決戦の火蓋
いよいよ始まる決戦!
反乱軍が順調に準備を進めている頃、テブレスはようやく彼らの討伐に動く事にした
その理由はもちろんララの存在に気が付いたからだ
「まっまさか反乱軍にいっいるとは都合がいい・・・!彼らを潰すついでに
てっ手柄をいただくとしっしましょうか・・・!」
テブレスはそう言いながら笑っており急いで教団の人間と帝国兵を集めさせる
そしてその様子を遠くから見ている存在がいた
それは他でもない城に残っていたセッペン将軍だった
(やはり彼らの言う通り奴が全ての黒幕だったか・・・だがここで手出しわけには・・・
もしも奴が倒れるような事があれば教団の連中が女王に何をするか・・・
どうやら俺はまだ道化を演じ続けなくてはいけないみたいだな・・・)
テブレスの様子を見てセッペン将軍はまだその時ではないと感じ
それまでは身の内にある怒りを押さえつけてただ使命に準ずる事を決めた
一方その頃、反乱軍の方でも決戦に向けての準備を進めていた
「やはり戦力差を埋められても力の差を埋める事は出来ない・・・
よってそれに見合った作戦を考えたのだが・・・正直勝算は低い・・・」
将軍の話ではどうやらシン達が考えていた通りどこまで粘れるかそれは当日次第だと話していた
「まぁ普通に考えたらそうなるよな・・・だが今回の戦いは別に倒さなくてもいいんだ
俺達の勝利する条件は女王を元に戻すこと・・・それまで粘れればいいんだからさ」
しかしカライの言う通りそれはあくまでもまともに戦った場合の話だ
今回の決戦は女王を倒すのではなく女王を元に戻す事
それが出来るまでの時間を稼げれば今回の戦いは十分に勝ったと言えるだろう
「わかっている・・・だからこそどれほど粘れるのか先ほど皆で話し合ったが・・・
おそらくは半日時間を稼げるかどうか・・・という話だ・・・」
将軍の話を聞いてシン達も険しい表情を浮かべていた
半日という事は女王の元へ行く為になるべく時間を使わないようにしなくてはいけない
それ次第でヒョウカが女王を説得する時間が決まってしまうからだ
「要は突撃部隊・・・つまりは俺達巨人乗り次第ってわけか・・・」
そしてそれを決めるのは他でもないシン達、巨人部隊だった
彼らが教団や帝国の巨人を倒して突き進めば今回の作戦はうまくいくだろう
「問題はフェルミ最強のセッペン将軍とテブレスか・・・」
そんな彼らの最大の障害となるのは間違いなくセッペン将軍とテブレスだった
セッペン将軍は誰もが知っているフェルミ最強の巨人乗り
さらにテブレスはあの教団の幹部であり未知数の巨人を使う
この二人がどう動きシン達がどれだけ戦えるかによってこの戦況は大きく左右される
「セッペン将軍とは俺が戦う・・・あの人と戦ってみたいだ・・・純粋に」
シンはその二人の中で自分がセッペン将軍と宣言した
それに対してクロトとカライは何の文句もなくそれを受け入れる
「となると俺らが相手をするのはテブレスを含めた巨人部隊か・・・
クロトは教団の巨人乗りがどれくらいの強さなのか知らないのか?」
カライは教団が出してくるであろう巨人の強さについてをクロトに聞く
「俺もそこまで詳しく知っているわけじゃないから何とも言えないが・・・
普通の巨人とは間違いなく違う・・・巨人に使われている技術がな・・・」
クロトの話ではどうやら巨人乗りの方に関しては分からないが
教団の操る巨人は普通の巨人とは明らかに性能が違う事を告げる
「なるほどな・・・つまりは俺達もテブレスと戦う余裕があるかどうか分からないって事か」
それを聞いたカライは果たして自分達がテブレスと戦えるのは不安に思い始める
もしも自分達が巨人を抑えきれなければ間違いなく戦況はひっくり返る
そしてそれは事実上の敗北を意味する事にもなるのだ
「すまん・・・こちらにも巨人乗りがもっといればよかったんだが・・・」
残念ながら反乱軍の中にはシン達以外の巨人乗りはいないので
今回の戦いは負担を全て彼らに押し付ける事になってしまう
「そう言った事は慣れている・・・問題はない」
「・・・いやそうなんだけどさ・・・クロトが言っちゃうの?」
まさかクロトにセリフを奪われるとは思っていなかった何とも言えない顔をしていた
「別に誰が言っても構わないだろうが・・・
それよりもいつでも奴らが来ていいように緊張感を持っておけ
おそらくはテブレスはもう動き出しているはずだからな」
クロトの言う通りすでにテブレスは動き出しておりもうすでに軍を動かしていた
おそらくこのタルヒ砦に来るのは明日の夕方くらいになるだろう
「わかってるよ!でも本当に真正面から来るのか?やっぱり背後から来る可能性だって」
自分達がやったように伝説の魔物にさえ会わなければ背後の雪山を通る事は可能だろう
「確かに背後から来る可能性も少なくはないが・・・敵の性格からしてそれはないはずだ・・・
何せ雪山を通れば大切な戦力を失う事になるんだからな」
クロトの言う通りまともに戦えば勝つのは目に見えているのだからその可能性は低い
おまけに向こうは慎重に行動してきているのだから尚更そんなリスクを犯したりはしないだろう
「それに私達にはそんな可能性の話を考える余裕はない
真正面から敵が来ると考えて対処する以外の選択肢はないと思え」
ナオマサの言葉を聞いてシンはわかったと頷き作戦会議は終了となった
(・・・シンにはああ言ったが・・・実際に色んな可能性は考えられる
それほどまでにテブレスという男は狡猾な男のようだからな・・・)
実はシンの考えていた事はナオマサやクロトも考えてはいた
いや・・・もしかしたらシン以上に考えていると言ってもいいかもしれない
しかし本当に作戦通りに事が進むようにナオマサ達は動くしかないのだ
熟練された兵士とは違い反乱軍はそんな急に作戦を変えられても動く事は出来ない
それは作戦前日の今日であっても同じだろう
だからこそナオマサ達は今日の作戦の事だけを伝えて必死に特訓させてきたのだ
「あとは実戦でどこまでの力を出せるのか・・・そして女王を元に戻す事が出来るのか・・・
いずれにしても全ての結果は・・・明日になれば全てわかるか・・・」
そして翌朝になりいよいよその時は迫ってきていた
「先ほど偵察隊から報告があり女王軍がこちらに向かってきているそうだ
おそらくは夕刻頃にはここに到着するだろう」
将軍がみんなを集めて女王軍が迫ってきている事を教える
「・・・つまり開戦は夜って事か・・・最悪だな・・・」
というのも夜戦は熟練した兵士でも暗闇で混乱する事が多く
敵味方の判別が出来ない事や敵の発見が遅れたりなど戦いに不向きな条件が多いのだ
おまけに今回、こちら側は戦いの素人でつい数日まで訓練していたばかりの人間達だ
そんな者達が熟練の兵士ですら苦戦する夜戦になればどうなるか想像するのは簡単だった
「だが同時に好機でもある・・・元々こちらは主力を守りで固めて
女王のいる本陣に奇襲をかけるつもりだったのだ・・・夜が味方になってもくれる」
確かにナオマサの言う通り夜という状況が悪い事ばかりに傾くわけでもない
奇襲をかけるシン達からしてみれば暗闇こそが自分達を助けてくれる味方にもなった
「後は暗闇になる前に女王のいる本陣がどこにあるのかを知れれば準備は万端だな」
残るは女王の本陣がどこなのか偵察隊が見つけてくれるのを祈るだけだった
そこへ先ほど向かったばかりの偵察兵が帰ってきた
「ハァ・・・ハァ・・・女王本陣の場所が分かりました・・・!」
偵察兵は地図を持ってきており将軍はそれを受け取ってテーブルに広げる
「なるほど・・・まさか雪山の前に本陣を構えるとはな・・・
私達が雪山から来ないと見越しているからこその配置だな」
なんと女王の本陣はタルヒ砦の裏にある雪山の前にあるらしく
その配置は奇襲を全く警戒していない表れだとナオマサは考える
「そりゃあこっちにとっては好都合だ!夜になれば一気に本陣に奇襲だ!」
そしてそれはシン達にとってさらに都合のいいものだった
何せ雪山の魔物はもうすでに自分達の事を認めてくれたので簡単に通れて
尚且つすぐそこに本陣があるのだから暗闇で迷う事もない
「・・・確かに絶好の好機ではあるな・・・だが・・・」
しかしクロトとナオマサはこの配置を見て少しだけ不安に思っていた
(あのテブレスという男が・・・油断でもしたのか?
それとも本陣に攻め込まれてもいい理由があるのか?
いずれにしてもここまで隙だらけなのは妙だな・・・)
テブレスほどの男がここまで隙だらけになる事を二人は相続できず
もしかしたら罠なのではないかとも思ったがその内容が分からなかった
それにたとえ罠だったとしても後戻りなど出来るわけもなく
今は作戦の成功を信じて前に進む以外の選択肢しかないのだ
「・・・不安か?」
そしてクロトの隣にはこの作戦を最も不安な思いで挑む者がいた
それは他でもないこの作戦の成否を握っているヒョウカだった
彼女はここまで苦労してきたのだからこの作戦を成功させたいという思いは強かった
だからこそ失敗するかもしれないというプレッシャーも大きかった
おまけに様々な不安要素もある中での戦闘になりそうなのでさらに大きくなっていただろう
「・・・安心しろ・・・必ず女王の元には送ってやる・・・
だからお前は自分の命と女王の事だけを考えろ・・・他の事は何も考えるな」
クロトはみんながどうなるか自分達がどうなってしまうかを考える事はないと告げる
今はそんな事を考えても仕方ないしみんなが一番分かっている事でもある
だからこそ彼らの覚悟と命を無駄にしない為にも自分の役目だけを考えなくてはならない
「・・・はい・・・私のやる事は・・・母様を助ける事・・・!今はそれだけ・・・!」
ヒョウカはクロトが何を言いたいか分かったからこそ覚悟を決めた顔をする
それを見て他のみんなも何の心配もいらないと安心した表情になり
各々、これから始まる決戦に向けて準備を始めて
そしていよいよ・・・決戦が始まる夜となった
とうとう始まった決戦!
果たしてシン達は女王を助ける事は出来るのか?!