戦いの傷跡
スフェス王と対談します!
大海のトルビリオンを捉えて戦いはシン達の勝利で幕を閉じた
しかしその中で失ったものも大きくとても勝利を喜べるような雰囲気ではなかった
しばらくしてそんな彼らに嬉しい情報が舞い込んできた
それはトルビリオンの持っていた解毒剤を使った事で王が目覚めたという事だった
まだ毒の影響が残っているのでベッドの上から動く事は出来ないが
それでも医者の話では順調に回復しているので元に戻るのも時間の問題らしい
そしてシン達はその王が此度の件についてお礼を言いたいと言っており城に招かれていた
「・・・やはりお前にとってはここに思う事があるみたいだな・・・」
城の中に来てからどこかシンの様子がおかしく
ナオマサはキタンの事を引き摺っているのだと考えていた
「・・・さすがの私も忘れろとは言わない・・・だが引き摺っていては
彼の最後を侮辱するようなもの・・・胸を張って歩け・・・!」
彼の最後はまさしく敬意を払うに相応しいものでありその死を引き摺っていては
それこそ彼の死を侮辱する事に他ならないとナオマサはシンを諭す
「ああ・・・そうだな・・・あの人は戦士として最後まで戦って死んだ・・・
俺はそんな人に託されたんだからちゃんとしないとな・・・!」
シンは自分の頬を叩いてやる気を取り戻し今度こそちゃんと前を向いて歩き出す
(・・・あんな事を言ってしまったが・・・
本来なら彼のような少年に味あわせる苦行ではない・・・
それに巻き込んでしまったのは他でもない私達大人だという事を胸に刻んでおかねばな)
歩き出したシンの背中を見ながらナオマサは彼を巻き込んだ事を深く反省しながら
それでも自分達は歩き出すしかないのだとその罪を深く胸の中に刻み込んでおく事にした
「お!きたな!こっちだこっち!!」
そんな風に歩いていると王の部屋の前で何故かツガルが待っており
シン達を見つけるとこちらだと大きく手を振って来るように叫んでいた
「あの〜・・・なんでいるのかの前に病人がいるんですから声は小さくしてくださいよ」
「悪いな!でもどうしても嬉しくてな!だから早く来て欲しかったんだよ!」
ツガルにとっては王は友達であり無二の親友だったのだから
意識を取り戻したという話を聞いて嬉しく思わないわけがなかったのだが
さすがにいつまでもこのテンションは迷惑なのではないかと不安に思っていると
「みんな来たね?まだ毒が完全に抜けているわけじゃないから無理させないでね?」
王の部屋から専属の医者が姿を現して王の謁見の為に扉を開けて入れてくれた
部屋の中に入ると毒のせいで確かにやつれてはいるが
顔色だけはちゃんと戻った王の姿があった
「よく来てくれたね・・・こんな姿で申し訳ないがどうしてもお礼が言いたくてね
この国の民とそして私自身を助けてくれて本当にありがとう・・・!
私達は君達に出来る限りの事をしてあげるつもりだ」
王は国を救ってくれたシン達に対して出来る限りの助力を申し出てくれた
「ありがとうございます・・・!それでは早速でありますがお願いがございます」
ナオマサは自分達が国を取り戻そうとしている事や
その為に帝国に行かなくてはいけない事も話した
「だからどうかお願いします・・・!我が国の民に物資の提供
そして私達が帝国に行けるように船を貸していただきたい!」
ナオマサからのお願いを聞いた王は少しだけ難しい顔をしていた
シン達もさすがにこの国の情勢的に無理を言いすぎたかと思っていたが
どうやら王が顔を顰めていたのはその願いが無理だからではなかった
「君達の願いはわかった・・・物資の提供や船の貸し出しに関しては問題ないが・・・
君は今・・・帝国フェルミの情勢がどうなっているのか知っているのかい?」
王が気にしていたのはどうやらフェルミの情勢についてだったらしく
「生憎ですが海を隔てた向こうの国なので全てを把握しているわけではありません
もしや・・・フェルミで何かあったのですか?」
今回のような出来事が向こうでも起きているのいうのならば確かに問題だと思っていたが
「・・・フェルミの国王は・・・数年前に亡くなっているのだ・・・」
どうやら状況はさらにその上をいくようだ
「王の死・・・ですか・・・確かにそれは大事ですね・・・」
王の死は国はおろか他国にとっても重要な情報となるだろう
それこそ戦争のきっかけにすらなる最も危険な事なのだ
「世継がいなかった為にその時の王妃が女王として国を纏めているらしいが
生憎と国の情勢としてはかなり不安定だと言わざるえないだろう・・・
それこそ貴殿の国のように内乱が起きたとしてもおかしくないほどにな・・・」
どうやらフェルミの情勢はナオマサが思っている以上に悪いようで
もしも行くとなればその内乱に巻き込まれる事は分かりきっていた
(いや・・・そもそもそんな状態で国の奪還に手を貸してくれるかどうか・・・)
向こうも内乱が迫っているというのならば兵を割く余裕などないだろう
となれば今回の旅の目的でもあったフェルミからの助力は意味をなくしてしまう
ナオマサは王からの言葉を聞いてフェルミに行くべきかどうかを悩み始めた
「あの〜・・・会話に割って入って申し訳ないんですが・・・
フェルミの王は病で亡くなったのですか?」
そんな中でシンはもしかしたら王の死には何か裏があるのではないかと思い
どうして亡くなったのかその理由を尋ねると
「ああ・・・亡くなる数年前にその病気が発症して倒れたらしく
その時から自分の余命が残されていない事を教えられたそうだ
私のところにもその書状が届きこれからの交流は女王を通すように言われたからな」
どうやら王の死は彼らの策略とは無縁のようで病で亡くなったそうだ
しかしその死を利用して城の中に入り込み今回と同じように暗躍している影はいるだろう
そうなってくれば間違いなくララが狙われて攫われてしまう可能性も少なくはない
(でも・・・戻ったところで状況は何も変わらない・・・だったら前に進むしかないんだ!)
今まで色んな人に迷惑をかけて色んな人々が犠牲になってしまった
だからこそ今回の旅を無駄に終わらせたくはないとシンは思っていた
横を見るとどうやらララも同じ気持ちのようでフェルミに向かうつもりのようだ
「・・・どうやらその様子では私が何を言っても無駄のようですね・・・
わかりました物資と船の件はスフェス王の名前に賭けて何とかしましょう」
王も彼らの真剣な表情を見てこれ以上は何を言っても無駄だと判断し
先ほどのナオマサが告げた褒美の件を用意させてもらおうと宣言した
それを聞いてシン達が喜んでいると医者がもうそろそろ時間だと入ってきて
名残惜しさはあったが肝心の話は出来たので今日は切り上げる事にした
「それにしてもフェルミの情勢・・・どうやら思った以上に悪いみたいだな?」
城から出て行く道中でカライはフェルミの情勢についてを話し始めた
「確かに・・・私も正直そこまで耳に入ってこなかったからあまり気にしてなかったが
王が死んだとなれば他国に知られるはずはない・・・
おそらくどの国も知らなかっただろう・・・あいつらを除いて・・・だがな」
そう・・・おそらくトルビリオンの言っていた教団だけは王の死を知っているはず
となれば彼らにとって帝国を乗っ取るにはこれ以上とない好機
フェルミが内乱を起こしそうになっているのは間違いなく彼らの仕業だろう
「正直な話フェルミに行くのかかなり危険だろ思うぜ?
そりゃあ帝国が味方になってくれるのなら嬉しいがその帝国で戦争になれば
俺達自身も無事かどうか分からなくなる・・・
ここは少し様子を見た方がいいんじゃないか?」
確かにカライの言う通りフェルミの情勢を見てから動くのが一番いい案だろう
しかし教団が相手となるとむしろそれはとんでもない失敗に繋がりかねないのだ
「情勢を見ていたとしても彼らが本気になれば私達を捕らえるなど造作もないはずだ
ゆっくり時間を掛けて包囲網に囲まれてしまうくらいなら相手の懐に入り
場をかき乱す方が彼らにとっては痛手となるはずだ」
後手に回って失敗するくらいならば少しでも可能性を広げるべく先に行動し
相手が準備をしている隙を突いた方が遥かに有効だろうと
ナオマサはこれまでの経験からそう判断していた
「だな・・・結局国の中心にあいつらがいる事に変わりはないんだ
だったら向こうに動かれるまでに動かないと・・・
大軍で掛かって来られたらひとたまりもないんだしな」
自分達は数が少なくしかも守らなくてはいけない人もいる
数で押されてじっくりと時間をかけられれば間違いなくこちらが不利
それがわかっているからこそシンもナオマサの意見に賛成していた
「そういえば気になってたんだけど向こうにも港があるんだよな?
そっちの方はその内乱とかいうのに巻き込まれてないよな?」
テンテコは先ほどの内乱の話を聞いて向こうの港は本当に大丈夫なのか不安に思っていた
「おそらくは大丈夫なはずだ・・・フェルミの住民が多いと言っても
港にはスフェスの人間もいる・・・他国の人間を戦争には巻き込まないはずだ」
もしもそんな事をしてしまえばすぐに内乱から国同士の戦争へと発展しかねない
国をまだ完全に奪えていないのならば教団としてもそれは愚策に近いだろう
そしてそんな馬鹿な事をする人間が教団の中にいるわけがない
だからこそフェルミにある港は無傷で残っているはずだとナオマサは告げた
(だが・・・無傷で残っていたとしても住民が歓迎してくれるとは思えないな・・・)
しかしナオマサは港があったとしてもそこに人々に歓迎してもらえる自信はなかった
もしも内乱が激しくなっているのならば自分達はそれを大きく燃やしてしまう油になるからだ
たとえ戦争に無関心な人であろうともそれくらいの考えは持っているだろう
(どちらにしても・・・ここからが本番といったところだな・・・!)
揺れ動いている帝国フェルミの情勢
果たしてシン達は協力してもらえるのか?!