大海のトルビリオン
シン怒りの無双!
「おっさん!・・・クッソ・・・!もう戻ってる時間なんて・・・」
残念ながら王の体調は思った以上に悪く戻っている余裕はない
いや・・・もはや戻ったところでキタンが助かる確率は・・・ゼロだ
「シン・・・おっさんの犠牲を無駄にしちゃいけない・・・行こう・・・!」
テンテコの言う通りここで立ち止まる事はキタンの犠牲を無駄にする事になる
それだけは絶対にしてはいけないとシン達は王を抱えて波止場へと向かう
「急げシン!後ろから追ってが迫ってきたぞ!!」
しかしキタンの足止めを受けたにも関わらず後ろから追ってが迫ってきていた
しかも王を抱えている分、シン達の方が少しだけ足が遅い
このままではどんなに頑張っても追いつかれてしまう可能性が高い
(だが足止めしようにもテンテコだけじゃ王を運ぶなんて無理だし・・・!
せめて誰かが助けてくれたら・・・だが・・・!)
残念ながらこの国の人達は首に付けられている爆弾の所為で自由はなく
こちらを手伝ってくれるような人物は今のところいないだろう
「おい!もうあとちょっとで追いつかれちゃうぞ?!」
もはや追いつかれるのは時間の問題でどうしよかと思っていると
「こっちだ!早くこっちに来い!!」
物陰から一人の男が頭を出しておりこちらに来るように指示を出してきた
もはやこの状況では何でもいいから頼りたいのでシン達はその指示通りにそちらに向かう
もちろん後ろの兵士達もその後を追いかけてきたがその上から家具やら食器やら
いろんなものが落ちてきて彼らはその下敷きになった
そして何が起こったのだろうと上を見てみるとそこには首輪の外れた人々の姿があった
「そうか・・・!ナオマサ達が起爆装置を破壊したんだな!!」
向こうの作戦もうまくいったのだと知れたシンは嬉しそうにしていたが
それはもはや一瞬だけの出来事でありすぐに自分達もやるべき事も理解できた
「悪いんだがこの子と王を波止場に連れて行ってくれ!俺はあいつらの足止めをする!」
「よくわからんが波止場に向かえばいいんだな?!任せてくれ!!」
助けてくれた人達は王を抱えてテンテコと一緒に波止場へと向かった
シンは逆を向いて王を追いかけようとする兵士達の相手をする
「ここから先は絶対に行かせない!キタンのおっさんの仇だ!」
これまで以上にやる気に溢れているシンは十人以上はいたはずの兵士をものともしなかった
そして全員倒し終わるとシンもみんなと合流する為に波止場へと向かった
「まさかあの年であれだけの強さをしているとは・・・これは予想外でしたかね?」
その様子を遠くから見ていたトルビリオンもシンの強さに驚いていた
ディパシーの強さは知っていたのだがそれに乗っているシンの事は考えていなかったのだ
しかし今回の事で彼自身も十分に脅威な人間だと判断した
(ですがまぁ・・・どうせ今日中には終わるでしょうし・・・気にしなくてもいいですね)
絶対的なまでに自分の策に自信のあるトルビリオンはそれでも障害ではないと思っていた
「さてと・・・それでは皆さん・・・行きましょうか?」
そう言っているトルビリオンの後ろには三十を超えているであろう巨人の姿があった
そんな事を知らずにシンはようやく波止場に到着すると人々が小屋に集まっていた
「帰ってきたか・・・どうやら王の容体が思った以上に悪いようでな・・・
ツガルが色んな薬を持ってきているらしいがどれを使っても効果がなくてな・・・
もしかしたらあのトルビリオンと言う男が解毒剤を持っている可能性がある」
ナオマサの話ではどうやら王の毒を治すにはトルビリオンが持っている可能性のある
解毒剤を使う以外に方法がなさそうで戻らなくてはいけないかもしれなかった
「やっぱりタダで返すつもりなんて最初からなかったか・・・!
わかった・・・俺が戻ってトルビリオンから解毒剤を取ってくる!」
シンは急いで道を戻って再び城に向かおうとするがその腕をララが掴んで止める
「だっ駄目です!いっ今のあなたはれっ冷静じゃない・・・!」
確かにララの言う通り今のシンはキタンを犠牲にしてしまった罪悪感と
トルビリオンへの怒りで普段のような冷静さは持っていなかった
「・・・悪い・・・少し落ち着いてくる・・・」
シンは少しだけ冷静さを取り戻しみんなから離れていった
その姿を見ていたララは自分に何かできないかと思っていると
ナオマサが視線で後をついていくように告げていた
それを見てララは急いでシンの後を付いていくと岸でただ海を見つめていた
「ん?ララか・・・さっきは悪かった・・・
キタンのおっさんが囮になって気が動転してたみたいだ・・・」
シンは素直に自分が冷静ではなかったと謝罪した
それに対してララも彼の気持ちがわかったからこそ謝罪を受け入れた
「だが・・・もう復讐には囚われない・・・あのおっさんもそれを望んでないだろうしな」
自分でもはや怒りはないと言っていたシンだったがその手は震えていた
おそらくは怒りで震えているのだろうと思ったララはその手を掴んだ
「大丈夫です・・・どんなになったとしてもシンはシンです・・・私は信じてます
だから・・・どうか背負い込まないでください・・・」
ララはシンの純粋な気持ちを大切にして欲しいと思っていたからこそ
どんな事であろうとも一人で背負って欲しくないと告げる
自分がどん底にいる時に助けてくれた彼だからこそ・・・
「・・・悪い・・・それじゃあ・・・しばらくこの手を繋いでいいか?」
シンはその言葉に甘えてララの手を握って落ち着こうとする
「俺・・・どうしてもあいつが許せないんだ・・・キタンの仇だからってだけじゃない
あいつはまるで人の命を玩具のように思っているんだ・・・俺はそんなあいつが許せない!」
その言葉を聞いてララはどれほどまでにトルビリオンと言う男が酷いの理解できた
いや・・・シンの怒りを知っていればそれだけで理解できてしまったというべきだろう
「だが・・・忘れてたよ・・・そんな怒りで戦っていたら自分の身を滅ぼす事になる・・・
戦いで最も重要なのは冷静に物事を判断する事・・・戦いが終わるまでは気を抜かない
前に爺ちゃんが教えてくれた戦いに対する基本・・・それをようやく思い出したよ」
「ありがとう・・・それじゃあ今度こそ行ってくるよ・・・あいつを倒しに行くんじゃなく
王を・・・誰かを助ける為の戦いに・・・!」
シンはララの手を離し城へと戻ろうとした時だった
『いえいえ城に向かう必要はありませんよ?こちらから出向きましたから』
海の中から声が聞こえてきて振り返ると何かが飛び出してこようとしていた
シンは急いでララを連れてその場から離れると海の中から一体の巨人が飛び出した
その巨人は背中に巨大なボンベのようなものを背負っており腕には大砲を付けていた
「どうですか?この私の巨人・・・ヴァギエの姿は?」
どうやら声の主はトルビリオンで目の前にいる巨人は彼のものらしい
「なるほどな・・・とうとう我慢できなくなって自分で出てきたってわけか・・・!」
もはや王も民の取り返されたトルビリオンは力しか残されていない
ならばそれを使って全てを葬り去ろうとしているのだとシンは確信していた
「ええ・・・ですから連れてきましたよ?あなた方を滅ぼす戦力をね!」
トルビリオンが指示を出すと再び海の中から巨人が飛び出してきた
しかもそれは二体や三体ではなく三十以上はいるであろう大軍だった
「お前・・・!本当にこの国の人達を皆殺しにするつもりか・・・?!」
もはやその数は明らかに過剰なまでの戦力であり何の武器も持たない人々にとっては
まさしく自らを滅ぼしに来た悪魔にしか見えないだろう
「言ったでしょ?私は人を殺す為に生まれたような人間だとね!」
トルビリオンはそう言って二人を踏みつけようとするが
「来い!ディパシー!!」
シンがディパシーを呼び出してヴァギエを吹き飛ばして急いでその場を離れる
「ララはここから急いでナオマサ達を呼びに行ってくれ!
俺はここであいつらの数を減らしながら足止めする!」
トルビリオンから距離を取るとシンはララを下ろしてナオマサの元へ行くように言い
自分は足止めをする為に再び彼らの元へと戻っていった
「やはり自ら囮となる為に戻ってきましたか・・・ですがこれだけの数を相手に
果たしてたった一体だけで敵うとでも思っているのですか?」
これだけの大軍を連れているのだからトルビリオンは完全に自分が有利だと思っていた
そして彼に加担している兵士達も自分達の勝利を全く疑っていなかった
しかし・・・シンだけは勝敗など最初から気にしていなかった
「・・・行くぞ・・・!」
彼が気にしているのは最初から全員を倒しきる事だけ
一切の雑念がないディパシーの攻撃はもはや目では捉えきれず
気づけば先ほどまで勝利を疑っていなかった巨人の三分の一を倒していた
「なっ何が起こったというのだ?!」
これにはさすがのトルビリオンも予想外だったようで動揺を隠せなかった
だがシンはそんな事を気にもしないで圧倒的なスピードで他の巨人を切り倒す
巨人の腕や足が気がつけば切り落とされたりしており
敵から見ればまさに恐怖を覚える光景だっただろう
それはもちろんトルビリオンも同じで兵士達を盾にしようとするが
その盾にした兵士達もすぐに倒されてしまい
気づけばもう残っているのは自分一人だけだった
「馬鹿な・・・?!たった一人の少年にここまで・・・!」
シンの強さは完全に理解していると思っていたがどうやらそうではなかった
トルビリオンは目の前にしている光景こそが真実であり自分はどれだけ過小評価していたのか
しかしもはや時はすでに遅くディパシーはヴァギエの両腕と両足を切り飛ばした
「これで・・・終わりだ・・・!」
この言葉にさすがのトルビリオンも自分の死を確信したが一向に攻撃は来なかった
どうしてなのか見てみるとディパシーのランスが貫いたのは胴体ではなく頭だった
つまりシンはあえてトルビリオンを生かしておいた
「お前は殺さない・・・生きて死ぬまで働いてもらう・・・!その地獄を味わえ!」
こうしてトルビリオンは捕まえて戦いは終わったが
その代償はあまりにも大きく悲しいものだった・・・




