海賊ツガル
今回はテンテコが大活躍!
ツガルという男に連れられてシン達は向かったのは港にある一軒の酒場だった
しかし中に入ってみると人の姿はなくツガルが勝手に酒を取り出して飲んでいた
「いいのか?ここって誰か別の人の店じゃないのか?」
シンはこのお店は誰かのお店ならば勝手に飲むのは盗みなのではないかと尋ねる
「いや・・・もうここは無人の店だよ・・・店主はこの前死んだ・・・」
どうやらここはツガルの知り合いが営んでいたお店のようで
その本人はすでに亡くなっているそうだ
「・・・それで?俺達にとってのいい話とは一体なんだ?」
それを振り払うようにナオマサは先ほどツガルが言っていた話について尋ねる
「ああ・・・実は俺も船に携わっている仕事をしていたんだが・・・
その部下が全員捕まってな・・・もしもあいつらを解放してくれるのなら
ここにある船を使ってお前達を首都まで送り届けてやるよ」
ツガルの話ではここで船に乗る仕事をしていたらしくそこのリーダーだったらしいのだが
とある理由で衛兵に捕まってしまい船員達は全て捕まってしまったらしい
そこでシン達にその救出をお願いしたくてここまで呼びつけたそうだ
「なるほどな・・・船を出してくれるのはありがたいが・・・
その前に聞かせてもらいたい・・・この国で何が起こっているのか・・・
そしてお前達が一体どんな理由で捕まったのか・・・全てな・・・」
しかしナオマサはそれに返事をせずまずはこの国の事情と
そして彼ら自身の事情を聞いてからではないと判断しない事を告げる
それを聞いて確かにその通りだと思ったツガルはグラスを片手にゆっくりと語り始める
「まずは俺達の職業だが・・・まぁいわゆる海賊って奴だ・・・
と言っても盗みもしてないし殺しもしてない・・・ゴロツキが集まった自警団みたいなもんさ
そして・・・この国の王とは昔からの友人でよく船にも乗せてやっていた・・・
あいつが王になった時はこれで国も安泰だと・・・そう思っていた・・・
・・・あんな事が起きて・・・あのクソ野郎がこの国を自分のものにしなきゃな・・・!」
「・・・もしかして・・・その男はこの国の執政官か?」
ナオマサはここへ来るまでに噂になっていた執政官の事なのか尋ねると
ツガルはゆっくりと首を縦に振って肯定した
「王が倒れてすぐにあいつはまるで狙っていたとばかりに
王の権力を振りかざして何かを始めた・・・!
おかげでこの国の自由は奪われさらには命すら奪われるようになった・・・!
あいつはもう人を道具としてしか見ちゃいない・・・!命を何とも思ってないんだ!」
怒りに身を任せたその言葉を聞いてシン達はすぐに確信した
その執政官は間違いなくヴェストの仲間なのだと
そしてその先は彼が何も言わなくてもどんな事があったのか理解する事が出来た
「・・・おそらくは王が倒れたのもあいつの仕業なんだろうよ・・・
でなきゃ倒れる前日に元気に酒を飲み交わしたあいつが嘘になっちまう・・・!」
さらには新たな証言としてなんとツガルは倒れる前日の王に会っていたそうだ
もしもそれが本当ならば確かにその次の日に体調を崩して倒れ込むなどありえない
その執政官が毒を盛った可能性は十分に考えられるだろう
「でも・・・だとしたらなんでその執政官はまだ王の命を生かしているんだ?
国を自分で動かせるようになったのならその必要はないはずだろ?」
毒を盛って意識不明にするほどならば命を奪うのも容易なはず
それをしない理由は一体なんなのだろうとシンが思っていると
「おそらくその理由は人質だろう・・・さっきも言ったようにスフェスの王は
俺たちのようなゴロツキからだって信用されてるんだ
その王が奴の手に握られている内は俺達は手を出す事が出来ない・・・
逆を言えば王の命が消えた瞬間に俺達は反旗を翻すと思っているからこその
大事な人質としてその命を今も消さないんでいるんだ・・・!」
まさしく最低とも言えるその所業を聞いてシン達は怒りを露わにしていたが
ナオマサは逆にその話を聞いて相手がそれほどまでに慎重な相手なのだと警戒していた
(もしもそこまで慎重な相手なら
おそらく既に我々がこのスフェスについた事など知っているはず・・・
ならばここからは慎重ではなく速度が勝負の鍵を握りそうだな)
相手がそこまで頭を働かせる事が出来る相手ならば
国を動かして大々的に罠を張れる向こうが有利
逆を言えばどんなに慎重に行動してもバレるので大胆に行動した方がいいという事でもある
(なら・・・こいつの仲間を助けて船に乗せてもらった方がいいというわけか・・・)
そしてナオマサはツガルと提案を受け入れた方が自分達に利益があると思い
「・・・事情はわかった・・・どちらにしても俺達には船が必要だ
助けた暁には必ずお前達の力を貸してもらうぞ・・・!」
ツガルの言う通りに彼の仲間を助ける事に協力する事にした
「それじゃああいつらの捕まっている場所だが・・・おそらくは駐屯基地の地下だ
だが俺も詳しく調べられたわけじゃないからどこが入り口になっているのか知らない
だから見取り図にあるのは一階から上の図面だけだ」
どうやらツガルはすでに仲間が捕まっているかもしれない場所に潜入したらしい
しかしその駐屯基地の中は警備が厳重で詳しく調べる事は出来ず
しかもその潜入がバレて彼も手配されていて近く事すら出来なくなったようだ
それで何の関係もなくこの港に来たばかりのシン達に話を持ち構えたそうだ
「なるほどな・・・地下から逃すつもりがないのならば
罪人には入る場所や方法などを見せているだろうが・・・
これは誰かを捕まえて吐かせた方が良さそうだ」
さすがのナオマサはこれだけの大きな場所をしらみつぶしに探す事は無理だと考え
それならばあえて見つかり衛兵の一人を捕まえて場所を吐かせた方がいいと思った
「でもそんなに簡単に吐くか?その衛兵って執政官に使えていた奴らなんだろ?
だったらどんな事をされても牢の場所を吐くとは思えないんだが・・・」
しかしシンの言うとおりそんな簡単に牢の場所を教えてくれるとは思えなかった
「それなら俺のいい考えがあるぜ!」
みんなが悩んでいるとテンテコがいい考えがあると言って手を挙げた
そしてみんなはテンテコの前に集まってその作戦を小声で聞く
「なるほど・・・確かにそれならば確実に牢には潜入出来るだろうが・・・
問題はバレずに潜入して尚且つ脱出出来るかどうか・・・だな?」
テンテコの話は牢の中に入る事は出来るだろうがそれでも問題があった
それは牢への潜入する為に入ったとバレない事と脱出の有無だった
この作戦では潜入だと怪しまれた時点で失敗し脱出も出来なくなる
つまり助けに行ったはずが逆に捕まる可能性があるという事だ
(しかしこれ以外にいい作戦がないのも事実・・・ここはテンテコに賭けるしかないか)
ここでじっとしているわけにもいかないので
ナオマサはリスクは高いがその作戦に乗る事にした
みんなも納得したようで急いでその準備へと取り掛かる
それからしばらくして一人の衛兵が駐屯基地へと向かっていた
しかもその手には鎖がつけられておりその先には拘束されたナオマサの姿があった
「怪しい不審人物がいたので拘束してきました!牢への連行をお願いします!」
衛兵はナオマサを受け渡すとこの男を牢へと連れていくように告げる
最初は門番の衛兵がナオマサの体を調べようとしたが
すでに連れてきたものが何も持っていなかったと説明すると無駄と思ってその手を引っ込める
「ご苦労!それでは引き続き巡回を続けてくれ!」
門番はナオマサを受け取るとその衛兵に任務に戻るように告げ基地の中へと入る
そしてナオマサの鎖を引っ張りながらとある場所へと向かった
そこには床しかなかったが衛兵が壁にある何かを押すと床が開き階段が現れた
そのまま下へと降りていくと人相の悪そうな男達が牢の中に入っており
ナオマサも同じくその牢の中へと押し込まれた
「それじゃあみんなで仲良く死ぬまで一緒にいるんだな」
「・・・どうやらうまくいったようだな」
衛兵が出て行くのを確認するとナオマサのマントの下からテンテコが現れる
「なっ?!子供?!あんたら一体?!」
突然、子供が現れて大声をあげようとする男の口をナオマサは塞ぎ事情を説明する
「そうかお頭があんたらを助けに寄越してくれたってわけか・・・
でもあんな小僧にこの牢屋の鍵を開けるなんて出来るのか?」
事情を説明されてツガルの手下は嬉しく思ってはいたが
本当にテンテコが信用出来るのか不安に思っていた
しかしそんな不安をまるで聞いていたかのようにテンテコはその瞬間に牢を開けてみせた
「どんなもんだい!このまま他の牢も開けていくぜ!」
テンテコは牢を開けると他にも捕まっている人達がいたのでその人達の分も開けていく
そして全員が牢から出たのを確認してみんなで一緒に脱出しようとした時だった
「おい!ここの天井を開けるにはどうしたらいい?!」
牢の鍵を開けるまでは良かったのだが
問題は牢に蓋をしている天井を開ける方法が分からない事だった
牢にいた全員に何か開ける方法はないのか尋ねるが誰も見た事はないそうだ
(つまりここは外側からしか開けらない仕組みになっているという事か?!
ありえない?!どこかに非常用にボタンか何かが必ずあるはずだ!!)
みんなで必死に何か仕掛けがあるはずだと牢の中を探し回る
するとテンテコが壁に小さな穴が空いているのを確認したが
どんなに手を伸ばしても奥まで届く事がなかった
「なるほどな・・・衛兵は全員槍を持っていたからそれで奥にあるボタンを押していたのか!
なら槍の代わりになるものを用意すればいいだけだ!」
ナオマサは牢の場所まで戻っていくと急に牢の棒を力一杯握りしめた
そしてそこから力を込めて捻ると牢の棒をねじ切り
それを使って穴の奥にあるボタンを押すと閉じていた天井が開き始めた
無事に牢からの脱出が出来たナオマサとテンテコ
しかしここかはら衛兵達を相手にしながら駐屯基地を脱出しなければならない!