蠢めく影
今回は新しい人が登場します!
一行は馬などを買い揃えてようやくスフェスへとつながる洞窟へと向かっていた
「それにしてもすごい馬だな?前にいた奴よりも大きいんじゃないか?」
その道中でシンは村で買った馬についてすごくいい馬だと驚いていた
「ああ・・・だが気性が荒いみたいでな・・・おかげで売れ残ってしまったらしい」
ナオマサが気性が荒い事を話すと乗っていたマイマイが怯えていた
「確かほとんどの馬はスフェスの人達に買われたんだったよな?
・・・やっぱり戦争とかが起きるって考えた方がいいのか?」
大量に馬が必要になるという事は考えられるのは戦争や物資を大量に運ぶ運搬作業
何れにしても何かよからぬ事であるのだけは間違い無いだろう
「どうやら馬主も何の目的が買って行ったのかは知らないらしい
だが・・・確かに嫌な予感がするのだけは確かだ・・・」
ナオマサもその予感はしているようで
どちらにしても言ってみる以外の選択肢は無いみたいだ
「全く・・・あいつらを止める為に国を出てきたが・・・
まさかここまでひどい事になっているとはな〜・・・
自分がとことん井の中の蛙だったんだと思い知らされる」
確かに自国だけならばまだしもおそらくは全ての国で彼らは活動を起こしており
国を出たからこそその事実を知る事が出来たカライは自分の視野が狭かったと思っていた
「それは私達とて同じ事だ・・・自分の国は安全だと自惚れて・・・
結果として奴らの行動に気づかずまんまと首都を奪われてしまったのだからな・・・」
しかしカライが思っている事はおそらく全ての人間が思っている事でもある
そしてそれに気付けるのは・・・彼らの存在を知った事が出来た人間だけ
それはつまりスフェスの人々はまだ気付けていない可能性もある
「どうなっているかはまだ分からないが・・・危険な事には変わりないな・・・」
シン達は事態を収拾する為に急いでスフェスに向かわなくてはいけないと思いながら
そこへ行く為の通り道である洞窟へと急ぐのだった
「見えてきた・・・だが・・・なんだ?あの一行は?」
そしてしばらくしてようやくスフェスに繋がる洞窟へとやって来たのだが
その前には馬車が大量に止まっておりしかも大勢の人間がその場に止まっていた
「もしかしてあいつらの手先か?だとしたらまずいんじゃないのか?」
確かにシンの言う通り彼らの手先だと言うのならば間違いなく危険なのはこちら
迂闊に手を出すわけにはいかないだろうと思いながらも
ゆっくりとナオマサ一人で近づいていく
「どうかしたのですか?」
そして止まっている団体の人に話し掛ける
「ん?ああ実はスフェスの港であるアルーに持っていく物資を運んでいたんだが
この通り馬車が壊れてな・・・どうしたもんかと困っていたんだ」
それと馬車に積み込まれていた荷物を見てナオマサは確かに一般人だと判断した
(だが・・・あそこにいる男達・・・あいつらは只者じゃない・・・)
そんな中で危険と感じていたのは先頭で話し合っていた男達
(しかもその中で一番危険なのは・・・中心にいるあの大男だ・・・!)
ナオマサですらその男に勝てるかどうか分からないと感じるほどのオーラを放っており
警戒するには十分すぎるほどの強さを持っていると判断していた
「そうだ!団長!この人達に手伝ってもらうのはどうですか?!」
するとナオマサと話していた男がその警戒していた男に声を掛ける
「初めまして!俺はあそこにいる傭兵達の団長を務めているラフェルだ
すまないんだが・・・あんたらの馬車を使わせてはもらえないだろうか?」
ラフェルと名乗った男はナオマサに馬車を使わせて欲しいとお願いしてきた
正直な話をするのなら巻き込まれたくはなかったが
これほどまでに強い人物を放置するわけにもいかず
「・・・いいでしょう・・・ですが馬車の中に入れるわけにはいかないので
牽引という形をとらせてもらってもよろしいですか?」
こうしてシン達は彼らと一緒に洞窟を抜ける事になった
その中で一応シンとカライは監視の意味も含めてラフェルのいる先頭車に乗っていた
「へぇ?それじゃあ傭兵になってもう三十年以上になるんですか?」
そんな中でカライはラフェルの事が気に入ったのか話し込んでいた
「ああ・・・俺は孤児で誰も助けてはくれなかったからな・・・
だから一人で戦っていたらいつの間にか仲間が出来て・・・
こうして傭兵をやる事になったわけだ」
どうやらラフェルは生まれながらに戦いを強いられていたようで
それから三十年以上も戦い続けた事でこれほどの強さを得たらしい
(なるほどな・・・道理で俺の爺ちゃんと同じくらいのオーラがあるはずだ・・・
いや・・・こっちの方がもっと濃密な殺気を纏っている・・・!)
しかしラフェルはシンの祖父であるリンジュ以上の殺気を身に纏っており
それはまさしく戦いに明け暮れていたからこそ身につけたものだと確信した
「それにしても傭兵か〜・・・やっぱりそれって色んな国に行くのか?」
それに気付きながらもカライは怪しまれないように話を続ける
「まぁな・・・だからこそその国の嫌な部分も見えちまう・・・
特に俺らのような闇に生きる人間はな・・・?」
ラフェルの言葉にシンとカライはもしかして昔から
彼らは動き出していたのではないかと思っていた
「そんな人間がいるからこそ俺達は仕事があるわけだが・・・
なんだか皮肉だよな?俺らは金の為に戦っているが
雇っている奴は世界を平和にしたくてやっている・・・な?まさしく皮肉だろ?」
確かにラフェルの言う通り世界を平和にする為に傭兵を雇っているが
その彼らは戦争がなくては儲からないのだから何とも皮肉な事である
「・・・確かに皮肉だな・・・だがあんたらだって
人々を助ける為にやった事だってあるだろ?」
「・・・まぁな・・・でも奪った命があるのも確かさ・・・
だからたまにどっちが正しかったんだろうって悩む瞬間があるんだよ・・・
正義の為に戦う彼らと生きる為に戦った俺ら・・・どちらが正しいんだろうってさ」
その顔を見た時にシンとカライはラフェルが今でも殺した人々を忘れていないのだと思った
それをしっかりと自分の罪として受け止めて生きていく事を誓ったのだと
「そういうお前さん達は何の為に戦ってるんだ?やっぱり正義の為か?」
するとラフェルが今度は二人に対して戦う理由を質問してきた
「・・・残念だけど俺は正義の為に戦ってるわけじゃない
・・・俺はあの娘を助けたいだけだ・・・たとえあんたであろうともな?」
シンは探りを入れる意味も含めてラフェルに対してララを守る事を宣言する
「愛する者の為か・・・十分な理由じゃねぇか・・・
だったら助言しておくぜ?ちゃんと敵を見極めれるようにならねぇと
もしかしたら・・・後ろから刺されかねないぜ?」
シンの理由を聞いたラフェルは忠告として敵の見極めについてを教える
おそらくは彼が過去に何かあった体験談からきているのだろう
それに対するシンの答えは沈黙だけでありラフェルもそれを受け取ったようである
「んで?そっちの派手な兄ちゃんの方はどうなんだ?」
そして今度はカライに戦い理由についてを確認する
「俺の戦う理由か・・・まぁ強いているのなら国の為・・・だろうな」
カライの言葉を聞いてラフェルは少しだけ納得がいったのか口元に笑みが浮かんでいた
「なるほど国の為か・・・確かに俺らとは違っていい理由じゃねぇか・・・!
お前さんの事はなんだか応援したくなってきたな!」
どうやらカライの理由がラフェルに刺さったようでこれからは応援したいと言っていた
「俺達は生まれた国がどこなのか分からないからな・・・
だから祖国の為とか言われても分かんねぇんだ・・・でもお前は違うらしいからな
それは俺達にとって羨ましい事でもあるんだよ」
「羨ましいか・・・案外そうでもないかもしれないぜ?」
しかし現状ではヴェストのような人間が国の内部に潜入しており
とてもではないが国の為に戦う事が良い事とは結びつかなかった
「そうなのか?・・・それよりもお二人さん・・・武器を構えておいた方が良さそうだぜ?」
そう言ってラフェルは自分の背中に下げていた両剣を取り出した
シンとカライもそれに続くように武器を構えると奥の暗闇から音が聞こえてきた
しかもそれは単一のものではなく複数の音だった
「この音・・・四速歩行・・・!間違いなく魔物だ・・・!」
シンはその音を聞いてすぐに魔物の足音だと気づいた
そしてそのシンの予想通りに複数のトカゲのような魔物がこちらに近づいてきていた
「リザード系の魔物か・・・!なら攻撃を避けて一発を狙え!
あいつらは旋回する事がほとんど出来ないからな!」
ラフェルはみんなに指示を出しながら真っ先に飛び出して魔物を倒していく
もちろんシンやカライもこれくらいの魔物には慣れており難なく倒す
(ほう?すでにあの年で魔物との戦闘はかなりやり込んでいるみたいんだな・・・
それこそうちに来た新人以上の出来と見ていいだろう・・・やるな・・・!)
それを見ていたラフェルはとても感心していた
同時にこの魔物達の行動に対して疑問を持っていた
(こいつら・・・普段は警戒心が強くてほとんど巣から出てこないはず・・・
ってことはこいつらが巣から出てこなくちゃいけないほどの何かがあったって事だ・・・
どうやらこの先に待っているのは・・・間違いなく地獄のようだな・・・)
全く光が差し込んでこない暗闇の向こうに待っているのは
果たして何なのか・・・いずれにしても悪い予感がするのだけは確かだった
「だが・・・進むしかないよな・・・!俺達傭兵には・・・後退の二文字は存在しない!」
それに応えるかのように団員達は大声をあげて魔物を退治していく
そんな中でたった一人ナオマサだけはラフェルの事を監視するように睨みつけていた
スフェスを抜ける洞窟に入った一行
しかしそこで待っていたのはまさしく魔物の洗礼だった