達が逃げる時にも森からは出てこようとしなかった・・・
おそらくは自分だけが分かるテリトリーのようなものが存在するのだろう
だから国としても苦肉の索としてここを禁断の森として通行を禁止したのだしな」
確かにナオマサの言う通りもしも動いてしまうのならば禁断の森とした意味がなくなる
「・・・それよりも・・・警戒しろ・・・何かが来るぞ・・・!」
そんな話をしているとナオマサが何かの気配を察知し刀を構える
「ああ・・・だがこの気配・・・数は多いが例の魔物じゃないみたいだな・・・!」
シンも気配には気づいていたようでその小ささから
先ほどから話している魔物ではないと判断する
「!蜂型の魔物か!こいつらは倒しても何かを発する事はない!一気に仕留めるぞ!」
二人は一気に蜂型の魔物を撃退し一息つく
「・・・どうやら騒ぎに気付いた様子はないみたいだな・・・
このまま先を・・・どうした?」
ナオマサは何も来ていないと判断しこのまま森を抜けようと告げると
なぜかシンが真剣な顔をしながら地面に耳を当てていた
すると地面から変な音が聞こえてきてしかもそれがこちらに迫っているのに気づく
「!急いでここから離れるぞ!!」
シンの掛け声で一気にそこから離れると先ほど彼らのいた場所から何かが飛び出てくる
そしてそのまま彼らの前に降り立つと三人はその大きさに圧倒される
「マジかよ・・・!本当に巨人と同じくらいのサイズだぞ・・・?!」
シンが見上げた前に立っていたのは間違いなく巨大な魔物
そしておそらくは先ほど話していたこの森を封鎖する原因になった魔物だろう
「・・・どうやら向こうはこちらを逃してくれるつもりはないようだな・・・!」
現れた巨大な魔物にシンは再びディパシーで戦いを挑む!