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向かうは北

今回は特に戦闘はありません

錬金術士の足止めによりなんとか王都を抜け出したシン達は

王国騎士団がいるという事もあり試験場にもなっていた森に来ていた

「よし・・・まずは私と姫様でここにいる騎士達に話してくる

 小僧は私達が戻ってくるまで見張りを任せたい・・・」

ナオマサはこの森にいるであろう騎士団との接触は姫様と自分でやるから

その間の見張りをシンに任せると言って森の中へと入っていった

「・・・まさかこんな事になるなんてな・・・騎士を目指していたはずなのに

 その騎士団を率いる団長が反乱を起こすなんて・・・どうなってんだろうな・・・」

シンは亡き祖父であるリンジュに聞かせるように今の状況についてを語り出した

リンジュのような騎士団長を目指していたというのにその人と戦わなくてはならない

しかしそれは自分が悪いのではなく向こうの方がやってはならない事をしたからだ

つまり悪を裁くはずの騎士団長が悪に染まりそれを倒す為に今の自分がいる

「なんか・・・もう訳がわかんなくなってきたな・・・」

本来ならばありえないはずの状況に対してシンは頭の中が整理できなくなっていた

自分が何を信じて戦い何を守らなくてはいけないのか

そして誰が味方で誰が敵なのか・・・もはやそれすらも分からない

「・・・でも・・・困っている人を放り出すのは騎士道に反するよな・・・!」

しかしそんな中でたった一つだけはっきりとわかっている事がある

それは他でもないララという一人の少女を守りきるという事だ

たとえどんな事があろうとも困っている人を見捨ててはいけない

それがシンの祖父であるリンジュが何度も教えてきた騎士の心だった

「話が済んだぞ!小僧も早く来い!」

するとそこへナオマサが現れて話し合いが済んだ事を教えてくれた

シンは彼の言う通りにディパシーを動かして森の中へと入っていく

そしてしばらく歩いていると野営地のような場所が見えてきて

そこには騎士団の人達だけではなくおそらくは王都から逃げてきた人達の姿もあった



「先ほど騎士団と話をしたんだが・・・どうやら王都の人達の警護をしなくてはいけないから

 王都の奪還を手伝う事が厳しいらしい・・・だから彼らが新しい本拠地を見つけるまでの間に

 私達は他国に協力要請をしに向かいたいと思っている」

ナオマサの話では王都の護衛をしなくてはいけない為にここにいる騎士団は動く事が出来ず

王都を奪還する為には他国の力を借りるしかないと考えているらしい

そこでナオマサとララは自分達で他国との交渉に向かう事にしたようだ

「それなら俺もついていく!また巨人に襲われる可能性だってあるし!

 それに・・・俺はこいつを託された責任もあるからな・・・」

そう言ってシンが見ていたのは他もでもないディパシーだった

これを作り出した錬金術士は全てをシンに託して死んでいった

ならば今のシンがやらなくてはいけないのはその錬金術士がして欲しかった事を実現させる事

それは姫であるララを守り抜き必ず王都を取り戻すという事だ

「もちろんそれについてはこちらもお願いするつもりだった・・・

 まずはこの大陸の地図を見てもらいたい」

ナオマサは持っていた地図を広げてシンに見せながら説明を始める

「本来ならば協定関係にある砂漠の民族国家であるヴァンカンスに援助を申し出たいが

 生憎とヴァンカンスには王国に対抗できるほどの戦力は持ち合わせていない・・・

 だから私達はさらにそこから北へと向かい海上の商国であるスフェスから船で

 氷雪の帝国であるフェルミに助力を願いたいと思う」

どうやらナオマサの考えでは王国に対抗できるのは帝国であるフェルミだけのようで

もしも助力を頼むのならばここしかないだろうと考えてはいるのだが

「・・・問題は帝国の情勢だな・・・帝国は数年前に帝王が亡くなられて

 今はその妻である女王が統治していると聞いている・・・

 しかも帝王が亡くなってからは国民への扱いは苛烈なもので

 それこそ圧政の所為で何人もの死亡者を出しているとの話だ・・・」

問題は帝国の女王が夫が亡くなったのを機に性格が豹変してしまったという事だった



「その人と交渉しなくちゃいけないのか・・・難しそうだな・・・」

シンは情勢などそういった事に詳しくないので

どれほど困難なものなのかまでは理解出来なかったが一筋縄ではいかないと思っていた

「難しいどころの話ではない・・・もしも向こうが裏切ればこの国は滅んでしまう

 それほどまでに切迫した交渉になるだろう・・・

 本来ならばそういった事を補う為の大臣なのだが・・・」

そう・・・ナオマサの言う通り本来ならばこう言った交渉などで

姫を支える為の大臣という役職のはずなのにそれを忘れて彼は国を裏切った

つまり残されているのは姫が自ら交渉するという事だけだ

「・・・本当に大丈夫ですか?さすがに姫様だけにこれを任せるのは危険なんじゃ・・・」

さすがのシンもそれが国にとってかなり重要な事であり

そしてどれだけの難しいのか理解できた

だからこそまだ肉親の死に王都が襲われた悲しみから抜け出せていない

ララに任せるのは危険だとも思っていた

「それはこちらもわかっている・・・だがもはや我らにとって彼女の以上に位の高い人はいない

 そして交渉に関しても残念ながら今は適任者がいない・・・これ以外に策はないのだ・・・」

しかしそれはナオマサも理解しているようなのだが他に策がないのも事実だった

それにたとえ彼女以外の人がやるとしても結局最後は彼女が国を治めなくてはならない

ならば今の内にその覚悟を磨くにはこれが一番いいはずだと考えての事なのだ

「・・・それにこれは・・・私が決めた事でもあるのです・・・!」

するとそこへ話に上がっていたララが現れ自分の決めた事だと告げる

「この戦いは私が不甲斐なかったからこそ起きてしまった悲劇です・・・

 だから亡くなった全ての人達に顔向けする為に・・・

 そして今を生きている人達を助ける為に・・・私は向かいます・・・!」

そう・・・ナオマサもシンも勘違いをしていた

彼女は覚悟を決める為に行くのではなく覚悟を決めたからこそ旅に出るのだ



「それじゃあまずは砂漠の民族国家ヴァンカンスの首都を目指すとしよう

 そこで避難民の受付や物資の支給を手伝ってもらいたいしな」

三人が最初に目指すのは砂漠の民族国家ヴァンカンスになった

理由としては王都の避難者達への支援だった

王都が占拠されてしまっては食料などの物資がすぐに尽きてしまう可能性がある

だからこそ友好関係でもあるヴァンカンスに助けてもらおうというわけだった

「友好国のヴァンカンスなら無駄な探り合いは起きないと思います

 私も前に父と一緒に連れて行ってもらい責任者の人とはあったので」

ララもどうやらヴァンカンスを纏めている人にはあった事があるようで

その人との話し合いならば探り合いもなく安心できると話していた

「でも出発は明日でも問題はないでしょう・・・今日はゆっくりと休んでください」

しかしナオマサは出発は今日ではなく明日にする事にしていた

それはもちろん色んな事があったララを気にしての事だった

「そうですね・・・ではすいません・・・休ませてもらいます・・・」

その言葉に甘えるようにララは騎士団が張ってくれたテントの中に入っていった

「・・・さすがに色んな事があったもんな・・・そりゃあ疲れるか・・・」

シンもこれだけの事があったのだから疲れるのは当然だと思っていた

しかしそれは彼女だけではなく自分も同じだという事をすぐに理解する

「あれ?なんかめまいが・・・それに・・・まともに立ってられない・・・?!」

ララが去ってすぐにシンはその場に膝から崩れ落ちて目の前が歪んで見えた

「やはり小僧もだったか・・・初めて巨人を動かしたのだから当然といえば当然だろうな

 お前も休むといい・・・見張りは私達でちゃんとやっておく」

ナオマサの声を聞いて安心したのかシンはそのままゆっくりと目を閉じた

(・・・こんな少年まで巻き込まなくてはいけないとはな・・・我ながら情けない話だ・・・

 それにしても腰に下げている事の剣・・・どこかで見覚えがあるような・・・)

シンが持っている剣にどこか懐かしさを感じながらナオマサは彼もテントの方へと連れていく



そして翌日になりシンは知らない天井で目を覚ました

「・・・そっか・・・俺・・・あの後すぐに寝ちゃったのか・・・」

シンは体を起こして周りを見ると壁に自分の剣があったのを確認し

それを腰につけてテントの外へと出て行く

「・・・あれ?!ディパシーの姿がない!!」

そしてテントの周りを見てディパシーの姿がない事に気付き慌ててしまう

「安心しろ・・・ディパシーはちゃんとお前のそばにある」

そこへナオマサが現れてシンに何の心配もない事を告げる

「元々巨人には盗まれたりするのを防止する為に特殊な転送術が備わっている

 お前のディパシーはその転送術で誰の手も届かない場所に移動しただけだ

 乗り手であるお前がちゃんと呼べばどんな時だろうとすぐに現れてくれる」

どうやら最初から巨人には個別の格納庫のようなものがあるらしく

ナオマサなの話では盗まれる被害が出ないように勝手に帰っているだけのようで

シンが本当にディパシーを必要として呼んだ時には現れてくれるそうだ

「そうだったのか・・・急に消えたから逆にその盗まれた可能性の方を疑ったわ・・・」

そんな説明を聞いていなかったシンはむしろ本当に盗まれたのではないかと内心は焦っていた

しかし盗まれたのならば今頃は大騒ぎになっているはずなので

よくよく考えてみればそこまで大事ではないという事はすぐに気づけたみたいだ

「皆様おはようございます」

そこへ同じく目を覚ましたララが現れてみんなに挨拶を交わす

「どうやら全員揃ったようですね・・・それでは出発するとしましょう」

みんなが揃ったのを確認したナオマサは場所を持ってきてララを乗せるが

ここでシンには一つの疑問が生まれた

「なぁ・・・どうして馬車なんだ?ディパシーでもいいんじゃ・・・」

それはどうして移動に巨人ではなく馬車を使うのかという事だった

「決まっているだろ?巨人は乗り手の体力を大きく削ぐから戦闘用にとっておくのだ」



「ああ・・そういえばそれで倒れたんだっけ?俺」

ようやく自分が倒れた理由を思い出したシンの一緒に場所へと乗り込む

「よし・・・!それではまず目指すはヴァンカンスの首都アデムだ!」



「「おおぉ!!」」

北へと向かう事になったシン達一行

果たして彼らを待ち受けているのは希望か?それとも絶望か?

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