常闇のテブレス
タイトルとは名ばかりにヒョウカの巨人が登場し大活躍します
シン達が女王軍の本陣のいる頃、タルヒへと向かう別の街道では教団の軍が既に配置を終えていた
「やっやはりひっ姫様の情報はおっ囮で狙いは本陣でしたか・・・!
しっしかしお陰でひっ姫様の居場所はわっ分りましたし
こっここからは反撃といっ行きましょうか・・・!」
そう言ってテブレスは教団の軍を先導し女王軍とは別の方向からタルヒ砦に侵攻する
それを確認した反乱軍の兵士がナオマサ達にこの事を知らせる
「このタイミングで増援だと?!まさかこちらの狙いがバレていたのか!!」
ナオマサは予想していた最悪のパターンだと思いながら反乱軍のみんなを反対側に集める
「お前達!戦いはまだ終わってはいない!今から反乱軍に力を貸し帝国の敵を討つぞ!!」
そして将軍が侵攻してきていた帝国兵を纏めて反乱軍に協力させる
(だが・・・先ほどまで戦っていただけにもうどちらも余力は残っていない・・・!
おまけに向こうには巨人がいるんだ・・・持ち堪えることなど・・・!)
しかし状況は思った以上に最悪で教団が攻めてきてどれだけ持ち堪えられるかという話だった
本当ならばシン達に助けて欲しいところだが
彼らが気づいてここまで来るのにどれほどの時間が掛かるか
それ以前に向こうがテブレスのいない事に気づいていない可能性だってあった
「いずれにしても姫様だけは絶対に守らなければ!」
そう思ってナオマサは急いでララの元へと向かっていった
そしてララの部屋に入ると彼女は全く動じている様子はなかった
「姫様・・・どうやら向こうの方が一枚上手だったようです
どうかここからお逃げください・・・敵は私が倒してみせます!」
ナオマサはすぐにここから逃げるようにララに告げるが首を振って拒否された
「ナオマサ・・・ここにいる人達は命を賭けて戦っているのです・・・
それなのにどうしてその原因である私が逃げられるのですか・・・?!
私は逃げません・・・!皆の勝利を信じて私はここから一歩たりとも動きません!」
その言葉にララは自分の決断が間違っていたと思い知らせて持ち場に戻った
「・・・どうやらその様子からして説得には失敗したようですな」
ナオマサが戻ると将軍は何があったのかを理解しているようで同情を視線を送ってきた
「・・・すまない・・・あなた達を信用していないわけではなかったのだが・・・」
先ほどの自分の考えを思い出してナオマサは謝罪するが将軍は気にしていなかった
「私達とてあなたと同じ立場だったら同じ事をしたでしょう・・・
主を思っているのならば尚更・・・それを責める事などできますまい・・・」
その言葉にナオマサは感謝の気持ちしかなくせめて彼らの為に最後まで戦う事を誓った
そして教団の軍があと一歩というところまで侵攻してきたその時だった
突如、上空から何かが落ちてきて教団の侵攻を一時的ではあるが止めたのだ
その正体は土埃が晴れる前に声で分かった
『くっそ・・・こんな事ならお前の提案など聞かなければよかった・・・!!』
ナオマサはその言葉に聞き覚えがあると思い土埃が晴れていくと
『別にいいだろ?ここに最短で着いたんだからさ?』
そこにはナオマサがよく知っている三体の巨人の姿があった
「シン!カライ!クロト!お前達どうしてここに?!」
嬉しい援軍に喜びながらもナオマサはどうやってここまで来たのか聞く
「まぁなんつうの・・・シンのとんでも発言のおかげかな・・・」
時間は少し前の巻き戻りシン達がテブレスはララの元に向かったのだと知った直後の事
「どうするんだ?!今からじゃディパシーでも間に合うわけがないぞ!!」
シンはどうすればララの元に急いで迎えるのかを必死で考える
それに対して他のみんなも考えるがあまりいい案は浮かばなかった
「くっそ!せめて俺がディパシーみたいに飛んでいければ・・・!!」
するとシンの発言を聞いたセッペン将軍が何かを思いついたようだ
「そうか!飛んでいけばいいのだ!」
みんなはセッペン将軍が何を言っているのか理解できなかったが
次の説明で聞かなければよかったと死ぬほど後悔する作戦を言われるのだった
「いいか?俺が巨人に乗りお前達を剣に乗せそのままタルヒ砦に向かって投げ飛ばす
そしてお前達はその上空で巨人に乗りタルヒ砦に降り立てばいいのだ!」
「「ふざけんな!俺達を殺す気か?!!」」
セッペン将軍の作戦にカライとクロトは猛反対するが何故かシンは深く考えていた
「・・・本当にそれならタルヒ砦に間に合いますか?」
なんとシンはその作戦をやる気のようでカライとクロトは正気かという顔をしていた
「その二人の言う通りこれは危険過ぎる方法だ・・・それでも行くか?」
どうやらセッペン将軍もこの作戦の危険性は分かっているようで
それでも行くつもりなのかシンに尋ねたがそれは彼にとって愚問に等しかった
「そんなもん行くに決まってる!やってくれ!!」
シンの言葉を聞いてセッペン将軍も覚悟を決めて巨人を呼び出しシンを手の上に乗せる
「全く・・・お前はいつもあんなバカに付き合わされているのか?」
クロトはカライにシンの相手をするのは大変だと
同情の視線を送りながらも一緒に手の上に乗る
「俺も流石にここまで酷いのは初めてだな・・・まぁ他に方法もないし行くしかないでしょ」
そしてカライも同じく呆れながらも一緒に手の上に乗った
「よし!それでは行くぞ!」
セッペン将軍の掛け声と一緒に三人はタルヒ砦へと飛ばされて現在に至った
「ふっ・・・!確かにあいつらしい馬鹿な発想だが今回は助かった・・・!」
まさに救世主の登場に味方は大喜びして戦意が上がり
逆に教団の軍は突然の敵に驚き隊列を崩してしまう
「どうやら巨人の数はそこまで多くないようだな・・・一気に片付けるぞ!」
クロトの言葉にシンとカライは返事をし教団の巨人に突っ込んでいく
そしてそれに続くように帝国と反乱軍の兵士も教団の軍へと向かっていく
完全に有利を崩されてしまった教団の崩壊は早く巨人も人も簡単に倒されていく
「どこだ?!テブレス!!お前の野望はもうここで終わりだ!!」
そしてシンはどこかにいるであろうテブレスに向かって勝利宣言をする
それに続くように味方の兵士達も声を出して自分たちの勝利を表していた
「バッバカな・・・!にっ人間がそっ空を飛んでくるなどあっあり得ない・・・!!」
一方でテブレスはまさかあんな危険を冒してまでここに人が来るとは思っておらず
その行動に驚いてしまい軍に指示を出すのが遅れてしまった
「ちぃ・・・!もっもう軍をたっ立て直すのはむっ無理だ・・・!
こっこうなったらせっせめて姫様だけでも・・・!」
テブレスは自分の失態を取り戻すにはララを攫う他ないと思いタルヒ砦に向かおうとした時だった
「・・・やはりここにいたのですね・・・!」
声が聞こえてテブレスは振り返るとそこにはここにいないはずのヒョウカの姿があった
「なっ何故・・・?!おっお前は女王の元にいっいるはずだろう・・・!!」
女王を助けるにはヒョウカ以外にあり得ない事はテブレスも分かっており
だからこそここに彼女が来る事はあり得ないと考えていたのだが
現実ではまさにそれを覆してヒョウカは目の前にいた
「何故ですか・・・先ほどあなたはその方法を目撃したはずですが?」
その言葉を聞いてテブレスは確信した・・・彼女のシン達と同じく飛んできたのだと
「あっあり得ない・・・!そっそんな事は一国のひっ姫がする事ではないぞ・・・!」
確かにテブレスの言う通り普通の姫ならば絶対にそんな危険は犯さないだろう
しかし目の前にいる姫はタダの姫ではない・・・反乱軍を率いる巨人乗りの姫なのだ
「たとえあなたが何を言おうとも私はあなたを許しはしません・・・
ですが大人しく捕まってくれると言うのならばその命だけは見逃してあげましょう」
ヒョウカの言葉を聞いてテブレスはこれまで自分が立てた作戦が全て台無しになったのだと気がついた
「おのれ・・・!おのれおのれおのれぇえぇぇぇ!!
お前さえいなければお前さえいなければぁぁぁあぁぁぁ!!!」
そしてテブレスはその作戦を壊した元凶でもあるヒョウカに殺意を向ける
「私を見逃すだと?!甘く見るな!貴様のような小娘に負けるほど私は劣っていないわ!!
来い!我が巨人!ソムブレ!!」
テブレスが手を翳すとそこに魔法陣が描かれそこから黒く細いトカゲのような巨人が姿を現した
そしてテブレスは巨人に乗り込み目の前にいるヒョウカを睨みつける
「どうだ?!これが私の巨人!ソムブレだ!この機体は特殊で扱いづらいが
貴様のような小娘を潰すにはこいつで十分だ!死ねぇぇぇえぇぇえ!!」
ソムブレはその鋭い爪をヒョウカに向かって振り下ろすが彼女は全く動じていなかった
「哀れね・・・せっかく忠告したのにそれを無視するなんて・・・来て!ラ・グラス!!」
ヒョウカが手を翳すとソムブレが振り下ろした爪の前に魔法陣が展開される
そして何かが飛び出してきてソムブレを突き飛ばしそれはヒョウカの前に降り立つ
それは女性のようなフォルムをした綺麗な水色の巨人だった
ヒョウカはその巨人の乗り込み倒れているソムブレに相対する
「これが私の巨人ラ・グラス!あなたを永遠の牢獄に閉じ込める使者よ!!」
しかしテブレスはその巨人の姿も怯えるどころかむしろ笑っているようだった
「バカめ!このソムブレは巨人の行動を操る事が出来るのだ!!
たとえ貴様が巨人に乗り込もうとも私の有利に変わりはないわ!!」
そう言ってソムブレの口から何かが発射されラ・グラスを貫いた
「これで貴様の巨人は動けまい!!嬲り殺しにしてやる!!」
ソムブレは自分の勝利を確信しながら突っ込んでいくと
動かないはずのラ・グラスが動いて魔法陣の中から杖を取り出した
「残念でしたね・・・ラ・グラスは氷の魔法石を使っているのです・・・
そして氷の特徴は・・・魔法力・・・!」
ラ・グラスが杖を翳すと徐々にソムブレは凍っていき
中にいるテブレスごと永遠に解けない氷に閉じ込められた
「言ったはずです・・・あなたを永遠の牢獄に閉じ込めると・・・」
テブレスを倒してようやく平穏と取り戻した帝国
そしてシン達も同じく一時の平和を喜ぶのだった